月別アーカイブ: 2012年7月

青木野枝展準備中

10月にはじまる青木野枝展の準備が進んでいます。事務連絡にあわせて、青木さんがアトリエの様子を知らせる写真を送ってくださいました。今回の展覧会には新作が複数出品されます。そのなかの1点の制作風景です。


材料の鉄板。新作のパーツとなる円が、無駄なく同心円状に描かれています。

青木さんの作品は、一枚の鉄板から作り出されています。縦横無尽に展開する立体的な作品からは想像しにくいですが、もとは平面なのです。作品を丁寧に解体し、きちんと組合わすと、また平面になります。ちょっと驚きませんか?


鉄板を溶断する青木さん。なんとまあ、穴のなかに入るんですね! 溶断作業にも無駄がありません。

鉄板を溶断して、切り出したパーツを溶接でつなぐというのが、青木さんの作品の作り方。溶断は、溶かして切る。溶接は、溶かして付ける、ということです。

青木さんいわく、鉄は柔らかく、透明なもの。

溶けるほどに熱せられた鉄は、青木さんが言うように、確かに柔らかく、透明に光輝いています。青木さんの作品には、柔らかく、光をはらんだ鉄の表情が面影のようにとどめられています。そんな鉄の意外な表情を発見するのも楽しい体験です。

さて、写真のパーツはどの新作のものか…。

それは、会場でお確かめください。

ご来場をお待ちしています。

投稿者:み。

雨ニモマケズ

雨ニモマケズ

投稿者:sy

ポジション展 アーティスト紹介~大﨑のぶゆき

今日は、大﨑のぶゆきさんを紹介したいと思います。


《Shining mountain/Climbing the World II》2011-2012

真っ暗なお部屋の中に、巨大な画面が!画面には、山の映像が投影され、巨大な3面のスクリーンも、連なる山のようにもみえます。そして、スクリーンに映し出された映像をじっと見ていると・・・。

だんだんと溶けていくのです!しかも、溶けていくと同時に山に登っている人たちが、ひとりまたひとりと落ちていってしまいます。


溶けていく途中


溶ける前の画面

そして、しばらくすると、突然最初の画面に戻ります。

いったい、どういうことなのでしょう?

大﨑のぶゆきさんは、ご自身が見ている世界について感じること、そして、ご自身が存在しているという感覚について、問い直すということを作品化されているとおっしゃいます。
つまり、今自分がここにいるということはどういうことなのか、今自分が見ている世界は本当なのかどうなのかといった、今この時代にこの世の中に生きていることについての問いを作品に込めていらっしゃるというようにも言えると思います。

イメージが溶けていく映像を見ているのは、とても不思議な感覚です。自分が見ているものが、だんだんぼやけて来て、自分自身が見ているものそのものがゆらいでいくようにも感じてきます。

大﨑さんは、インタビューでこうおっしゃっていました。
「僕の作品でイメージが溶けていくことは、「今見ている世界は本当なの?」という問いかけでもあるのです」(ポジション展カタログP.40)

私たちが生きている現代の社会は、めまぐるしく変わる世の中のような気がします。将来の設計図も簡単に描けないぐらい将来も不確かだし、様々なメディアによってもたらされる情報は膨大で何が本当のことかもよくわからない、とても不安定な世の中だと思います。大﨑さんの作品は、そこに生きる私たちの感覚を代弁してくれているように感じます。

そして、じーっと溶けていくイメージを見ると、ぱっと元のイメージに戻ります。元のイメージが突然現れることで、最初のイメージが自分の頭の中で変容してしまったことにも気づきます。大﨑さんにとって、このように元のイメージを新たに見ることでそのイメージの変容について気づくことがとても大切なのだそうです。自分の記憶の不確かさを感じるということや、はじめと終わりといったことに縛られることがないことが重要なのだそうです。

また、ポジション展では、映像作品《Shining mountain/Climbing the World II》だけではなく、オブジェや写真など、大﨑さんの作品世界が堪能できます。大﨑さんの作品や制作の秘密について、直接お話をお伺いすることができる、アーティストトークは、7月14日午前11時からポジション展会場内で行われます(ポジション展入場券が必要になります)。作家さんから、直接お話をお伺いするだけではなく、制作のことについて質問をしたり、直接お話することができるまたとない機会です。ぜひともみなさまお越しください!

