「アートとめぐるはるの旅」展の準備が着々と進んでいます

ここ数年に比べて寒さの厳しいこの冬ですが、暦の上ではもうすぐ立春。春はすぐそこに来ている……!と信じて、この寒さを乗り越えたいものです。さて、名古屋市美術館では、3月25日から「アートとめぐるはるの旅」を開催します。この展覧会、もとをたどれば、昨夏に「アートと旅するなつやすみ」として開催する予定だったのですが、新型コロナウイルス感染拡大のために延期となりました。この冬も心配な状況が続いていますが、春には落ちついて、美術館を楽しめる日々が戻ってくることを祈りつつ、準備を進めています。子どもから大人まで、誰もが楽しめるよう、すべての漢字に読み仮名をつけたり、五感を使って味わえるような大型インスタレーションを久々に展示したり。また、子どもたちが作品を楽しむ手助けになるような、鑑賞ワークブックも準備しています。こちらは、小中学生には無料で配布しますので、ぜひご活用ください。そのほか、親子で参加するワークショップも企画しています。詳しい内容や応募方法については、名古屋市美術館公式サイトに掲載しますので、ぜひチェックしてみてください。

看板画像

工事休館も含めて、名古屋市美術館はずいぶん長い間お休みしていたので、こうして展覧会の看板が設置されると、ようやく再開館したんだな、という実感がわいてきます。

予告:特別展「「写真の都」物語―名古屋写真運動史:1911-1972―」が始まります

名古屋市美術館は1月5日(火)から常設展を再開しておりますが、2月6日(土)からは特別展「「写真の都」物語―名古屋写真運動史:1911-1972―」も始まります。

愛友写真倶楽部や東松照明を生み、中部学生写真連盟にはじまる学生写真運動が盛んで、全国でも屈指の「写真都市」であった名古屋。本展では写真・資料により、名古屋における近代の写真表現の展開をたどります。
(本展特設ページはこちら

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本展は2月6日(土)から3月28日(日)までの会期を予定しております。2月6日(土)から3月14日(日)までは、本展の入場券で常設展もご覧いただけます。

ご来館の際は、マスクの着用や手指消毒等、新型コロナウイルス感染防止対策にご協力をお願いします。

特集展示 没後10年 荒川修作-初期平面の仕事

令和2年度の始まりに予定していた「特集展示 没後10年 荒川修作-初期平面の仕事」を、会期を2021年1月5日[火]から3月14日[日]に改めて開催しています。はじめに広報していた会期は、2020年4月25日[土]から6月28日[日]でした。会場は、常設展示室3で、変わりはありません。

展示風景(荒川修作)
会場風景

荒川修作(あらかわしゅうさく/1936-2010)は、20世紀後半の美術表現を語る上で欠かすことのできない成果を残した作家です。名古屋市美術館は、コレクション(所蔵作品群)をかたち作るに当たって、名古屋市出身の荒川を最も重要な作家のひとりとして位置づけ、その作品を収集して紹介してきました。

作家の死後には、エステート・オブ・マドリン・ギンズ所蔵の5点の作品を受託し、館所蔵の作品とともに折々に常設展で紹介しています。マドリン・ギンズ(1941-2014)は、荒川のパートナーであり、創作を共に担っていました。

この展示では、創作の初期に試みられていた荒川の取り組みを受託の5作品に館所蔵の2作品を加えて紹介します。受託の5作品を全点一緒に展示紹介するのは、2012年以来です。この機会にお見逃しのないようご来場ください。

常設展のご紹介

名古屋市美術館は本日より再開しました。改修工事の一部はまだ継続していますが、約10カ月ぶりに当館の収蔵作品を皆様にご鑑賞いただけるようになっています。既報のとおり、モディリアーニの《おさげ髪の少女》や藤田嗣治の《自画像》など「常連」のいくつかは、ただいま愛媛県美術館で開催中の企画展「エコール・ド・パリの色と形」に出品中です。2月3日(水)まで、ガラスケースの中にはやや珍しい顔ぶれが並びますので、ほんの少しですがいつもと違った印象を常設展から受けるかもしれません。

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このたびの常設展では、ひさびさに日本画が「郷土の美術」の一室を占めます。画題はすべて風景です。筆と墨、岩絵具を用いる伝統的な技法に、写実性や作家の個性が加わった近代日本画の風景には、やはり洋画、油彩画の風景とは別種の味わいがあります。たとえば山元春挙の《観瀑之図》にみられる、岩山の質感を表す見事な筆の技と、遠近感や靄を表す繊細な墨の濃淡にご注目ください。作品を前にすると、あらためて本物の良さを実感します。

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常設展「名品コレクション展Ⅰ」に展示されている作品はこちらから確認できます。本日より約1か月間は常設展と特集「没後10年―荒川修作 初期平面の仕事」のみの開催となりますが、もし興味のある作品が展示されていましたら、美術館に足をお運びください。

