カテゴリー別アーカイブ: ポジション2012

ポジション展 アーティスト紹介~大﨑のぶゆき

今日は、大﨑のぶゆきさんを紹介したいと思います。


《Shining mountain/Climbing the World II》2011-2012

真っ暗なお部屋の中に、巨大な画面が!画面には、山の映像が投影され、巨大な3面のスクリーンも、連なる山のようにもみえます。そして、スクリーンに映し出された映像をじっと見ていると・・・。

だんだんと溶けていくのです!しかも、溶けていくと同時に山に登っている人たちが、ひとりまたひとりと落ちていってしまいます。


溶けていく途中


溶ける前の画面

そして、しばらくすると、突然最初の画面に戻ります。

いったい、どういうことなのでしょう?

大﨑のぶゆきさんは、ご自身が見ている世界について感じること、そして、ご自身が存在しているという感覚について、問い直すということを作品化されているとおっしゃいます。
つまり、今自分がここにいるということはどういうことなのか、今自分が見ている世界は本当なのかどうなのかといった、今この時代にこの世の中に生きていることについての問いを作品に込めていらっしゃるというようにも言えると思います。

イメージが溶けていく映像を見ているのは、とても不思議な感覚です。自分が見ているものが、だんだんぼやけて来て、自分自身が見ているものそのものがゆらいでいくようにも感じてきます。

大﨑さんは、インタビューでこうおっしゃっていました。
「僕の作品でイメージが溶けていくことは、「今見ている世界は本当なの?」という問いかけでもあるのです」(ポジション展カタログP.40)

私たちが生きている現代の社会は、めまぐるしく変わる世の中のような気がします。将来の設計図も簡単に描けないぐらい将来も不確かだし、様々なメディアによってもたらされる情報は膨大で何が本当のことかもよくわからない、とても不安定な世の中だと思います。大﨑さんの作品は、そこに生きる私たちの感覚を代弁してくれているように感じます。

そして、じーっと溶けていくイメージを見ると、ぱっと元のイメージに戻ります。元のイメージが突然現れることで、最初のイメージが自分の頭の中で変容してしまったことにも気づきます。大﨑さんにとって、このように元のイメージを新たに見ることでそのイメージの変容について気づくことがとても大切なのだそうです。自分の記憶の不確かさを感じるということや、はじめと終わりといったことに縛られることがないことが重要なのだそうです。

また、ポジション展では、映像作品《Shining mountain/Climbing the World II》だけではなく、オブジェや写真など、大﨑さんの作品世界が堪能できます。大﨑さんの作品や制作の秘密について、直接お話をお伺いすることができる、アーティストトークは、7月14日午前11時からポジション展会場内で行われます(ポジション展入場券が必要になります)。作家さんから、直接お話をお伺いするだけではなく、制作のことについて質問をしたり、直接お話することができるまたとない機会です。ぜひともみなさまお越しください!

今回の展覧会に合わせて、大﨑さんは6月3日に「溶ける絵画 water drawing 水面に広がる不確かな世界」というタイトルでワークショップを開催されました。

このワークショップでは、大﨑さんの作品に登場する溶ける絵のイメージを制作する体験をしました。今回の作品の制作方法とは少し違うようですが、自分で描いたイメージが広がり、溶けて、ばらばらになる様子を体験することができ、大﨑さんの作品の秘密を少し共有できたような気がします。

ワークショップの様子と、その時に参加してくださったみなさんが制作した作品は会場でもご紹介しています。展示室1Fから2Fに上る階段の途中でご覧になることができます。

また、大﨑さんの作品は、現在東京でもご覧いただけます。
7月7日から8月11日 YUKA TSURUNO
http://yukatsuruno.com/exhibitions.html

ポジション展も、会期のこりわずかとなりましたが、最終週末はアーティストトークはじめイベントも盛りだくさんです。

みなさま、どうぞお見逃しなきよう! 美術館でお待ちしております!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~設楽陸

今日は、設楽陸さんの紹介です。

設楽さんの作品には、様々なイメージが登場します。

写楽に、天狗に、コンピューターの絵文字、千手観音、ピカソの雄牛!? 細かく見れば見るほど、いろんなイメージを見つけるのが楽しくなります。時には漫画の一コマのように、画面に文字が描かれていたりもします。


