カテゴリー別アーカイブ: 雑記

真島直子さん、愛知県芸術文化選奨文化賞受賞

昨年の3月3日[土]から4月15日[日]までの会期で特別展「真島直子 地ごく楽」を名古屋市美術館が開催した真島直子さんが、平成30年度の愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞しました。

0325①

「真島直子 地ごく楽」展B2ポスター

0325②

「真島直子 地ごく楽」展B3ポスター

愛知県芸術文化選奨は、芸術文化の各分野において向上発展に貢献し、業績が顕著な個人および団体を表彰することにより、愛知県の芸術文化の振興を図ることを目的としています。平成19年度からは文化賞と文化新人賞の2種類となっていますが、昭和52年度から平成29年度までの受賞者には、名古屋市美術館の作品収蔵作家も少なからず含まれています。

昨年度の文化賞受賞者の一人は奈良美智さんでしたが、真島さんの文化賞受賞は、現代美術としては奈良さんに続く二人目、女性作家では初となります。

長年にわたる活動が評価されたことを喜ぶとともに、作家の活動を広くみなさまに紹介する機会が持てたことを名古屋市美術館としても嬉しく思います。

0325③

「真島直子 地ごく楽」展 会場風景

投稿者: み。

春の足音

 

立春が過ぎ、歴史的大寒波を乗り越えて、ようやく梅の咲くころとなりました。陽射しも日に日にあたたかくなって、ああもう春が近いんだな、と感じる今日このごろです。

私にとってこの季節は、春の足音とともに、色々な締切の足音が同時に聞こえてくる季節です。というのも、たまたまではありますが、これまでにも4月はじまりの展覧会を担当することがなぜか多かったからです。

展覧会のオープンに向けて、カタログの校正作業をしたり、展示室内のディスプレイの計画を立てたり、さまざまな広報物のチェックをしたりと、するべきことが増えていきます。ただ忙しくなる、というわけではなくて、少しずつ展覧会の完成形が見えてくるので、大変だけれどわくわくする時間でもあります。少々語弊があるかもしれませんが、3か月間毎日前夜祭をしているような感覚です。

ただいま、「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」展(4月9日[火]開幕)を準備中です。本展の中心となる印象派の作品には、明るい色彩に満ちたおだやかな風景画がたくさんあり、眺めているだけで春らしい気分を味わえます。本展の看板をはっているのは、ルノワール作《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》(1887年)。10歳のあどけない女の子ですが、どこか意志の強さを感じさせる青いひとみが印象的です。デスクの前に貼ったポスターから、シュザンヌがこちらをじっと見つめてくるので、ああ、今日中にあれもこれも確認しなきゃ、メールも返さなきゃ、と焦りながら仕事をしています。開幕まであと少し。多くのお客さまにご覧いただける展覧会になることを祈っています。(haru)

 

ピエール・オーギュスト・ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》

1887年 パステル/紙 吉野石膏コレクション

8

アメリカのボストン美術館館長来館

10月8日(月・祝)に、アメリカのボストン美術館のマシュー・テイテルバウム館長が来館されました。このたびは、クリスティーナ・ユー・ユーアジア部部長、オリバー・バーカー財団・政府・国際担当マネージャーもご一緒され、現在開催中の「ザ・ベスト・セレクション」展をゆっくりとご覧になりました。

テイテルバウム館長は、特に当館のメキシコ・ルネサンスのコレクションに関心を寄せられ、フリーダ・カーロの《死の仮面を被った少女》を熱心にご覧になられていました。また、モディリアーニやスーチンをはじめとしたエコール・ド・パリの充実したコレクションをどのように築いてきたのかをお尋ねになられていました。

現在開催中の「ザ・ベスト・セレクション」展では、当館を代表する名作や知られざる傑作を一堂に展示しています。また、作家や作品にまつわる資料や収集や保存にかかわる学芸員の調査研究も紹介しています。 (1125日(日)まで)

IMG_0253      IMG_0255

テイテルバウム館長と早瀬館長

 

 

 

 

台風21号のちいさな爪痕

 

