誰もが美術を楽しめるように

今年の41日から「障害者差別解消法」(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」) が施行されました。「この法律は、障害のある人への差別をなくすことで、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目ざしています。」(「障害者差別解消法リーフレット(わかりやすい版)」、内閣府発行より)という趣旨で作られました。

 

この法律は、役所や会社、お店などに向けられたもので、個人に直接向けられたものではありません。この法律では「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」が差別とされています。「不当な差別的取扱い」は役所も会社やお店も等しくしてはいけないことになっており、「合理的配慮をしないこと」は、役所はしてはいけないが、会社やお店はしないように努力することとなっています。

 

名古屋市美術館は名古屋市の直営施設であるため、役所の一部ということになり、障害のある人へ「合理的配慮をしないこと」はしてはいけないことになります。

 

先日、同じく直営の公立美術館の学芸員と話す機会があり、この法律が話題となり、他館の状況や認識を教えていただくこととなりました。

 

美術館はこれまでにも障害のある方への差別や不便である状況を改善する取り組みを、それぞれ行ってきています。それでも、美術館には、障害のある方への差別的状況が残念ながらたくさん残されています。「合理的配慮をしないこと」はしてはならないけれど、施設改修をはじめとする物理的改善のための予算もなく、もっと内容にかかわる部分を手当てする人員の余裕もないなかで、どうしたらよいのだろうという困惑がこの法律を真摯に受け止めている館ほど大きいように私には感じられました。

 

差別的な状況を、気づいたところやできるところから改善していくことは言うまでもありませんが、この法律の施行に当たっては、障害のある人から対応を求められたときに、重すぎる負担の場合は重すぎる理由を説明し、別の対応を提案することも含めて、当事者が話し会い、理解を得るよう努めることが大切だと説かれています。現実には、障害のある方が美術館を利用することは、以前に比べれば増えたものの、いまだ多くはありません。その意味では、障害のある方も我々美術館の人間も、そして障害のない利用者のみなさんも含めて、お互い分からないことの方がまだ多いように思います。

 

失敗や衝突はあるかもしれないけれど、不安に怯えることなく、ひとつひとつ問題を解決していくこと。それが、望む人の誰でもが美術館を楽しみ、美術を楽しむことができるようになるために必要とされていることではないかという気がします。たやすいことではありませんが、良い機会とこれを前向きに捉えることが大切だと思えます。みなさまにも関心を持っていただき、寛容にお力添えいただければと思います。

 

投稿者: み。

 

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