《断末シューター》2011


《天翔る龍の閃き》2011

これらのイメージは、いったいどこから来たのでしょう?ギャラリートークでは、設楽さんの作品の秘密についてお聞きしました。

設楽さん:「僕は、キャンヴァスに絵を描き始めたのが大学4年ぐらいと遅かったです。最初、何を描いていいかよく分からなかったので、とりあえず図書館に行っていろんな画集を見ました。狩野派から現代美術まで、いろいろ見て、紙にスケッチして、ドローイングしました。時には、ネットの画像とかもドローイングしました。そのほかには、歴史の本が大好きで、本からイメージしたものとか、そういったいろんなイメージをスケッチしていくというのをひたすらやっていきました。だんだん、自分の想像の核を掘り起こしていくことができて、自分のアートの起源に近づいていきました。」

なるほど、設楽さんの作品に見られる、古今東西のハイアートからサブカルチャーまでの幅広い様々なヴィジュアル文化のイメージは、この時の経験から来ているのですね!

また、設楽さんの作品には、独特で強烈な世界観が展開されています。とても物語性も強く、どこかに、そういう場所、空間が存在しているような気持ちになります。そのことについて、子どもの頃の体験から来ているのではないかとお話くださいました。設楽さんは、小さい頃、テレビゲームが禁止されていて、友達の家で、友達がゲームをプレイしている後ろで、紙にスケッチをして、家に帰って、紙を使って、テレビゲームを真似て遊んでいらっしゃったそうです。また、子どもの頃から、歴史の本が大好きでいらっしゃったそうで、歴史の中の出来事や人物を想像して、紙に描いて、遊んでいらっしゃったそうです。中学に入ってすっかり忘れていらっしゃったとのことですが、絵を描いているうちにその時の想像がだんだん蘇ってきて、絵に融合していったそうです。

設楽さんの類まれな想像力というか、世界を造り上げる創造力(妄想力!?)というのは、子どもの頃に育まれたものだったのですね!そして、なんと言っても、その創造力が遺憾なく発揮されているのが、このノートです!

現時点で、漫画も含めて全8巻。設楽さんが、創造した、架空の世界の架空の歴史が展開しています。絵画作品と平行して、2008年ぐらいから手がけられていた作品群です。絵画と合わせてご覧頂くことで、設楽さんの世界観がより深く理解できるのではないかと思い、今回、お客さんにすべて手にとって楽しんでいただけるように、オリジナルのノートをすべて再現しています。このノートのコピーを制作されるために、設楽さんは1ヶ月近く美術館に出勤して制作されました。

設楽さんがテーマにされているのは、人間の本質です。まさに、人間の業とも言えるかもしれません。「歴史を見たら、人間は戦争ばっかりしていますが、でも、歴史には、文学とか芸術とか、人間の輝かしいところも残っている」と設楽さんは言います。そのことを強く意識されて、ご自身の制作にあたって、「100悪いことが出来る人は100いいこともやっている」という「振り子の原理」というのをとても大切にされているそうです。


(上)《黄色い爆弾と子供》2008
(下)《ビデオ》2012

これは、設楽さんの今回の展示の世界観を見せるビデオとなっています。映画の予告編みたいで、見ているとわくわくします。


《Bomb》2012

設楽さんの作品によく登場する、爆弾のイメージの立体作品です。設楽さんは、絵画や小説、漫画だけではなく、立体作品も手がけていらっしゃいます。これは、陶器で制作されています。

そして、ギャラリートークでは、設楽さんの作品の不思議なイメージについて、お客さんから、様々な意見が飛び出しました。


《Ski》2010

なんと、あるお客さんは、ご自身が臨死体験をした時に、この作品のイメージとほぼ同じ世界をご覧になったそうです・・・。様々な人が様々な感性で、その世界を読み取っていく、絵画というメディアが提供する経験の醍醐味ですね!


《ソルジャー》2009

そして、設楽さんの展示の最後は、軍人さんが横たわっている絵です。戦い疲れて眠ってしまったのか。あるいは、残念なことに、戦いで命を落としてしまったのか、いや、右上には「ビデオ」という文字があるから、すべての物語はフィクションだと言いたいのか・・・。設楽さんの作品を見ていると、どんどん想像が膨らんでいきます。

今回、ポジション展では、設楽陸ワールドが思う存分楽しめます!ぜひ、お時間をとってゆっくりお越しくださいませ!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~文谷有佳里

本日は文谷有佳里さんを紹介します。文谷さんは、線を描かれる作家さんです。そして、美術館でも滞在制作をされています。

制作は、日々変わっています。名古屋市美術館で滞在制作を始められてからも、作品の中で変化が見られます。

最近は、なんと!赤い線で描かれる作品が!

今はコマドリで、アニメーション(?)を制作されています!