猛暑がひと段落し、秋風が吹き始めた9月は、二つの大きな自然災害に見舞われました。台風21号の襲来によって、多数の地域で停電や浸水の被害があり、続いて北海道地方を襲った大きな地震は、大規模な土砂崩れや全道規模の停電を引き起こしました。相次ぐ自然災害を前にして、自然に対する人間の無力をひしひしと感じずにはいられません。被災された方々に心からお見舞いを申し上げ、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。

ここ名古屋市美術館でも、台風21号は小さな爪痕を残しました。交通機関が大きな被害を受けたことにより、ランス美術館(フランス)に貸出中の作品、ハイム・スーチン作《農家の娘》(1919年頃、当館蔵)の返却輸送が延期となったのです。

昨年10月、名古屋市とランス市は姉妹都市提携を結び、双方の美術館では、作品の貸し借り等を通じた交流を続けています。《農家の娘》は、今年5月から9月中頃まで、当館からランス美術館へ貸し出され、展示されていました。9月末頃当館に戻ったあと、すぐに106日から開催の「ザ・ベスト・セレクション」展に出品予定でしたが、残念ながらオープニングには間に合いそうにありません。

このランス美術館からの作品返却を例に、海外から作品を輸送する際、作品の点検や梱包、輸送に立ちあう「クーリエ」の仕事について、ここでご紹介したかったのですが、それはまたの機会に。交通機関の混乱が落ちつき、作品を安全に輸送する手段が確保できるまで、いましばらく様子をみる必要がありそうです。“娘”の帰還が待たれます。早く無事に帰ってきてほしいですね。(haru

ハイム・スーチン《農家の娘》

図版 ハイム・スーチン《農家の娘》 1919年頃 名古屋市美術館蔵

ハイム・スーチン(1893-1943)は、ミンスク郊外の小村スミロヴィチ(現ベラルーシ)生まれ。偶像崇拝を禁止するユダヤ教の家庭に育ちましたが、あきらめずに画家を目指し、1912年頃パリに出て、「蜂の巣(ラ・リューシュ)」に住みます。なかなか作品が売れず、貧困に苦しみましたが、モディリアーニやシャガール、キスリングらと出会い、親交を結びました。《農家の娘》は、南仏のカーニュで制作されたといわれています。モデルの女性は質素な服に身を包み、組んだ両手を膝の上に置く古典的なポーズで描かれています。

水谷勇夫『神殺し・縄文』

 

   水谷勇夫(みずたにいさお/1922-2005 )は名古屋市に生まれ、名古屋を拠点としながら活動した美術作家です。名古屋市美術館も作品を所蔵しています。美術制作の手法を独学し、膠彩画(いわゆる日本画)の技法を基にした絵画やテラコッタによる立体の制作などとともに、舞台美術の制作や行為による美術表現を行うなど、多様に活動しました。1993年のNHK大河ドラマ「琉球の風」の題字を手掛けるなど、書家としても知られています。

 

 水谷は、縄文の土器や土偶に惹かれ、日本の神話との関係を独自の手法で考察することもしています。その成果は1974年に『神殺し・縄文』(伝統と現代社)として出版されています。初版発行から45年の今年、同書は単行本から文庫本へと体裁を変えて、名古屋の出版社である人間社から再び出版されました。

神殺し・縄文カバー (加工用)

水谷勇夫『神殺し・縄文』(人間社文庫 日本の古層、人間社、2018年) カバー表

 

 文庫本には、考古学者の小林公明と水谷の次男で歴史学者の水谷類による文章2つと水谷本人の論稿1つが加えられています。手に入れ易い文庫本によって、水谷への理解が深まることを期待します。

 

投稿者: み。

 

 

 

野外彫刻のひとりごと③

 

私は、《魂》と名付けられた石の彫刻である。

 

イサム・ノグチ氏の香川県高松市牟礼のアトリエで生み出された。

 

私は、名古屋市美術館の裏庭の池をのぞむ場所に、ひとりポツンと立っている。

 

裏庭には時折人々がやってくるが、大概は静かなものである。

 

ノグチ氏が私を《魂》と名付けたのは、何故なのだろうか。

 

