月別アーカイブ: 2017年7月

出前アート体験

子どもたちは夏休みですね。

 名古屋市美術館は、名古屋市の教育委員会に所属しています。教育委員会は、所属の美術館、博物館、科学館だけでなく、市立大学など市に関係のある諸団体と連携して、希望に応じて市立の小学校、中学校、特別支援学校でさまざまな分野の専門家が授業を担当する「その道の達人派遣事業」を行っています(名古屋市公式ウェブサイトhttp://www.city.nagoya.jp/kyoiku/page/0000050684.html)。

 美術館、博物館、科学館は、三者で「出前ミュージアム」というプログラムを担当しており、美術館は「出前アート体験」という名称で学芸員が授業を行っています。今年度は4つのテーマで希望を募りましたが、そのなかの1つ「アートカードで学ぼう」の授業を先日、小学校で行ってきました。

アートカードは、美術作品を絵葉書大のカードにしたもので、実物を見ることができなくても美術に親しむことができるようにと開発された教材のひとつです。名古屋市美術館は所蔵作品60点を使用したオリジナルのカードを作成しており、「アートカードで学ぼう」はそのカードを使用して授業を行います。アートカードの使い方は多様にあるため、授業を行うクラスの担任教諭などに希望した理由や狙いなどを確かめ、それに見合うように内容を用意しています。

授業では、毎回、子どもたちから新しい気づきを与えられています。先日の授業でも多くのことを教えられましたが、特に印象深かったことがらを以下に紹介します。

アートカードを用いる授業では、子どもたちに見て気づいたこと、感じたこと、思ったことを自由に話し合ってもらう時間を多く設けるようにしています。美術史の知識や事実に基づいた正しい解釈を教えることよりも、まずは興味や関心を持ってもらい、よく見ることを通して何がどのように表わされているかを自分なりにつかみ、そのことから抱いた自分の思いを美術鑑賞の出発点として大切にして欲しいと考えているからです。そんな活動のなかで、鬼頭鍋三郎の《手をかざす女》について、「津波の後の様子」と語った子どもがいました。

草原にあるコンクリート製の井戸を背にして前掛けを付けた洋装の女性が右手を額に当てて素足で立つ姿を描く《手をかざす女》は、1934年に制作されており、津波の後の光景を描いたものではありません。「働く女性」を主題に作家が文字通り「絵になる光景」を構想して作画した作品です。私はこの作品の制作背景を知っているため、このように思うことはない(なかった)のですが、以前、この作品を見て「戦後の焼け跡から復興しつつある様子」と語られた方があり、「虚心に見ればそのようにも見える。なるほど」と思ったことを記憶しています。

授業をしたのは小学校3年生のクラスです。この年代の子どもたちにとっては、先の戦争よりも東日本大震災の津波による被害が実感を伴う体験なのだと気づかされました。報道などに触れるだけでなく、名古屋市にも避難をされている方があり、身近に体験を共有する状況もあることを改めて意識させられました。

子どもたちは《手をかざす女》を覚えていてくれるでしょうか。気づいたことの遣り取りからさまざま連想し、思い思いの理解を得た子どもたちが、美術館で実作と出会い、またその時々の興味や関心から作品への理解と愛着を深めて欲しいと思います。《手をかざす女》に限らず、そうした営みが美術作品に命を与え、後世に残して行く意味をもたらすのだと思います。

《手をかざす女》については、当館ウェブサイトで、名古屋市美術館ニュース アートペーパーの第101(2016年春号)(http://www.art-museum.city.nagoya.jp/dir_Artpaper/Artpaper101.pdfを、アートカードについてはこちらのページ(http://www.art-museum.city.nagoya.jp/publish/artcard)をご覧ください。