詳細については、文谷さんご自身がブログでアップされていますので、ぜひ、そちらもご覧ください!

文谷さんのブログページはこちら

文谷さんの作品変化とともに、展示も少しずつ変化しています。最初は、ここ数年かけて描かれていらっしゃった作品を展示していらっしゃったのですが、少しずつここで制作された作品も展示されています。

美術館の空間が、文谷さんの身体感覚にも影響しているのでしょうか?以前よりも、大きな紙で描くようになってきたとおっしゃっていました。また、美術館で滞在制作された作品には、これまでとは違う線が登場していますし、絵の中の空間を感じさせるような面的な要素も表れています。

実際に、日々の制作経験から、アーティスト・トークでは、線の中には自分の状況が出るというお話もされていました。

文谷さん:「例えば、いらいらしている時は、その時には気づいていないのですが、やっぱり線が違っています。線として見た感じでは、雑とか丁寧とかいうレベルの違いなんですけれども。でも、雑だから失敗とかではなくて、いらいらした時に描いた線は、他の時には絶対に描けないし、自分の気持ちが表れているんだろうなあと思いつつも、あまり、それについて物語的には考えないので、自分でも、これはどういう風に描かれているのだろうと思いながらやっています。」

文谷さんの作品を見ていると、私には何だか線で描かれた風景が流れていくような感じがします。音楽を視覚的に表したような、見ていると、メロディやリズムも感じてきます。新しい作品からは、音楽劇の中の場面展開の瞬間のような、緊張感のある空間を感じます。

文谷さんの作品は、特にテーマを持って制作されている訳ではないとのこと。元々、描き始めたきっかけは、授業中の落書きだったそうです。描いてはめくりというのを、2年間ぐらいやっていたそうで、それをそのまま続けていたら、いつの間にか7年間が経ち、現在につながっている、ご本人としては、これに何を表したとか、そういうのはないそうです。ただ、自分の過去の視覚経験などが反映されているのではないかとおっしゃっていました。

美術館にいらっしゃったら、制作している文谷さんに会えます。殆ど毎日美術館にいらっしゃっています。目の前に、作家さんがいらっしゃって、実際に制作しているところを見ることができ、作品についてもお聞きすることができます。作家にとっては、制作の秘密とも言えるような制作風景を見せるのは、どうしてなのでしょう?

実は、文谷さんは愛知県立芸術大学のご出身なのですが、作曲を勉強されていたそうです。

文谷さん:「美術館は、作品はありますが、作家はいません。展示しているだけだと、自分の作品にお客さんがどのような反応をしたのか、知ることができません。しかし、音楽の世界では、発表する機会は、演奏です。演奏会は、絶対にお客さんがいる前でやるので、お客さんの反応も直後に分かります。それで、展覧会をやるようになって、どういう人が来ているのかというのを知るために滞在制作を始めました。」

最近では、前に来てくださった方がまた来てくださったりするそうです。私も、文谷さんが違う場所で展示されると、「今度は、どんな作品だろう?」と楽しみになって、いろんなところにお伺いしていましたが、ポジション展期間中は、美術館で日々の制作を拝見できるのでうれしいです。文谷さんも、前にいらっしゃった方に再会するのが楽しみだそうです。また頑張ろうという気持ちになられるとのこと。

滞在制作のほかにも、作曲家の高山葉子さんとコンサート&制作パフォーマンスで、文谷さんの作品を楽しんでいただけます。これまで、6月2日と9日に開催されました。


6月2日の様子


6月9日の様子

Black Line という、高山葉子さんが作曲された曲に合わせて、文谷さんが制作されます。演奏者の方とともに、時には、ダンスのように、時にはミュージカルのようにと、毎回曲もパフォーマンスも新しいプログラムなので、目が離せません!

次回は、7月7日と7月14日午後2時~から開催されます。

また、7月16日(月・祝)の最終回には、お楽しみの特別パフォーマンスもあります。3回とも、美術館B1地下ロビーで開催されます。入場無料です。

みなさまのお越しを心からお待ちしております!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~山田純嗣

ポジション展入り口のところに、小さな白いオブジェが沢山置かれています。これは、山田純嗣さんの作品です。


《NIRVANA》2002-12

とてもファンタジックな真っ白な世界ですが、これは、「涅槃」を表しているそうです。仏様がその下で亡くなったとされる沙羅双樹が真ん中あたりに見えています。その下には骸骨みたいなオブジェが!「涅槃」ではありますが、象徴的に、そして現代的に表現されています。

