はじめての美術 絵本原画の世界2013 - No.2

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」(6月15日[土]~7月21日[日])は会期のなかばを過ぎ、当館ボランティアによるギャラリートークを除いて、関連催事は野村誠さんのコンサート「絵本原画の音楽」を残すのみとなりました。このコンサートは、展示している絵本原画を楽譜にして鍵盤ハーモニカによる即興演奏をしていただくもので、1時間ほどのあいだ会場内を移動しながら行います。本展は子どもの来場者が多く、週末の入場者数が平日よりも格段に増えるのですが、会期最後の土曜日である7月20日のコンサート実施日は、1日の入場者数が2,000人を超えると思われます。当日静かに落ち着いて作品と向き合いたい方は、コンサート実施時間の午後2時から3時過ぎまでを特に避けてご来場ください。

ご覧になられた皆様からおおむね好評をいただいている本展ですが、原画の持つ色の美しさや描写の細やかさに驚かれている方が多いようです。印刷物である絵本は、原画がそのまま再現されているわけではありません。再現されていない理由には、経済性や印刷技術の制約といったどちらかといえばマイナスの側面と編集などのプラスの側面とがあります。私たちが普段開催している日本画や油絵などの絵画を紹介する展覧会では、図録の制作にあたり、できるだけ色彩を正確に再現し、可能ならば質感までも再現したいと努力しますが、どうしても限界があります。だからこそ展示の場所に足を運び、本物を見る必要があるといえるのですが、これは絵本と絵本原画のかかわりを考えるときにも当てはまります。

絵本は、絵だけでなく、文章そのものや絵と文章との組み合わせ、開き(右開きか左開きか)、判型(縦判か横判か)、文字組みなど、数多くの観点を持っています。原画の展覧会では、おもに文章に関わる要素が欠落するわけですが、絵にまつわる事柄に意識を向けるには良い機会であるといえます。

編集によって絵本と原画に違いが生まれている例をご紹介します。『ぐりとぐら』の26-27頁には卵の殻で作ったクルマが出てきます。絵本の卵の殻は白ですが、原画ではうっすらと赤い色が施されています。原画をご覧になって何か印象が違うなと思われた方もあるかもしれませんが、白と赤、どちらの納まりが良いと感じられるでしょうか。また、20-21頁と24-25頁では、原画ではそれぞれの頁に一頭ずつ、計二頭いる象が、絵本では向かって右側頁の一頭がいなくなっています。象のいた場所には、文章の文字が組み入れられています。象ではなく、他の動物を消して、そこに文字を入れたら、印象はどのように変わるでしょうか。

なんだか間違い探しのようになってきましたが、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』など他にもいくつかありますので、興味のある方は絵本と図録の図版をじっくりと見比べてください。

投稿者:み。

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