美術館と「今でしょ!」

「美術館の人は、展覧会以外にどんな仕事があるの?」とよく聞かれます。
例を挙げればキリがないのですが、予告なく飛び込んでくる仕事のひとつに美術作品や画家、作家に関する問合せの電話があります。

先日も東京の某テレビ局から電話があり、
「林雲鳳(はやし・うんぽう)という画家について知りたいのですが、ご存知のことを教えていただけないでしょうか?」と尋ねられました。
林雲鳳(1899-1989)は、現在の岐阜県土岐市出身で、歴史に題材を得た作品を多く残している日本画家です。
当館でも3点ほど作品を所蔵しているので、名前を聞いて「あぁ」とすぐにピンと来ました。
しかし、一般的にそれほど知られている方ではなく、はて、一体どんな番組で調べているのかと思い、尋ねたところ、
「番組に林修(はやし・おさむ)さんをお招きして、インタビューを放送するのですが、祖父にあたる方が日本画家の林雲鳳さんと聞き、情報を集めているところなのです」とのこと。

…最初は「??」だったのですが、出演されているCMの決めゼリフ「今でしょ!」の一言で人気を集めている予備校の有名講師の方と分かり、「えぇーっ?!」
まさか、時の人と自分の勤め先がこんな接点でつながるとは…。

放送日が迫っているということで、取り急ぎ、先方が必要とされている情報を聞き出し、美術館にある文献資料から画家の経歴などを提供して仕事自体はつつがなく終わったのですが、気になって後日番組を見てみました。

画家のアトリエでの制作の様子が写真で映し出されたほか、孫として同じ絵の道には進むことはなかった(ご本人曰く「絵の才能がないことは幼稚園時代にハッキリした」)ものの、可愛がってくれた祖父の影響で歴史が好きになり、小学校の頃は歴史の本ばかり夢中になって読んでいた、などのエピソードが紹介されていました。
現在のお仕事につながる、勉強が好きになったきっかけもその頃の体験にあったようです。

“芸術家”と聞くと、自分たちとは接点のない別世界に住んでいる人という勝手なイメージを抱きがちですが、決してそうではなく、私たちと同じように大切な家族がいて、生活を営んでいて、そういう血の通った生身の人間が、美術作品を生み出している。
ごく当たり前のことですが、美術館が守り伝えている作品は、そのような人間のリアルな営みの中にあるものだと思うと、単なる研究対象の資料としての見方とはまた違った捉え方ができるなぁ、と感じました。

年度の変わり目のせわしない毎日ですが、こういう小さな発見を楽しみながら仕事をしています。

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