休館

  名古屋市美術館は、現在、改修工事のため長期の臨時休館に入っています。

 改修工事の一番大きな部分は美術館の外側です。美術館外側の敷地内床面に敷き詰められたタイルや南側庭園の遊歩道が、長年の使用により劣化して、剥がれたり、崩れたりしているところがあり、しかも、雨で濡れると滑りやすくなるので、とても危険でした。これらの部分が全面的に改修されます。

 改修は、美術館の建物の外側だけではありません。

館内のエレベーターは、過去に故障してお客様にご迷惑をおかけしたことがありましたが、その後、修理して、点検を重ねて問題がなくなっていたにもかかわらず、動かすたびに「ガガガッ」という音がするようになっていました。その音は、大丈夫とはわかっていても、気になる人にとっては、恐怖をかきたてるものでした。原因が、長期使用による劣化だったので、今回ついに交換されることになりました。

 展示室の壁や床も改修されます。長年、作品を展示するたびごとに穴を開けられ、また展示のたびに様々な色に塗られ、そのたびごとに元の色に戻すことも含めて塗り重ねられた壁面は、あちこちボコボコと凹凸が目立ちます。そのようにボコボコになってしまった壁も貼り直されます。また、企画展示室の床も傷んだタイルだけを交換し続けてきたために、まだらな模様になってしまっていますが、それも開館当時の仕様のものでキレイに貼りなおされる予定です。

 さて、臨時休館期間に入り、改修工事を前に作品をすべて収蔵庫に撤去いたしました。

 がらんとした展示室が、どこか祭りの後のような寂しさを醸し出します。

展示室の写真1

展示室の写真2

常設展示室も空っぽです。

展示室の写真3

作品がない展示室です。もちろんお客さんも監視の方も誰もいません。

 いつもは、モディリアーニの《おさげ髪の少女》が飾られているガラスケースも空っぽです。

展示室の写真4

展示室の写真5

特別展示室の床の写真です。全面的に汚れて傷だらけになってしまっているので、まだら模様になっていることもわかりにくいかもしれません。これも、キレイにすべて張り替えられます。

床面の写真

美術品にとって美術館は家です。

 原田マハさんの『デトロイト美術館の奇跡』という本にそういう表現がありました。2013年にアメリカのデトロイト市は財政破綻し、デトロイト美術館のコレクションを売却して負債額の返済に充てるという話が出て、美術館が存続の危機に陥るという実話をもとにした小説です。

 その小説の中である登場人物が言います。

 アートはあたしの友だち。だからDIA(註:デトロイト美術館のこと)は、あたしの「友だちの家」なの。(原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』P.73

 友だちだと思える作品を見つけられるというのは、素敵なことだなあと思いました。

 作品は、わたしたち見る人によって全然違って見えることがあります。同じ人でも、見る時の状況や感情によっても、見え方は違ってきます。時には、刺激を与えてくれたり、悩みを聞いて相談に乗ってくれたり、喧嘩したりもする友だちのように、作品と対話することで、自分の中に新しいアイディアが生まれたり、勇気をもらったりすることがあるかもしれません。

 「対話」といっても、もし作品が本当に話をはじめたら、それは心霊現象ですが(笑)。

 実際は、作品を見るわたしたちが、作品の中に自分の気持ちや感覚を投影して見ることで、自分と作品に投影された自分とが対話をして、何かを感じるということなのでしょう。

 ところで、わたしも、仕事をしている時と、作品を鑑賞している時では全然違った風に作品と対話をします。

 例えば、展示替え作業中、作品の位置を決める時。隣の作品との距離が小さい時には、

「おいおい、こんなところに置くなよ。狭苦しいじゃんか。」

「すいません。すぐ直します。」

 あるいは、壁が穴だらけで汚い時とか

「ちょっと!こんなきたねえところに展示するんかい!」

「はいはい、今は位置決めてるだけなんで、後でパテ埋めしてから展示しますんでご安心ください。」

とか。

 あるいは、展示が終わり、ライティングがうまく行った後なんかは

「わたし、今、いい状態でスポットライトを浴びてるんだから、邪魔しないでね。」

と、よそ行きの顔で言われているような気持ちになったり。

 でも、作品を鑑賞している時は全然違っています。

心惹かれる作品に出合った時に、自分だけに何かを語りかけてくれるような気持ちになったり、懐かしい気持ちを思い起こしたりすることもあります。そういう時には「友だち」に会うというのに近い感覚かもしれません。

 というわけで、これからの3か月間で行われる改修工事が、そんなわたしたちの「友だち」に出会う場をより心地いいものにすることにつながればと思います。

 10月に「ランス美術館」展とともに、再オープンする時には、名古屋市美術館は、きっとお風呂に入ってさっぱりした後のように、キレイな姿でみなさまをお迎えできるかと思います。

 改修工事のあと、またみなさまにお会いできるのを楽しみにしております~!

投稿者:hina

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