ポジション展 アーティスト紹介~坂本夏子

アーティストトークの2番バッターは、坂本夏子さんでした。

坂本さんは、とっても大きな作品を描いていらっしゃいます!

また、近くで見ると本当に丁寧にじっくり描いてあることが分かります。坂本さんは、時間をかけて制作をされるタイプだということで、最新作の《NAGISA》だと、構想を含めて8ヶ月ぐらいかかったそうです。

描かれるプロセスも独特です。まず、画面に下地を作ってから、部分と部分をつなぎ合わせるように描かれるそうです。《Tiles》の作品は、タイルの一つ一つの部分を完成させながら画面空間を埋めていったそうです。


《Tiles》 2006年 油彩・キャンヴァス

四角い画面の中に不思議な空間が広がっています。初めて、自分の絵を描いたと思うことができた作品だそうです。タイルを一つ一つ完成させていく過程で、最初の構想から少しずつずれて、描く前には思いもよらなかったような空間のゆがみが出来上がってきたそうです。人の顔を描くことが、うまくできなかった、そういう時期の作品だともおっしゃっていました。


《Tiles、脱衣》 2007年 油彩・キャンヴァス

この作品では、手前の床の部分が、塗り残しのようにも見えますし、私たちの世界と、絵の中の空間の世界をつなぐ橋渡しをしてくれているように感じます。

坂本さんは、絵を描くときに「絵画でしか成り立たない空間」を目指していらっしゃいます。目で見える世界を再現するのではなくて、私たちがいる現実空間ではない、絵の中でしか成り立たない空間を模索していらっしゃいます。


《Octopus Restaurant》 2010年 油彩・キャンヴァス

描かれている人物が、坂本さんに似ています!でも、坂本さんではないそうです(笑)

この作品を描いた頃は、夢の構造について考えていらっしゃったそうです。夢では、例えば、中学校の時の同級生と大学の同級生が一緒に出てくるなど、現実ではあり得ないことが起こってしまいます。現実とは違う夢の空間を絵であれば、絵の具を通して空間として現実とゆるやかに接続できるのではないかと思って構想されたそうです。


《NAGISA》 2012年 油彩・キャンヴァス

こちらは、最新作です。この作品は、これまで絵画でやってきたことすべてを解体して再び立ち上げていこうという意図を元に描き始められたとのこと。また、ひそかに、影がテーマになっているそうです。私たちがいる世界は、モノや人の実体があって、そこに光が当たって影ができますが、絵の中の世界では、最初に影があって、そこからモノの実体が立ち上がってくるということも起こりえる、そういったコンセプトから構想された作品だそうです。

お客さんからも、興味深い質問が次々に出ました。

お客さん:「最初の構図を追っかけながら、ずれていくということでしたが、感情や感覚にしたがって描かれるのですか?」

坂本さん:「、やはり、最初の構想というか、絵の構図とか構造が大事です。それを追っかけながら、少しずつ、その構想を元にした絵が霧が晴れていくように見えてきて、ゴールに向かうためにまた次の道を見つけていくという感じです。そして、最初の枠から少しずつずれていくということも、私にとっては大切な要素です。」

お客さん:「絵を描くときに、写生したり、実際のものを見て描かれるのですか?」

坂本さん:「そういったことはしません。でも、《NAGISA》を描いた時には、浜辺や海の様子を感じに海に行きました。波の色や動きがどういう風になっているかとか、海鳥が鳴いている様子とか、砂を触ったり、そういった感覚を記憶して、その記憶を元に絵に起こしていきました。」

坂本さんのお話を聞きながら、坂本さんは、論理的に絵画の構造というものを考えながら作品を制作されているということがよく分かったと同時に、一方では坂本さんにとって絵を描くということが、絵の中の世界に触れて少しだけその世界に足を踏み入れて描いている、そんな風な行為なのかなあという風にも感じました。私たちが絵の中の世界を感じることも、その世界に触れることなのかなあと思います。坂本さんの絵を見ていると、私が今居る現実の空間や時間とは違う世界が描かれているように感じるのですが、それは、何か、本を読んだり、考え事に没頭したりする感覚と似ているように思いました。

やはり、作品を制作された方から、直接、作品のことや、制作過程についてお聞きできるのは、とても興味深いです!

また、この日は、おもてなし武将隊の前田慶治さんがお越しになりました。

6月20日水曜日、メーテレで夕方6時50分より、坂本さんのギャラリートークの様子も放映される予定です!みなさま、ぜひお楽しみに!

投稿者:hina

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