続いて、中の展示室に入っていくと、そこには、銀色の世界があります。

ミラーフィルムを壁に貼り、そこに山田さんの写真とエッチングを併せた作品が沢山掛けられています。その背景の部分には、透明の素材で絵が描かれています。山田さんが展示期間一週間をかけて、丹念に描きました。

このめくるめくような世界は、「浄土」を表しているそうです。

正面の壁にはボッシュの《快楽の園》をもとにした大きな作品が掛けられています。


《(11-6)GARDEN OF EARTHLY DELIGHTS》2010-12

浄土の煌きと快楽の園の欲望に満ちた世界と・・・聖なるものと俗なるものが交錯する世界です。

繊細で優しい山田さんの作品ですが、壮大なテーマが隠されていますね。そして、細かな手仕事の素晴らしさも味わっていただきたい作品群です。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~判治佐江子

判治佐江子さんは、今回、とても大きな写真作品を展示しています。エジプトのカイロの街角を写した写真ですが・・・実際に風景の中に入り込んでいるような気分になるような、大きな写真です。


《CAIRO E-23+22》2012

この写真、ちょっと不思議な感じがしませんか?街を歩く人が、ウィンドウに映り込んでいるのですが、何かが、違う。何かが・・・。一体何が、違うのでしょうか?

実は、この写真には「時間差」があるのです。あまり全部ご説明してしまうとつまらないので、説明はこのくらいにしておこうと思います。よく観察してみてください!


《CAIRO E-19+17》2012

判治さんの写真は、とてもリアルでありながらも、どこか非現実的でもあります。そして、見ている私たちは、実際に遠い外国に行ったような気分になります。エキゾチックな雰囲気が漂っていますね。

作品はすっきりと、整然と展示され、爽やかな風が吹くような清々しさをもたらしてくれます。見ていてとっても気持ちがいい写真です。

判治さんは7月3日~15日、栄のハートフィールド・ギャラリーで個展を開催しています。ぜひ、そちらも併せてご覧ください。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~田島秀彦

田島秀彦さんは、タイルの模様とか、花瓶とか、造花とか、ゼロ戦のビーズとか、家庭用照明器具とか・・・といった、チープでキッチュな素材を使って作品を作っています。田島さんはそれを、「美術未満」の素材と言っていますが、それらが、彼の手にかかると、不思議に魅力的な作品へと変貌します。

タイルの模様を丹念に描いた作品です。作品の内部には光が仕込まれており、その光が小さな穴からちらちらと漏れています。とてもロマンチックな雰囲気ですが、この感じは、残念ながら、写真ではお伝えできないですね。ぜひ、実物を見てください。


《Falls》2012

展示室内の吹き抜けの空間には、家庭用の照明器具を使ってこんな作品も展示されています。光が点滅し、ゼロ戦のビーズがキラキラと光り、なんだか現実離れした世界です。

この作品には、「滝」のイメージもあるそうです。下に置いてある白い造花は、水しぶきのイメージでもあるとのこと。作品を通じて、いろいろなイメージが広がります。

田島さんの作品は、身近なものを素材としているのに、なぜか遠くの世界を思わせます。今いる場所から遠く離れた世界に連れて行かれるようです。アーティストの発想の豊かさ、そして何よりも作品の美しさを堪能できます。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~佐藤貢

ポジション展2階展示室の出口のあたりに、佐藤貢さんのコーナーがあります。

さて、これらの作品、何を使って作られているでしょうか?

実は、佐藤さんは、捨てられたものを使って作品を作るのです。
佐藤さんは、「この世には偶然はなく、全てが必然だ。」と言っています。つまり、佐藤さんが見つけた作品の材料は、全て、何らかの縁、もしくは運命によって、佐藤さんのもとに辿り着いたもの、ということになるのです。
そういう風に世の中を見ると、私たちの中の何かが、少し変わるような気がしますね。

作品は、とても繊細で、美しく、「捨てられたもの」がこんな風に再生し、新しい命を得るんだ、ということに感動してしまいます。

そして、作品が掛けられている壁に映った「影」にもご注目ください。
影がこんなに美しいなんて・・・と、新たな発見です。

展示室の一角には、音楽の部屋もあります。

佐藤さん自身が作った音が不思議な振動を孕みながら鳴っています。音楽は次々と変化してゆき、時には無音のことも・・・。来た人がどんな音楽に出会うのか、それも、「必然」の導きによるものなのかもしれません。

佐藤さんは、長いこといろいろな場所を放浪して、いろいろな体験をされました。その、これまでの人生が、作品の中に滲み出ているようです。ぜひ、佐藤さんの作り出す世界を体感してみてください。

投稿者:akko

ポジション展 アーティスト紹介~川見俊

今回は、川見俊さんの登場です。

川見さんは、6年ぐらい前から、《地方の家》シリーズを手がけられています。

「地方の家」とはいったい・・・?