実際のところ、魂というものがどのような形をしているか

 

誰も見たこともないだろう。

 

ノグチ氏にとっては、魂はこのような形に思えていたのだろうか。

 

私は来る日も来る日も美術館の裏庭に立ち続け、

 

いささかくたびれてきた。

 

しかしここにいると、裏庭の四季の移り変わりを見ることが出来る。

 

楽しみもまた、あるのだ。

イサム・ノグチ1

 

イサム・ノグチ2

 

*イサム・ノグチ《魂》1982年 安山岩

 イサム・ノグチは津島市出身の詩人野口米次郎とアメリカ人女性との間に生まれました。日本とアメリカという二つの祖国を持つ彼は、スケールの大きな彫刻作品やモニュメント、庭園などを制作し、「大地を彫刻した男」と呼ばれることもあります。この作品は小ぶりなものですが、無駄なものをそぎ落としたすっきりとした造形に、イサム・ノグチの類まれなセンスが光っています。この彫刻は、名古屋市美術館の南側にある庭に立っています。

 

投稿者:AN

 

 

野外彫刻のひとりごと②

 

我々は、実に薄っぺらい生き物である。

我々を作ったのは、どうも、アンテスという人物らしいが、

一体なぜ、こんなに薄っぺらくしたのだろうか。

我々は薄っぺらいので、林のなかに見え隠れするように存在している。

何人いるか、興味のある人は数えてみるとよいだろう。

林の中で我々に取り囲まれた人は、どんな気持ちになるのだろうか。

一度聞いてみたいものだ。

我々の風貌は、どこか他の天体からやってきた異星人のようにも見えるらしい。

しかし、我々自身も、自分の故郷を知らないのだ。

気が付いたら、この白川公園にいたのだから。

 

アンテス

*ドイツの作家ホルスト・アンテス(1936-  )が白川公園を視察して制作し、1997年に設置された《名古屋のための5つの人体》という作品です。木々の間に見え隠れする人体像は不思議な風貌をしており、私たちの想像力を喚起します。白川公園の南西の林の中に設置されています。

投稿者:AN

展覧会カタログ校正の仕事

 

 展覧会の準備過程における大きな仕事のひとつに、図録作成があります。1冊の図録が完成するまでに、印刷や製本以外にもさまざまな工程を経ます。予算や納期に余裕があれば外部に委託する翻訳や校正などの作業を、諸般の事情から学芸員が担うことも珍しくありません。

 昨年末から年明け1月にかけて、3月初旬から始まる真島直子展の図録の校正作業が続きました。もちろんテキストを執筆した学芸員も校正しますが、仕事の一環とはいえ自分で書いた文章を何度も客観的に見直すのは意外と難しいものです。そこで展覧会サブ担当がまっさらな眼で一字一句確認します。「内容を細かく理解していない人間が校正をして役に立つの?」と思われるでしょうが、実際に図録を手にする来館者と近い視点で文章に目を通し、分かりにくさや助詞の不自然さなどを客観的に指摘してくれる存在は、校正作業に欠かせません。

 誤字脱字に始まり、漢字の変換ミス、送り仮名やルビの過不足、旧字と新字の混用、外国語のスペルミス、表記の揺らぎ、図録に収録される出品リストや年譜などの資料との整合性、文字と文字との間隔や行間、文字のサイズ違い、書体(フォント)の違いなど確認項目は、山のようにあります。これ以上ないというほど丁寧に見たつもりでも、納品されたカタログに漏れや見落としを発見して、凹むこともしばしばです。

 単純に文字だけ追っていては気づけない間違いもあります。別の展覧会でのことですが、図録校正中に出品リストの寸法の欄を見て「輸送トラックに積載可能な大きさを超えている?」と思って確認したところ、0が一つ多かったことがありました。直接見たことのある作品ではなかったのですが、展覧会のメイン担当者から「今回は重量のある立体作品ばかりで、輸送にトラックが何台必要になるか…」との話を何度も聞いており、作品積み込みのイメージが漠然と頭の中にあったことが功を奏したのでしょう。単純な入力ミスとはいえ、後々まで資料として残るものですから、慎重を期すに越したことはありません。

