月別アーカイブ: 2013年3月

美術館と「今でしょ!」

「美術館の人は、展覧会以外にどんな仕事があるの?」とよく聞かれます。
例を挙げればキリがないのですが、予告なく飛び込んでくる仕事のひとつに美術作品や画家、作家に関する問合せの電話があります。

先日も東京の某テレビ局から電話があり、
「林雲鳳(はやし・うんぽう)という画家について知りたいのですが、ご存知のことを教えていただけないでしょうか?」と尋ねられました。
林雲鳳(1899-1989)は、現在の岐阜県土岐市出身で、歴史に題材を得た作品を多く残している日本画家です。
当館でも3点ほど作品を所蔵しているので、名前を聞いて「あぁ」とすぐにピンと来ました。
しかし、一般的にそれほど知られている方ではなく、はて、一体どんな番組で調べているのかと思い、尋ねたところ、
「番組に林修(はやし・おさむ)さんをお招きして、インタビューを放送するのですが、祖父にあたる方が日本画家の林雲鳳さんと聞き、情報を集めているところなのです」とのこと。

…最初は「??」だったのですが、出演されているCMの決めゼリフ「今でしょ!」の一言で人気を集めている予備校の有名講師の方と分かり、「えぇーっ?!」
まさか、時の人と自分の勤め先がこんな接点でつながるとは…。

放送日が迫っているということで、取り急ぎ、先方が必要とされている情報を聞き出し、美術館にある文献資料から画家の経歴などを提供して仕事自体はつつがなく終わったのですが、気になって後日番組を見てみました。

画家のアトリエでの制作の様子が写真で映し出されたほか、孫として同じ絵の道には進むことはなかった(ご本人曰く「絵の才能がないことは幼稚園時代にハッキリした」)ものの、可愛がってくれた祖父の影響で歴史が好きになり、小学校の頃は歴史の本ばかり夢中になって読んでいた、などのエピソードが紹介されていました。
現在のお仕事につながる、勉強が好きになったきっかけもその頃の体験にあったようです。

“芸術家”と聞くと、自分たちとは接点のない別世界に住んでいる人という勝手なイメージを抱きがちですが、決してそうではなく、私たちと同じように大切な家族がいて、生活を営んでいて、そういう血の通った生身の人間が、美術作品を生み出している。
ごく当たり前のことですが、美術館が守り伝えている作品は、そのような人間のリアルな営みの中にあるものだと思うと、単なる研究対象の資料としての見方とはまた違った捉え方ができるなぁ、と感じました。

年度の変わり目のせわしない毎日ですが、こういう小さな発見を楽しみながら仕事をしています。

投稿者:3

“常設展示室 壁の色を替えました。” -15年ぶりの会話-

A.名古屋市美術館が休館してるんだって。知ってた?

B.名古屋市美術館のブログを読んでいるから知っているよ。

A.休館中、学芸員さんたちは何をしてるんだろうね?

B.それもブログに書いてあったよ。展覧会等の準備とかなんだろうね。そうそう図書室と常設展示室が新しくなるそうだよ。

A.新しくなるって?

B.図書室は書棚を増やして、常設展示室は壁の色を塗り替えたそうだよ。

A.へーっ。そうなんだぁ。壁の色を塗り替えるって、美術館の壁は白じゃないの?

B.名古屋市美術館の常設展示は、四つの収集方針に分けて展示し、それぞれの分野で壁面には異なる色彩が塗られているんだよ。

B.えっ?!それいつからなの?

A.もう、かれこれ15年にもなるんだよ。

B. えっ?!そんな前から? 私、名古屋市美術館には行ったことあるけど、特別展を見るだけで結構疲れてしまって、常設展はご無沙汰だわ。まぁ、いつでも観れるしね。

A.それは言えるね。ただ、地下の常設展では、本当に好きな作品をじっくりと見れるからね。また、解説ボランティアの人たちによる丁寧で軽妙な語り口も評判だよ。まぁ、それはそうとして壁の色だよ。

B.あっ、そうそう。

A.空調工事による休館を利用して、地下一階の常設展示室の壁面の色を一新したんだって。これまでモディリアーニの《おさげ髪の少女》が展示されているエコール・ド・パリのコーナーは赤茶色、ディエゴ・リベラの壁画《プロレタリアの団結》が展示されているメキシコは深い緑色、そして郷土の美術や版画や写真といったグラフィックなものを展示紹介していた常設展示室2は壁面が青く塗られていたんだよ。今回、学芸員さん全員で色見本を元にサンプルまで作らせて、壁の色を検討し決めたんだって。

B.それでどんな色になったのかしら?

A.エコール・ド・パリがDIC-N939《ぶどう酒色》で、メキシコのコーナーがDIC-F206《オリーヴ》で、常設展示室2はDIC-C135《中棕灰》になったそうだよ。

B. 作品に合うかどうか楽しみね。開館が待ち遠しいわね。それにしても結構くわしいのね。

A.まぁ、それほどでもないけどね。実は、15年前に壁の色を塗ったときにも、僕の会話が名古屋市美術館のニュース『アートペーパー』34号に載ったんだ。

投稿者:J.T.