常設展だより・秋

暑かった夏の終わりとともに、長かった「大エルミタージュ美術館展」も会期末を迎えました。
そして常設展も衣替え…じゃなくて展示替え。
10月13日(土)からの展示について、少しだけご紹介します。

今回エコール・ド・パリのコーナーでは、「筆触(タッチ)と絵肌(マチエール)」をテーマに、絵画作品の表面に注目してみました。
絵画作品を見るとき、私たちはどうしても「何が描かれているか」「どんな場面なのか」など、絵の内容に興味が行きがちです。
それも大切なことではあるのですが、図柄を読み取ることだけなら画集でも出来ます。
美術館には芸術家が自らの手で完成させた本物の作品があるのですから、せっかくなら、ここでしか出来ない体験をしていただきたいと思うのが、学芸員としての正直な気持ちです。

筆触(タッチ)は絵を制作するときに筆やナイフなどの描画道具が表面に触れることで出来た跡のこと。
絵肌(マチエール)は絵の中に登場する題材の質感表現を指す場合と、作品そのものの表面についての肌合い(ツルツルとかザラザラなど)を指す場合の二通りがあります。

同じ油絵具という画材を使っていても、混色するかチューブから出したままの色を使うか、溶き油の量、用いる描画道具の形状(筆であれば毛質)、筆やナイフの持ち方、力の入れ具合などなど…。
“描く”という行為は、上に挙げたような小さな事柄の選択一つ一つが積み上げられて成り立っており、特にタッチは画家の個性が端的に表れやすいところでもあります。
また絵具を何度も塗り重ねてできた透明感と深みのあるマチエールは、今の技術をもってしても画集などの印刷物や複製では完全に再現することは難しいものです。

たまには絵の表面をじっくり観察して、絵具の盛り上がりや厚みがどんな様子か、タッチにどんな特徴があるか、それぞれの画家が制作中にどんな工夫をしたのかなど、想像しながら鑑賞するのも面白いのではないでしょうか。

ただし、くれぐれも作品には手を触れることのないように、ご協力をお願いいたします。

名品コレクション展Ⅲ
会期:2012年10月13日(土)‐2013年1月6日(日)
◎エコール・ド・パリ:筆触〈タッチ〉と絵肌〈マチエール〉
◎メキシコ・ルネサンス:フリーダ・カーロとディエゴ・リベラ
◎現代の美術:物語る絵画
◎郷土の美術:戦後の抽象彫刻

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