 われわれ学芸員の校正作業は、校閲のプロとは比べものにならないほど甘いものですが、実際に作品を取り扱う立場でしか気づき得ない観点から少しでも役割が果たせるとホッとします。

校正を通して一語一語に向き合い、筆者がどのような意味合いで使っているのか分析するように読むのも楽しいです。そんな呑気なことを言っていられるのも今のうちかもしれませんが…(老視は校正の敵)。

 この原稿がアップされる頃には、図録は制作の最終段階、展覧会の準備もいよいよ迫ってきます。3月3日(土)からの真島直子展、どうぞご期待ください。

 

 

投稿者:3

野外彫刻のひとりごと①

ぼくは、野兎。

フラナガンという人がぼくを作ったんだ。

ぼくは、名古屋市美術館がある白川公園の入り口のところに居る。

こんな風に、伸びをして、爪のあるボールの上に立ってバランスをとっているんだ。

ぼくの前を、いつも、いろんな人が通る。

「ポケモン・ゴー」が始まった時には、ぼくの前をすごく沢山の人がスマホを見ながら歩いてた。あの時は、びっくりしたなあ。

でも、ぼくの存在にいったいどのくらいの人が気づいてくれてるんだろう、と、時々考えるんだ。

気づかないで素通りしてしまう人も多いみたい。ちょっと残念だな。

今日は、ぼくの前脚にお客さんが来てくれた。

写真を見て、わかるかな?

烏が一羽、しばらくの間とまっててくれたんだ。

ぼくは、なんとなく嬉しかったな。

うさぎ

*この作品は、イギリスの作家バリー・フラナガンの《ボールをつかむ爪の上の野兎》(1989-90年、ブロンズ)です。白川公園の北西の角に近い位置に設置されています。フラナガンは野兎をテーマとした作品で知られており、現在、当館の常設展示室3で開催中の「特集:二次元・三次元」でもフラナガンの《三日月と釣鐘の上を跳ぶ野ウサギ》を展示しています。(2018年2月18日まで)

 

投稿者:AN

台風一過

台風21号にかかわる非常配備で10月22日(日)の夜から23日(月)の朝まで美術館で過ごすことになりました。特別展に出品する海外からの借用作品の受け入れのため、夜半から早朝まで美術館で待機したこともありますが、日付を跨いで長い時間を夜の美術館で過ごすのは久しぶりのことです。

10月21日(土)と22日(日)は名古屋まつりの実施日にあたり、多くのみなさまが楽しみにしておられたことと思いますが、英傑行列をはじめ多くの催事が中止になりました。名古屋市美術館でも関連事業として22日は常設展利用が無料となるため、ボランティアが通常のギャラリートークに加えて特別企画を用意していましたが、例年ほどにはお客様に利用していただくことはできませんでした。22日は衆議院議員選挙日でもあり、何かと落ち着かない週末だったように思います。

1

写真は、23日(月)の早朝に撮影したものです。
警報がまだ出ているにもかかわらず、雨が上がり日差しが見えはじめた頃から犬の散歩やジョギングをする方の姿が白川公園に見られるようになりました。
写真の作品は、美術館の建物の正面に設置されているコールダ―の《ファブニール・ドラゴン II》です。「あれ、いつもと違うぞ」と思われた方があるかもしれません。

風を受けてくるくる回る頭の部分がなくなっています。
台風の風で激しく回転したり、煽られて飛ばされて周りの人を傷つけないよう、あらかじめ頭の部分を外しています。これは作品を守るためでもあります。
一年のうちに何度かこうした状態になります。
この度の台風では雨の降りはじめた21日(土)の朝に取り外す作業を行いました。

台風の折に美術館を訪れる方は多くはないと思います。
頭のないドラゴンをご覧になったことがある方も多くはないと思い、復旧前の姿をご紹介しました。

樹木の枝が折れたりしましたが、美術館には目立った被害はありませんでした。この後、各所で被害の状況が明らかになってくることでしょう。大きな被害のないことを願うばかりです。

投稿者:み。