今回の展覧会に合わせて、大﨑さんは6月3日に「溶ける絵画 water drawing 水面に広がる不確かな世界」というタイトルでワークショップを開催されました。

このワークショップでは、大﨑さんの作品に登場する溶ける絵のイメージを制作する体験をしました。今回の作品の制作方法とは少し違うようですが、自分で描いたイメージが広がり、溶けて、ばらばらになる様子を体験することができ、大﨑さんの作品の秘密を少し共有できたような気がします。

ワークショップの様子と、その時に参加してくださったみなさんが制作した作品は会場でもご紹介しています。展示室1Fから2Fに上る階段の途中でご覧になることができます。

また、大﨑さんの作品は、現在東京でもご覧いただけます。
7月7日から8月11日 YUKA TSURUNO
http://yukatsuruno.com/exhibitions.html

ポジション展も、会期のこりわずかとなりましたが、最終週末はアーティストトークはじめイベントも盛りだくさんです。

みなさま、どうぞお見逃しなきよう! 美術館でお待ちしております!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~設楽陸

今日は、設楽陸さんの紹介です。

設楽さんの作品には、様々なイメージが登場します。

写楽に、天狗に、コンピューターの絵文字、千手観音、ピカソの雄牛!? 細かく見れば見るほど、いろんなイメージを見つけるのが楽しくなります。時には漫画の一コマのように、画面に文字が描かれていたりもします。


《断末シューター》2011


《天翔る龍の閃き》2011

これらのイメージは、いったいどこから来たのでしょう?ギャラリートークでは、設楽さんの作品の秘密についてお聞きしました。

設楽さん:「僕は、キャンヴァスに絵を描き始めたのが大学4年ぐらいと遅かったです。最初、何を描いていいかよく分からなかったので、とりあえず図書館に行っていろんな画集を見ました。狩野派から現代美術まで、いろいろ見て、紙にスケッチして、ドローイングしました。時には、ネットの画像とかもドローイングしました。そのほかには、歴史の本が大好きで、本からイメージしたものとか、そういったいろんなイメージをスケッチしていくというのをひたすらやっていきました。だんだん、自分の想像の核を掘り起こしていくことができて、自分のアートの起源に近づいていきました。」

なるほど、設楽さんの作品に見られる、古今東西のハイアートからサブカルチャーまでの幅広い様々なヴィジュアル文化のイメージは、この時の経験から来ているのですね!

また、設楽さんの作品には、独特で強烈な世界観が展開されています。とても物語性も強く、どこかに、そういう場所、空間が存在しているような気持ちになります。そのことについて、子どもの頃の体験から来ているのではないかとお話くださいました。設楽さんは、小さい頃、テレビゲームが禁止されていて、友達の家で、友達がゲームをプレイしている後ろで、紙にスケッチをして、家に帰って、紙を使って、テレビゲームを真似て遊んでいらっしゃったそうです。また、子どもの頃から、歴史の本が大好きでいらっしゃったそうで、歴史の中の出来事や人物を想像して、紙に描いて、遊んでいらっしゃったそうです。中学に入ってすっかり忘れていらっしゃったとのことですが、絵を描いているうちにその時の想像がだんだん蘇ってきて、絵に融合していったそうです。

設楽さんの類まれな想像力というか、世界を造り上げる創造力(妄想力!?)というのは、子どもの頃に育まれたものだったのですね!そして、なんと言っても、その創造力が遺憾なく発揮されているのが、このノートです!

現時点で、漫画も含めて全8巻。設楽さんが、創造した、架空の世界の架空の歴史が展開しています。絵画作品と平行して、2008年ぐらいから手がけられていた作品群です。絵画と合わせてご覧頂くことで、設楽さんの世界観がより深く理解できるのではないかと思い、今回、お客さんにすべて手にとって楽しんでいただけるように、オリジナルのノートをすべて再現しています。このノートのコピーを制作されるために、設楽さんは1ヶ月近く美術館に出勤して制作されました。

設楽さんがテーマにされているのは、人間の本質です。まさに、人間の業とも言えるかもしれません。「歴史を見たら、人間は戦争ばっかりしていますが、でも、歴史には、文学とか芸術とか、人間の輝かしいところも残っている」と設楽さんは言います。そのことを強く意識されて、ご自身の制作にあたって、「100悪いことが出来る人は100いいこともやっている」という「振り子の原理」というのをとても大切にされているそうです。


(上)《黄色い爆弾と子供》2008
(下)《ビデオ》2012

これは、設楽さんの今回の展示の世界観を見せるビデオとなっています。映画の予告編みたいで、見ているとわくわくします。


《Bomb》2012

設楽さんの作品によく登場する、爆弾のイメージの立体作品です。設楽さんは、絵画や小説、漫画だけではなく、立体作品も手がけていらっしゃいます。これは、陶器で制作されています。

そして、ギャラリートークでは、設楽さんの作品の不思議なイメージについて、お客さんから、様々な意見が飛び出しました。


《Ski》2010

なんと、あるお客さんは、ご自身が臨死体験をした時に、この作品のイメージとほぼ同じ世界をご覧になったそうです・・・。様々な人が様々な感性で、その世界を読み取っていく、絵画というメディアが提供する経験の醍醐味ですね!


