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小さなこどもとの鑑賞―永青文庫展にて

 特別展「永青文庫 日本画の名品」が始まって早くも3週間が経ちました。このブログが掲載される頃には一部展示替えも終わり、後期展示の菱田春草《黒き猫》や小林古径《髪》との対面を楽しみに来館した皆さまで、さらに賑わっていることでしょう。

 

 私事で恐縮ですが、展示替え前の某日、大学の同級生が家族で展覧会を観に来てくれました。もうすぐ13カ月になる娘さんも一緒です。あんよも上手になり、お出かけが少しずつ楽しくなってきた頃です。平日でさほど混雑はしていなかったのですが、友人は挨拶もほどほどにベビーカーと大きな荷物を総合案内に預け、奥さんは抱っこひもをかけて娘さんとの目線を近くし、3人で展示室へ入っていきました。

 

 1時間ほど経って、友人から届いたメールには「ありがとうございました。娘は孔雀の絵が気に入ったようです」と書かれていました。その文面から、友人夫婦が娘さんの目線や反応をよく見て、彼女の小さなつぶやきに耳を傾け、言葉をやり取りしながら一緒に楽しく鑑賞している様子が目に浮かびました。

 

    なぜ孔雀の絵が気に入ったのか、本人に具体的な説明を求めるのは無理な話です。小林古径や近代日本画の名品を知識として知っているはずもありません。ただ、彼女が生まれてから今までに見てきたもの(例えば、最近動物園に行ったときに本物の孔雀を見たとか)と、何らかの共通点を見つけて関心を持った可能性は高いでしょう。

 

 大切なのは、こどもの様子を「なんか楽しそうにしてるね」「食いつくように見てるな」「どこが気に入ったんだろう?」と傍にいる大人が気づいて、受け止めてあげることです。大人はつい先回りして「この動物は何?」「何色をしてる?」とクイズのように知識を問うてしまいがちですが、小さなこどもにとっては、まず自分の中で起こっている心の動きを知ることの方が重要です。「この鳥さん大きいね」「びっくりだね」「羽がいっぱいあるね」「きれいだね」「かっこいいね」そんな短いやり取りを繰り返すうちに、こどもは見ることの楽しさや心が動いた時に使う言葉を自然と身に付けていくのだと思います。大好きな人たちと一緒の時間であれば、なおのこと。

 

 幸い、本展ではすべての作品が展示ケースの中にあり、こどもが手を伸ばしても作品に触れる心配はありません。決して広くはない会場、混雑時にはご不便をおかけすることがあるかもしれませんが、若い方、子育て中の方々にも諦めることなく展覧会を楽しんでいただきたいと思い、投稿します。

 

 

    余談ですが、友人の娘さんは普段からバレエに接する機会が多い家庭環境で生活しています。もしバレリーナの華やかで高貴な雰囲気、凛々しい姿と小林古径《孔雀》との間に重なり合うものを彼女が見出していたとしたら…興味深いですね(あくまで個人の憶測ですが)。

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