美術館、ただいま準備中(第6回)「年明けは美術館に」

いよいよ名古屋市美術館は、令和3年1月5日から開館します。
常設展「名品コレクション展Ⅰ」、特集「没後10年 荒川修作―初期平面の仕事」を、地下1階展示室にて開催します。ご来館の際にはマスクの着用、手指消毒など感染対策にご協力をお願いいたします。

前倒しして実施してまいりました改修工事ですが、天井落下対策工事は終了しました。外壁工事は、表玄関周りは終了しましたが、事務室側の足場はまだ残っています。トイレ洋式化工事は、2階部分は終了しましたが、1階、地下1階部分はこれからです。
ご不便をおかけします。

ボランティア養成講座を実施中です

公式サイトの「トピックス」にも掲載していた通り、名古屋市美術館では今年度GW明けから7月15日まで、第11期ボランティアの募集を行いました。折あしく緊急事態宣言発令期間と重なり、広報も思うように出来ない中で果たしてどれだけの人が集まるかと心配しましたが、定員を上回る申込みがあり、書類審査と面接審査を経て選ばれた33名を対象に、10月初旬からボランティア養成講座を始めました。開講にあたっては三密回避をはじめ、可能な限りの感染症対策を講じています。

講座は1回につき約3時間、全9回を予定しており、名古屋市美術館の収集方針や所蔵作品に関する知識の習得と並行して、対話による美術鑑賞(ギャラリートーク)についての学びや実践練習を中心とします。11月15日に開催した第3回養成講座では、前半の所蔵作品に関するレクチャーに続き、後半では受講者が6つのグループに分かれ、ギャラリートークを体験しました。トークに携わるのは、当館ですでに活動しているボランティアです。
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大半の受講者は、これまで当館で実施しているギャラリートークへ参加したことがなく、ボランティアの解説を“一方的に聞くもの”と思い込んでいたようです。ところが、ボランティアの「この作品をよく見て気づいたこと、気になったことを一緒に話していきましょう」という誘いに応じて発言すると「なるほど、そう思ったのは作品のどの辺りから?」とさらに問いかけられ、次々に意見を引き出されていきます。

戸惑いつつも自身の考えを話し、他の意見にも耳を傾けながら作品に何度も目を向けるうち、受講者は互いの見方に共通点やつながりを見出して考えを深め、さらに新たな疑問を見つけるなど、当初「どう見たらいいのか分からな」かった作品との接し方を少しずつ理解していったようです。

作品や作家に関する知識やスキルも必要ですが、ギャラリートークを行うにあたり忘れてならないのは「自分の目で丁寧に観察する」ことです。つまり一方的に情報を与えられる受け身ではなく、みずから作品と向き合う積極的で主体的な姿勢が大切なのです。対話を重ねながら来館者の皆さんに「作品をじっくり見ることは楽しい」と実感していただくためには、ボランティア自身が経験を通じて、丁寧に作品を見る面白さ、奥深さを理解している必要があります。一朝一夕に身に付くことではありませんが、この回では、その基本中の基本を学ぶことをねらいとしました。

講座は来年3月まで続きます。感染拡大状況のこともあり、今後も予定通りに進む保証はありませんが、このような状況だからこそ焦らず地道に、出来ることからコツコツと取り組んでいきたいと思います。

枯葉とランド・アート?

枯葉の舞い散る季節となりました。枯葉といえば、誰もが思い浮かべるのがシャンソンの名曲「枯葉」です。ビル・エヴァンスをはじめとするジャズのアレンジでも有名なこの名曲。作曲者をご存知でしょうか? 作曲者はジョゼフ・コズマ。ハンガリー出身の音楽家です。シャンソンを代表する、このパリのエスプリと哀愁に充ちた音楽が、異邦人の手になるものと聞いて意外な感に打たれる方も少なくないでしょう。ユダヤ人のコズマは、ナチスの迫害を逃れて1933年にパリに移住。その後はジャン・ルノワール監督の「大いなる幻影」やマルセル・カルネ監督の「天井桟敷の人々」など、映画史に残る名作の数々の音楽を手がけています。美術と音楽の違いはあれ、コズマもまたエコール・ド・パリの一人なのです。

さて、その「枯葉」を見事にアレンジしたエヴァ・キャシディのライヴ録音の歌声を聴きながら歩いていると、白川公園で不思議なものを見つけました。
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枯葉で埋め尽くされた地面が、そこだけ模様のようになっています。少し位置を変えて見ると、その模様がさらにはっきりします。
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風に吹かれて自然にできた? わけはないですね。 誰か遊び心の豊かな人が、枯葉を素材に即興でアート作品を作り上げたのでしょう。当館にも、イギリスの作家アンディ・ゴールズワージーが、枯葉や流木で作った作品を記録した写真が収蔵されていますが、この無名の作家のランド・アート作品?をご紹介したく、アップさせていただきました。

美術館、ただいま準備中(第5回)「足場の解体はじまる」

すでにお伝えしたように、美術館は年明け1月5日の開館を目指して準備中です。外壁の補修工事が続いていましたが、好天にも恵まれ作業は順調に進み、完了した部分から足場の解体が始まっています。
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ポールの一本一本を人力で下していきます。
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建物西側の部分はほぼ解体が終了しています。
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遠目で見てもタイル壁が美しい輝きを取り戻しており、32年前の開館当時を思い起こさせます。年明けに皆さまをお迎えする準備が着々と進んでいます。