「出前アート体験」は、当館ウェブサイトに掲載の「年報」の「教育普及事業」で、授業内容などをご覧いただくことができます。

アートカードを用いる教育プログラムは、美術館内で実施する教育事業に含まれていることもあります。興味や関心のある方はそちらにご参加ください。

投稿者:み。

休館

  名古屋市美術館は、現在、改修工事のため長期の臨時休館に入っています。

 改修工事の一番大きな部分は美術館の外側です。美術館外側の敷地内床面に敷き詰められたタイルや南側庭園の遊歩道が、長年の使用により劣化して、剥がれたり、崩れたりしているところがあり、しかも、雨で濡れると滑りやすくなるので、とても危険でした。これらの部分が全面的に改修されます。

 改修は、美術館の建物の外側だけではありません。

館内のエレベーターは、過去に故障してお客様にご迷惑をおかけしたことがありましたが、その後、修理して、点検を重ねて問題がなくなっていたにもかかわらず、動かすたびに「ガガガッ」という音がするようになっていました。その音は、大丈夫とはわかっていても、気になる人にとっては、恐怖をかきたてるものでした。原因が、長期使用による劣化だったので、今回ついに交換されることになりました。

 展示室の壁や床も改修されます。長年、作品を展示するたびごとに穴を開けられ、また展示のたびに様々な色に塗られ、そのたびごとに元の色に戻すことも含めて塗り重ねられた壁面は、あちこちボコボコと凹凸が目立ちます。そのようにボコボコになってしまった壁も貼り直されます。また、企画展示室の床も傷んだタイルだけを交換し続けてきたために、まだらな模様になってしまっていますが、それも開館当時の仕様のものでキレイに貼りなおされる予定です。

 さて、臨時休館期間に入り、改修工事を前に作品をすべて収蔵庫に撤去いたしました。

 がらんとした展示室が、どこか祭りの後のような寂しさを醸し出します。

展示室の写真1

展示室の写真2

常設展示室も空っぽです。

展示室の写真3

作品がない展示室です。もちろんお客さんも監視の方も誰もいません。

 いつもは、モディリアーニの《おさげ髪の少女》が飾られているガラスケースも空っぽです。

展示室の写真4

展示室の写真5

特別展示室の床の写真です。全面的に汚れて傷だらけになってしまっているので、まだら模様になっていることもわかりにくいかもしれません。これも、キレイにすべて張り替えられます。

床面の写真

美術品にとって美術館は家です。

 原田マハさんの『デトロイト美術館の奇跡』という本にそういう表現がありました。2013年にアメリカのデトロイト市は財政破綻し、デトロイト美術館のコレクションを売却して負債額の返済に充てるという話が出て、美術館が存続の危機に陥るという実話をもとにした小説です。

 その小説の中である登場人物が言います。

 アートはあたしの友だち。だからDIA(註:デトロイト美術館のこと)は、あたしの「友だちの家」なの。(原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』P.73

 友だちだと思える作品を見つけられるというのは、素敵なことだなあと思いました。

 作品は、わたしたち見る人によって全然違って見えることがあります。同じ人でも、見る時の状況や感情によっても、見え方は違ってきます。時には、刺激を与えてくれたり、悩みを聞いて相談に乗ってくれたり、喧嘩したりもする友だちのように、作品と対話することで、自分の中に新しいアイディアが生まれたり、勇気をもらったりすることがあるかもしれません。

