ホーム > イベント一覧 > コレクション解析学2011-2012

コレクション解析学2011-2012

名古屋市美術館は「エコール・ド・パリ」「メキシコ・ルネサンス」「現代の美術」「郷土の美術」という4つのジャンルで美術作品を収集し、現在およそ5000点の作品を所蔵しています。「コレクション解析学」は、学芸員が当館のコレクションの中から作品を選び出し、その魅力をご紹介する講座です。作品や作家にまつわるエピソードとともに、当館のコレクションにより一層親しんでいただきたいと思います。

場所:講堂(定員180名/先着順、申し込み不要)

第1回 「With or Without You」

作品
小山田二郎《昔の聖者》 1956年
演題
「With or Without You」
日時
2011年5月29日(日) 午後2時〜
講師
清家 三智(学芸員)

幼少の頃から遠縁の日本画家に手ほどきを受けた小山田二郎(1914-1991)は、独特の色彩感覚と確かな描写力を身につけた後、シュルレアリスムの思想に深く傾倒し戦後間もない画壇の一翼を担ったものの、その活躍はあまり知られていません。自己の内面世界を幻想的に描きながら社会の不条理を問い続けた小山田の作品は、いずれも彼の生い立ちや体験が描かせた一種の自画像と言えます。キリスト教の古典的な主題を連想させつつ、悲劇の最中すでに諦めの境地に至ったような乾いた印象や滑稽さを感じさせる《昔の聖者》を通して作者が訴えかけたものを、彼の画業の変遷や社会的背景とともに探ります。

第2回 「生命(いのち)のかたち」

作品
青木野枝《水天1、14》 2007年 ※図版は《水天1》
演題
「生命(いのち)のかたち」
日時
2011年7月31日(日)午後2時〜
講師
角田 美奈子(学芸員)

青木野枝(1958- )は現代日本を代表する彫刻家です。鉄を溶断、溶接してかたち作る作品は、世界にひそむ生命(いのち)の始原的な形態をあらわすとともに、つらなり生まれいでる生命(いのち)の動的循環をあらわしています。作家は、立体造形だけでなく、素描や版画などの平面造形においてもすぐれた作品を残しています。彼女が制作したもっとも大きな版画作品である《水天1》と《水天14》から、作家が自作において実現し、感得しようとしていることがら―それは、私たちにも感得してほしいと願っていることでもある―を紹介します。

第3回 「華やかさと憂いと」

作品
キスリング《ルネ・キスリング夫人の肖像》 1920年
©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2011
演題
「華やかさと憂いと」
日時
2011年9月25日(日) 午後2時〜
講師
原沢 暁子(学芸員)

鮮やかな赤い服に身を包み、頬杖をつく女性。この女性は、「モンパルナスのプリンス」と呼ぱれた画家、キスリング(1891-1953)の妻、ルネです。キスリングは1915年にルネと結婚し、5年後にこの作品を描きました。キスリング様式の始まりに位置するこの作品は、滑らかな光沢のあるマチエール、単純化された背景など、キスリングの作品の特徴を備えています。ルネの表情には、華やかな明るさと憂いが同居し、画面には緻密に描かれた部分と大雑把に捉えられた部分とが混在します。様々な要素を併せ持つ画面、そして作品を巡る背景から、キスリングという画家を読み解いてみたいと思います。

第4回 「芸術としての写真? 写真としての芸術? 写真はやっぱり写真?」

作品
ベルント/ヒラ・ベッヒャー《巻き上げ機》 1980年
演題
「芸術としての写真? 写真としての芸術? 写真はやっぱり写真?」
日時
2011年11月27日(日)午後2時〜
講師
笠木 日南子(学芸員)

ベッヒャー(ベルント:1931-2007/ヒラ:1934- )の作品には、近代の産業遺物が写された写真が並べられています。まるでその形態の類型を指し示す表のように、ほぼ同じ大きさで同じ構図で撮られたものです。現在では誰もが気軽にデジタルカメラで写真を撮ることができ、写頁は表現として身近な存在になっていますが、ベッヒャーの写真は私たちが撮るようなスナップ写真とは随分様相が違っています。写真には、物事を写し出すという記録的な性質と、画面にイメージをアーティスティックに展開できるという芸術的な側面がありますが、写真を表現方法としているベッヒャーの作品の魅力はどこにあるのか、写真をメディアとして芸術にしている作品という点から考えます。

第5回 「時代を映す鏡としての絵画」

作品
ジョン・スローン《ヴィレッジ監獄の解体》 1929年
©The Estate John Sloan / ARS, N.Y. / SPDA, Tokyo, 2011
演題
「時代を映す鏡としての絵画」
日時
2012年1月29日(日) 午後2時〜
講師
深谷 克典(学芸員)

マティスやピカソがパリで前衛を競い合っていた20世紀初頭、アメリカではようやく印象派の影響を脱し、新しい絵画の創造を模索する画家たちが登場しようとしていました。「ジ・エイト」と呼ばれた8人の画家がニューヨークの画廊でグループ展を開き、センセーションを巻き起こしたのは1908年のことです。メンバーの一人、ジョン・スローン(1871-1951)は、ニューヨークの下町を舞台に、庶民の暮らしとそこに潜むささやかな人生の喜びを、共感を込めながら淡々と描き出しています。時代の雰囲気を濃厚に漂わせるスローンの作品を手がかりに、アメリカ美術の潮流の一つであるリアリズムの精神の本質に迫ります。