さて、美術館のある白川公園の周囲の木々もすっかり色づき、晩秋の趣を深くしていますが、紅葉を見るたびに思い出すのが15年前に訪れたプリンストン大学の付属美術館です。
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アメリカでは付属の美術館を持つ大学が少なくありませんが、プリンストンの美術館は中でも有数のコレクションを誇っています。当館も1994年に開催した「モネ展」の際に、素晴らしい睡蓮の作品をお借りしています。
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クロード・モネ 《睡蓮の池と日本の橋》 1899年 プリンストン大学美術館

15年前の訪問は同館が所蔵するモディリアーニの出品交渉を行ったのですが、残念ながら不首尾に終わりました。今でも紅葉の季節になると、ニュージャージーの美しい晩秋の景色と、モディリアーニの苦い思い出がよみがえります。
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海を渡ったエコール・ド・パリ

11月14日(土)から、四国、松山の愛媛県美術館で「エコール・ド・パリの色と形」展が始まりました。

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名古屋市美術館所蔵の作品78点に、愛媛県美術館所蔵の12点を加えた計90点の作品によってエコール・ド・パリの造形的な特徴を浮かび上がらせようとする展覧会です。これまで様々な展覧会に当館のコレクションを出品してきましたが、エコール・ド・パリだけでこれほどまとまった数の出品をするのは初めてです。当館の工事による休館のために可能となった企画ですが、常設展でもこれだけの数を展示することはなく、手前味噌になりますが、改めてその充実ぶりを示すことができました。

13日(金)には関係者をお招きしての内覧会が行われましたが、コロナ禍が広がる中にもかかわらず、大勢の方々にご覧いただくことができました。
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これを機会に、名古屋市美術館に関心をお持ちいただき、コロナ収束後には是非名古屋を訪問していただきたいものです。

さて、当日はコロナの第三波襲来のニュースが話題となっていましたが、街を歩くとあの有名なライオンもマスクを着用していました。
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百獣の王の鋭い牙も、コロナを粉砕することはできません。どうぞ皆さまもくれぐれもお気を付けください。

72年前の今日、東山動物園に「猛獣画廊」が開設

戦時中の1943年11月、東山動物園ではじめて、日本軍の要請による猛獣の殺処分(ヒグマとライオン)が行われました。それ以降、園内の動物は殺処分とエサ不足による餓死で激減していき、1945年の終戦時に生き残っていたのは、ゾウ2頭、チンパンジー1匹、鳥類20数羽のみでした。東山動物園は1946年3月に再開し、上野動物園からカンガルーやイノシシを譲り受けることができましたが、それでも飼育動物の種類は圧倒的に不足していました。主のいないキリン舎で、幻灯機を使って動物の写真を映写して見せたり、アシカの池を子どもの遊泳場として開放したりと、なんとか来場者に楽しんでもらおうと苦心しながら、動物園はしばらく営業を続けていました。

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『中京新聞』(1948年11月14日)に掲載された写真

そんな猛獣のいない寂しさを埋めようと、当時存在していた「中京新聞」が主唱して、世界各地に棲む猛獣の生態を、旧カバ舎の壁面を覆う大画面に描いて公開する「猛獣画廊」が企画されました。絵画制作の依頼を受けたのは、太田三郎(愛知生)、水谷清(岐阜生)、宮本三郎(石川生)という東海・北陸ゆかりの3人の実力者です。それぞれ北極・南極、アジアの熱帯雨林、アフリカのサバンナに棲む動物を受け持ち、たて1.4m、よこ5.4mのキャンヴァスを相手に筆を奮いました。1948年11月13日(土)、「猛獣画廊」の開設式が挙行され、完成した壁画3点はこの日から市民に公開されました。翌日14日(日)には開設を記念して演芸祭が開かれ、東山行きの市電が大増発して、市内の子どもたち5,000人が招待されました。子どもたちは熱心に動物の姿を探して観察し、大人たちはライオンやトラを見て昔の動物園を懐かしんだそうです。

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水谷清 《東山動物園猛獣画廊壁画 No. 2》 1948年 名古屋市美術館

猛獣画廊の閉廊日はわかっていませんが、戦後初めてカバが来園した1952年にはおそらく壁画は撤去されていたとみられます。その後、この壁画がふたたび市民に一般公開されたのは、2018年10月6日(土)のこと。名古屋市美術館の開館30周年を記念した特別展「ザ・ベスト・セレクション」で、当館に寄贈されて以来はじめて展示されました(2018年11月25日(日)まで)。この壁画は動物園での公開が終了したのち、どのような状態で保管されていたのか詳しいことがわかっていません。そのため、画面の汚れや絵具の剥落など、大小さまざまなダメージを負った状態で当館に収蔵されました。当館では現在、壁画を修復するための寄附金を募っています。いつかこの壁画がより良い状態で展示される機会が来ることを願っています。

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特別展「ザ・ベスト・セレクション」での展示