展覧会カタログ校正の仕事

 

 展覧会の準備過程における大きな仕事のひとつに、図録作成があります。1冊の図録が完成するまでに、印刷や製本以外にもさまざまな工程を経ます。予算や納期に余裕があれば外部に委託する翻訳や校正などの作業を、諸般の事情から学芸員が担うことも珍しくありません。

 昨年末から年明け1月にかけて、3月初旬から始まる真島直子展の図録の校正作業が続きました。もちろんテキストを執筆した学芸員も校正しますが、仕事の一環とはいえ自分で書いた文章を何度も客観的に見直すのは意外と難しいものです。そこで展覧会サブ担当がまっさらな眼で一字一句確認します。「内容を細かく理解していない人間が校正をして役に立つの?」と思われるでしょうが、実際に図録を手にする来館者と近い視点で文章に目を通し、分かりにくさや助詞の不自然さなどを客観的に指摘してくれる存在は、校正作業に欠かせません。

 誤字脱字に始まり、漢字の変換ミス、送り仮名やルビの過不足、旧字と新字の混用、外国語のスペルミス、表記の揺らぎ、図録に収録される出品リストや年譜などの資料との整合性、文字と文字との間隔や行間、文字のサイズ違い、書体(フォント)の違いなど確認項目は、山のようにあります。これ以上ないというほど丁寧に見たつもりでも、納品されたカタログに漏れや見落としを発見して、凹むこともしばしばです。

 単純に文字だけ追っていては気づけない間違いもあります。別の展覧会でのことですが、図録校正中に出品リストの寸法の欄を見て「輸送トラックに積載可能な大きさを超えている?」と思って確認したところ、0が一つ多かったことがありました。直接見たことのある作品ではなかったのですが、展覧会のメイン担当者から「今回は重量のある立体作品ばかりで、輸送にトラックが何台必要になるか…」との話を何度も聞いており、作品積み込みのイメージが漠然と頭の中にあったことが功を奏したのでしょう。単純な入力ミスとはいえ、後々まで資料として残るものですから、慎重を期すに越したことはありません。

 われわれ学芸員の校正作業は、校閲のプロとは比べものにならないほど甘いものですが、実際に作品を取り扱う立場でしか気づき得ない観点から少しでも役割が果たせるとホッとします。

校正を通して一語一語に向き合い、筆者がどのような意味合いで使っているのか分析するように読むのも楽しいです。そんな呑気なことを言っていられるのも今のうちかもしれませんが…(老視は校正の敵)。

 この原稿がアップされる頃には、図録は制作の最終段階、展覧会の準備もいよいよ迫ってきます。3月3日(土)からの真島直子展、どうぞご期待ください。

 

 

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