閾値を超える

しばらく前から美術館の教育普及活動について考えることが増えています。名古屋市美術館が開館した1980年代末から90年代にかけては、ブームとも言えるような興味や関心を集め、各地各所で様々な試みが行われていました。教育普及を専門とする学芸員の採用も増え、美術館の活動内容が変わって行く兆しのようなものが感じられたものでした。

ワークシートやワークショップ、ギャラリートークや音声ガイドなどはこの頃から一般に広まり、今日ではあって当たり前、手法も標準化が進んだためか中身が問われることもなくなってきています。コンピュータやスマートフォンの普及が進み、教育普及の手段や手法が変わりつつある今は、移行にともなう停滞期なのかもしれません。

あいちトリエンナーレで実施されているNET  Project》は、ブラジル出身の作家ジョアン・モデさんの企画によるものです。紐をつなげてネット()を織り上げるというもので、観客である我々が参加者として作品を作り上げて行きます。

「つなぐ」「結ぶ」という概念は、教育普及活動では基礎的なものであり、その発想のもとで考案されたプログラムは数多くあります。東日本大震災では「絆」という言葉が多く語られましたが、それより以前、例えば新潟県中越地震の折などにも市民参加によって紐や布をつなぎあわせ、何ものかを作り上げるプロジェクトが行われています。

モデさんのように作家発案のもの、美術館の教育普及担当者の発案によるもの、とそれぞれあるのですが、単純同一に比較できないとしても、後者が様々な点において分の悪い状態にあるのは間違いないでしょう。表現活動としてのプロジェクトと教育普及活動としてのプロジェクトの類似と境界が、評価とともに問われてきます。 

さて、モデさんの《NET  Project》は、開始から2週間余りでこれほどの密度を持つほどになりました。(817日撮影。開始直後の様子は、730日付けのブログをご覧ください。)

 

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トリエンナーレ終了まで、まだ2ヶ月もの期間があります。これからどんな状態になって行くのでしょうか。まったくの偶然ですが、少し前に始まったポケモンGOは過剰な同調行為がいつもとは違う状態を生じさせることを目に見えるかたちで示しました。悪意のない行為も度が過ぎれば望ましくない状態をもたらす可能性がある。ネットの重みに耐える樹々に「ほどよい加減」を考えさせられました。モデさんの意図が何辺にあるのか、それが明らかになるまで様子を見ることにしましょう。

 

投稿者: み。

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