 「対話」といっても、もし作品が本当に話をはじめたら、それは心霊現象ですが(笑)。

 実際は、作品を見るわたしたちが、作品の中に自分の気持ちや感覚を投影して見ることで、自分と作品に投影された自分とが対話をして、何かを感じるということなのでしょう。

 ところで、わたしも、仕事をしている時と、作品を鑑賞している時では全然違った風に作品と対話をします。

 例えば、展示替え作業中、作品の位置を決める時。隣の作品との距離が小さい時には、

「おいおい、こんなところに置くなよ。狭苦しいじゃんか。」

「すいません。すぐ直します。」

 あるいは、壁が穴だらけで汚い時とか

「ちょっと!こんなきたねえところに展示するんかい!」

「はいはい、今は位置決めてるだけなんで、後でパテ埋めしてから展示しますんでご安心ください。」

とか。

 あるいは、展示が終わり、ライティングがうまく行った後なんかは

「わたし、今、いい状態でスポットライトを浴びてるんだから、邪魔しないでね。」

と、よそ行きの顔で言われているような気持ちになったり。

 でも、作品を鑑賞している時は全然違っています。

心惹かれる作品に出合った時に、自分だけに何かを語りかけてくれるような気持ちになったり、懐かしい気持ちを思い起こしたりすることもあります。そういう時には「友だち」に会うというのに近い感覚かもしれません。

 というわけで、これからの3か月間で行われる改修工事が、そんなわたしたちの「友だち」に出会う場をより心地いいものにすることにつながればと思います。

 10月に「ランス美術館」展とともに、再オープンする時には、名古屋市美術館は、きっとお風呂に入ってさっぱりした後のように、キレイな姿でみなさまをお迎えできるかと思います。

 改修工事のあと、またみなさまにお会いできるのを楽しみにしております~!

投稿者:hina

地球”大洗浄”

美術館の通用口を出た白川公園(遊具が設置されている方)の中に大きな地球儀があります。名古屋市美術館が建設される以前からあったような気がします。決して小さくはない球体ですが、周囲の樹々が大きくなって、奇妙なオブジェのようにも見えます。遊具でもなく、その周りを子供たちが“追いかけっこ”をする程度です。冬になれば、雪が積もり、正しく北半球は雪に覆われます。

最近、その地球儀が洗浄されました。長年積もった埃と大気に含まれるガス、さらには雨水とともに樹々から落ちた樹脂等によって、陸と海の境界も解らないほどに汚れていましたが、洗浄作業によってまるで新たな天体のようによみがえりました。大雑把に描かれた地図はそのままですが・・・。

投稿者:J.T.

びじゅつびっくりたまてばこ「イチおし!」を開催しました

6月24日土曜日に、美術を楽しむプログラム「イチおし!」を、事前に申し込みをいただき、当選した28名の小学生の皆さんを迎えて開催しました。

 DSC_8164ss

 

まずはグループに分かれて、ボランティアの皆さんのガイドで美術館に展示されている彫刻を見て回りました。子どもたちの頭上にはボロフスキーの《フライングマン》。手足はどのように動いているかな?空を飛ぶってどんな気持ちだろう? みんなで話し合いながら観ていきました。

DSC_8207ss

そして、次に全員でゴームリーの《接近》をじっくり観察しました。床に手足を広げて寝そべる人物。頭はどんな向きかな? これまで観た作品とどこが違うかな?気付いたことを発表していきました。

そして、学芸員からこの人物は作家本人であり、「地球に近づきたい!」と思い、このポーズをしていると説明を聞きました。

DSC_8228ss

作品を見たあとは、キッズコーナーに戻り作品づくりです。「自分だったら、こんなポーズで地球にくっつきたい!」として大きな白い紙の上で、寝そべったり、横を向いたり、手を後ろに座ったり、思い思いにポーズをとり、鉛筆で型を取り、色鉛筆で描いていきます。ポーズをとった自分を上から見た様子を想像したり、手を伸ばしている姿を描いたりと、“地球に接近するもう一人の自分”を描き出していきました。なかにはさらにイメージを膨らませて、「近づきたい!」と思った地球の場所や様子を描き加えた子どもたちもいました。

DSC_8311ss

最後に、出来上がった作品をみんなで見て回りました。すてきな作品を描いてくれた皆さん、ありがとうございました。

 『びじゅつびっくりたまてばこ』の次のプログラムは1126日(日)に「まるごと玉手箱」を予定しています。1031日(火)まで往復はがきで申し込みを受け付けています。ご参加をお待ちしています!

ご案内はこちら→ 

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/exhibitions/kidsprogram/bbt2017

投稿者:I.