《ソルジャー》2009

そして、設楽さんの展示の最後は、軍人さんが横たわっている絵です。戦い疲れて眠ってしまったのか。あるいは、残念なことに、戦いで命を落としてしまったのか、いや、右上には「ビデオ」という文字があるから、すべての物語はフィクションだと言いたいのか・・・。設楽さんの作品を見ていると、どんどん想像が膨らんでいきます。

今回、ポジション展では、設楽陸ワールドが思う存分楽しめます!ぜひ、お時間をとってゆっくりお越しくださいませ!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~文谷有佳里

本日は文谷有佳里さんを紹介します。文谷さんは、線を描かれる作家さんです。そして、美術館でも滞在制作をされています。

制作は、日々変わっています。名古屋市美術館で滞在制作を始められてからも、作品の中で変化が見られます。

最近は、なんと!赤い線で描かれる作品が!

今はコマドリで、アニメーション(?)を制作されています!

詳細については、文谷さんご自身がブログでアップされていますので、ぜひ、そちらもご覧ください!

文谷さんのブログページはこちら

文谷さんの作品変化とともに、展示も少しずつ変化しています。最初は、ここ数年かけて描かれていらっしゃった作品を展示していらっしゃったのですが、少しずつここで制作された作品も展示されています。

美術館の空間が、文谷さんの身体感覚にも影響しているのでしょうか?以前よりも、大きな紙で描くようになってきたとおっしゃっていました。また、美術館で滞在制作された作品には、これまでとは違う線が登場していますし、絵の中の空間を感じさせるような面的な要素も表れています。

実際に、日々の制作経験から、アーティスト・トークでは、線の中には自分の状況が出るというお話もされていました。

文谷さん:「例えば、いらいらしている時は、その時には気づいていないのですが、やっぱり線が違っています。線として見た感じでは、雑とか丁寧とかいうレベルの違いなんですけれども。でも、雑だから失敗とかではなくて、いらいらした時に描いた線は、他の時には絶対に描けないし、自分の気持ちが表れているんだろうなあと思いつつも、あまり、それについて物語的には考えないので、自分でも、これはどういう風に描かれているのだろうと思いながらやっています。」

文谷さんの作品を見ていると、私には何だか線で描かれた風景が流れていくような感じがします。音楽を視覚的に表したような、見ていると、メロディやリズムも感じてきます。新しい作品からは、音楽劇の中の場面展開の瞬間のような、緊張感のある空間を感じます。

文谷さんの作品は、特にテーマを持って制作されている訳ではないとのこと。元々、描き始めたきっかけは、授業中の落書きだったそうです。描いてはめくりというのを、2年間ぐらいやっていたそうで、それをそのまま続けていたら、いつの間にか7年間が経ち、現在につながっている、ご本人としては、これに何を表したとか、そういうのはないそうです。ただ、自分の過去の視覚経験などが反映されているのではないかとおっしゃっていました。

美術館にいらっしゃったら、制作している文谷さんに会えます。殆ど毎日美術館にいらっしゃっています。目の前に、作家さんがいらっしゃって、実際に制作しているところを見ることができ、作品についてもお聞きすることができます。作家にとっては、制作の秘密とも言えるような制作風景を見せるのは、どうしてなのでしょう?

実は、文谷さんは愛知県立芸術大学のご出身なのですが、作曲を勉強されていたそうです。

文谷さん:「美術館は、作品はありますが、作家はいません。展示しているだけだと、自分の作品にお客さんがどのような反応をしたのか、知ることができません。しかし、音楽の世界では、発表する機会は、演奏です。演奏会は、絶対にお客さんがいる前でやるので、お客さんの反応も直後に分かります。それで、展覧会をやるようになって、どういう人が来ているのかというのを知るために滞在制作を始めました。」

最近では、前に来てくださった方がまた来てくださったりするそうです。私も、文谷さんが違う場所で展示されると、「今度は、どんな作品だろう?」と楽しみになって、いろんなところにお伺いしていましたが、ポジション展期間中は、美術館で日々の制作を拝見できるのでうれしいです。文谷さんも、前にいらっしゃった方に再会するのが楽しみだそうです。また頑張ろうという気持ちになられるとのこと。

滞在制作のほかにも、作曲家の高山葉子さんとコンサート&制作パフォーマンスで、文谷さんの作品を楽しんでいただけます。これまで、6月2日と9日に開催されました。


6月2日の様子


6月9日の様子

Black Line という、高山葉子さんが作曲された曲に合わせて、文谷さんが制作されます。演奏者の方とともに、時には、ダンスのように、時にはミュージカルのようにと、毎回曲もパフォーマンスも新しいプログラムなので、目が離せません!

