月別アーカイブ: 2014年10月

パリの新しい美術館

またまたパリに来ております。今回は新しい美術館を二つご紹介します。
まず最初はルイ・ヴィトン美術館。 正式名称は「Fondation Louis Vuitton」すなわち「ルイ・ヴィトン財団」ということになりますが、美術館とご紹介した方がわかりやすいと思います。一般公開は10月27日からという、本当に出来立てほやほやの美術館です。
場所はパリの西、ブーローニュの森の中です。地下鉄の駅を下りて歩くこと10分ほど。
公園を過ぎたあたりから異形の建物が目に入ります。

(1)ルイ・ヴィトン美術館

大きすぎて全体像を写真に収めることができませんが、何となく宇宙船を思わせるような雰囲気です。入口正面に向かうと、そこにはお馴染みの「L」と「V」を組み合わせたロゴが私たちを迎えてくれます。

(2)美術館の正面

開館したばかりということもあって入口には長蛇の列。この建物は、スペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館などをデザインした建築家フランク・ゲイリーの最新作です。中の展示室の一つで、美術館が完成するまでの過程を、模型やデッサンなどでたどる展示を行っていましたが、その模型を見ていただくと全体像がつかめると思います。

(3)全体の模型

現代美術を紹介する美術館なのですが、お客さんの関心は美術品より建物にあるようで、階上のテラスに向かう人が大勢います。

(4)階上のテラス

そこに上って南を見れば、そこにはブーローニュの森が広がっています。

(5)南を向けばブーローニュの森

そして西の方に目をやれば、新凱旋門を中心とするデファンス地区の高層ビル群が見えます。

(6)西を向けばデファンスのビル街

肝心の展示室ではリヒターやボルタンスキーといった美術館のコレクション作家が、作家ごとに一部屋ずつ当てられて展示されています。

(7)リヒターの部屋

他に企画展示室もいくつかあります。しかし、個人的な感想ですが、建物はともかく、肝心の展示が今一つな印象です。展示室だけではないのですが、内装が全体的にチープな感じなんですね。もちろんルイ・ヴィトンとフランク・ゲイリーの組み合わせですから、チープなはずはないのですが、どうもそういう印象を抱いてしまうのです。建物が関心を集めているうちはよいが、そのあとはどうなるのだろうと、同じ業界の人間として余計な心配までしてしまいました。

さて、もう一つの美術館は逆にパリの街の東側。新オペラ座があるバスティーユ地区の「メゾン・ルージュ」です。新しいと言っても実は今年で開館10周年になる美術館ですから、私が知らなかっただけで、ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。こちらは写真はないのですが、ルイ・ヴィトン美術館とは対照的に、既存の建物を改装して美術館に転用したもので、注意していないと見過ごしてしまうような街中のビル街の一角にあります。しかし、中に入ると外観からは想像がつかないほどの展示面積があり、そこに世界各地の「アール・ブリュット」、すなわち障害者や心に病を抱えた人たちの作品を含む、既存のアートの枠組みに収まりきらない作品が、これでもかというほど展示されています。日本人作家の作品も何点か展示されていますが、とにかく一点一点の密度が濃い。時間が十分に取れず、最後までしっかりと見ることができませんでしたが、関心のある方は是非一度訪問されることをお勧めします。
Paris Maison Rouge で検索すれば、必要な情報はすべて入手できます。

投稿者:F

浅野弥衛アトリエ訪問

浅野弥衛(あさのやえ/1914-1996)は、引っかきによる線描で画面を作る独自の作風で高い評価を得ている戦後の東海地方を代表する作家です。生誕100年となる今年は、各地で浅野を偲ぶ展覧会が開かれ、久しぶりに多くの作品がまとめて見られる機会となっています。

当館でも、所蔵作品を紹介する常設展示「名品コレクション展II」(会期:9月6日~10月26日[前期]/ 11月8日~12月23日[後期])において、<郷土の美術>のコーナーで「浅野弥衛と桜画廊の作家」というテーマで作品を展示しています。

「桜画廊」は、名古屋を代表する現代美術画廊であり、浅野の主要な作品発表の場でもありました。「桜のおばちゃん」として親しまれていた画廊主の藤田八栄子(1910-1994)の逝去による閉廊から20年。これに因む企画でもありますが、浅野と同じ時代を生きた作家たちの作品とともにその作品をご覧いただくことを意図したものでもあります。

三重県鈴鹿市に生まれ、生涯を過ごした浅野は、「三重の作家」であり、10月1日の誕生日を初日として、三重県立美術館とパラミタミュージアムで個展がはじまっています。それに先立ち、鈴鹿市文化会館でも9月26日から28日までの会期で個展が開かれ、あわせて同市内にある浅野のアトリエが一般に公開されていました。

浅野1
アトリエの外観

浅野2
アトリエのなか

浅野の生家は代々刻み煙草の仲買を営んできた旧家で、アトリエは築300年ほどのしもた屋の店先を改修したものです。アトリエのなかだけでなく、土間を挟んだ板敷にも作品や資料類が展示されていました。

浅野3
アトリエの内窓から見た店先の板敷

作家が使用していた道具や画材も展示されています。

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道具と画材。書籍は浅野が装丁を担当したもの

お邪魔している間にもたくさんの方がいらしていました。

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作品や資料を熱心にご覧になるみなさん

アトリエを訪れるのは久しぶりのことでしたが、ご遺族によって大切に守られているのを拝見し、変わらぬ様子に懐かしさを感じました。浅野の作品は、作家が暮らした鈴鹿の自然と風土に強く結びついています。浅野が「鈴鹿の作家」であることを改めて感じたアトリエ訪問でした。

投稿者:み。