次回は、7月7日と7月14日午後2時~から開催されます。

また、7月16日(月・祝)の最終回には、お楽しみの特別パフォーマンスもあります。3回とも、美術館B1地下ロビーで開催されます。入場無料です。

みなさまのお越しを心からお待ちしております!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~山田純嗣

ポジション展入り口のところに、小さな白いオブジェが沢山置かれています。これは、山田純嗣さんの作品です。


《NIRVANA》2002-12

とてもファンタジックな真っ白な世界ですが、これは、「涅槃」を表しているそうです。仏様がその下で亡くなったとされる沙羅双樹が真ん中あたりに見えています。その下には骸骨みたいなオブジェが!「涅槃」ではありますが、象徴的に、そして現代的に表現されています。

続いて、中の展示室に入っていくと、そこには、銀色の世界があります。

ミラーフィルムを壁に貼り、そこに山田さんの写真とエッチングを併せた作品が沢山掛けられています。その背景の部分には、透明の素材で絵が描かれています。山田さんが展示期間一週間をかけて、丹念に描きました。

このめくるめくような世界は、「浄土」を表しているそうです。

正面の壁にはボッシュの《快楽の園》をもとにした大きな作品が掛けられています。


《(11-6)GARDEN OF EARTHLY DELIGHTS》2010-12

浄土の煌きと快楽の園の欲望に満ちた世界と・・・聖なるものと俗なるものが交錯する世界です。

繊細で優しい山田さんの作品ですが、壮大なテーマが隠されていますね。そして、細かな手仕事の素晴らしさも味わっていただきたい作品群です。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~判治佐江子

判治佐江子さんは、今回、とても大きな写真作品を展示しています。エジプトのカイロの街角を写した写真ですが・・・実際に風景の中に入り込んでいるような気分になるような、大きな写真です。


《CAIRO E-23+22》2012

この写真、ちょっと不思議な感じがしませんか?街を歩く人が、ウィンドウに映り込んでいるのですが、何かが、違う。何かが・・・。一体何が、違うのでしょうか?

実は、この写真には「時間差」があるのです。あまり全部ご説明してしまうとつまらないので、説明はこのくらいにしておこうと思います。よく観察してみてください!


《CAIRO E-19+17》2012

判治さんの写真は、とてもリアルでありながらも、どこか非現実的でもあります。そして、見ている私たちは、実際に遠い外国に行ったような気分になります。エキゾチックな雰囲気が漂っていますね。

作品はすっきりと、整然と展示され、爽やかな風が吹くような清々しさをもたらしてくれます。見ていてとっても気持ちがいい写真です。

判治さんは7月3日~15日、栄のハートフィールド・ギャラリーで個展を開催しています。ぜひ、そちらも併せてご覧ください。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~田島秀彦

田島秀彦さんは、タイルの模様とか、花瓶とか、造花とか、ゼロ戦のビーズとか、家庭用照明器具とか・・・といった、チープでキッチュな素材を使って作品を作っています。田島さんはそれを、「美術未満」の素材と言っていますが、それらが、彼の手にかかると、不思議に魅力的な作品へと変貌します。

タイルの模様を丹念に描いた作品です。作品の内部には光が仕込まれており、その光が小さな穴からちらちらと漏れています。とてもロマンチックな雰囲気ですが、この感じは、残念ながら、写真ではお伝えできないですね。ぜひ、実物を見てください。


《Falls》2012

展示室内の吹き抜けの空間には、家庭用の照明器具を使ってこんな作品も展示されています。光が点滅し、ゼロ戦のビーズがキラキラと光り、なんだか現実離れした世界です。

この作品には、「滝」のイメージもあるそうです。下に置いてある白い造花は、水しぶきのイメージでもあるとのこと。作品を通じて、いろいろなイメージが広がります。

田島さんの作品は、身近なものを素材としているのに、なぜか遠くの世界を思わせます。今いる場所から遠く離れた世界に連れて行かれるようです。アーティストの発想の豊かさ、そして何よりも作品の美しさを堪能できます。

投稿者:akko