川見さん曰く、

「地方の家は、たまたま見つけた木造のペンキで塗られたカラフルな民家を、木のパネルにペンキに描いたもの」だそうです。


《地方の家19》 2006 ペンキ・パネル

今回の展示では、《地方の家》シリーズの絵画作品だけではなく、「地方の家」を発見した時に撮影した写真と、その時の発見記録も展示しています。こうすることで、川見さんが発見した「地方の家」の考え方そのものを見せる展示になっています。

お客さんから、「地方の家」に関する質問がありました。

質問:「地方の家」は私だと見落としてしまいそうなのですが、川見さんはどういうところに目がいったのですか?また、写真をそのまま描いているとおっしゃっていますが、絵のほうが、色鮮やかで印象的に見えます。

川見さん:ペンキでちょっとでも塗られた家があると、すぐに目がいってしまいます。色数が多いほど、いいなあ、絵にしやすいなと思います。確かに、写真をただ写すだけというより、発見した時の印象に近づけるように描いているかもしれません。でも、今回は地方の家のコンセプトを見せようと思い、なるべく、写真に近い絵を選びました。

川見さんが描く「地方の家」は、私もどこかで見たことがあるような風景のように感じます。でも、川見さんの作品を知るまで、私自身も「地方の家」の存在に気づいていませんでした。見慣れている風景や日常の中にあるものの、ちょっとしたおもしろい側面を見つけて見せてくれる、それが、川見さんの作品のおもしろさだと思います。

さて、これは何でしょうか?


《FACE》 2012 写真

はい、そうです!観光スポットによくある、「顔はめ看板」ですね!顔をはめないで、そのまま撮影されたそうです。顔をはめないで撮影すると、穴から見える背景が写り込んで、不思議な感じがしますが、なんともいえない哀愁を感じます。

今回の展示では、彫刻作品も展示しています。

右から
《キックボード&インラインスケート》、《人・人×犬・犬》、《A型看板男》、《仮眠の体勢》

彫刻作品は、実際に見た風景を元に作っていらっしゃるそうです。ギャラリートークでは、それぞれの風景を見たときのお話をしてくださいました。

《キックボード&インラインスケート》
「インラインスケートを片足につけて、キックボードに乗っている少年をたまたま見てしまったことがきっかけで制作しました。」

《人・人×犬・犬》
「犬が掛け算みたいに連れられている光景にびっくりして、それを作りました。」

《A型看板男》
「閉店後のガソリンスタンドで、1リットル何円の看板を片付けている人を目撃した時の状況です。」

《仮眠の体勢》
「これは、バイト先の休憩中の自分です。」

不思議なことに、川見さんの作品を見ていると、日々の生活の中にこんなおもしろいことがあるのかと驚かされます。川見さんが感じていらっしゃる、ご自身の生活や生きてきた場所への愛情が、作品のきっかけになっているのでしょう。見ている私自身も、自分が日々生きているところがなんだか愛おしくなってきます。

そして、今回の展覧会のための新作!大作です!


《地方のグラス》 2012 グラス、カートン、パレット

えっ、これが作品!?と思われる方もいらっしゃるかもしれないですね。

このダンボールの中身は、今回の展覧会のために石塚硝子株式会社の協賛で、アデリアグラスで作って頂いたものです。川見さんの作品がプリントされた、オリジナルグラスです。デザインも川見さんが手がけられました。《地方の家》がプリントされた《地方のグラス》です!


《地方のグラス》 2012 グラス

川見さんは、平日ガラス工場でアルバイトをされているそうですが、そこで発見されたことが《Palletize》という作品とパレットに載った《地方のグラス》の作品に結びつきました。


《Palletize》 2012 パネル

これは、工場で、パレットに、どの大きさの箱をどういう形で積んでいくかという組み合わせです。50種類以上あって、実際にバイト先でマニュアルとして使っていらっしゃるそうです。こうやって見ると、幾何学模様のようにも、抽象的で幾何学的なドローイングにも見えますね!

ギャラリートークの後、川見さんのサイン会が開催され、地方のグラスに川見さんがサインをして、訪れてくださったお客さんに無料でプレゼントされました!

この、サイン会&グラスプレゼントは、7月16日午後2時~ 再度開催予定です!みなさま、ぜひお越しくださいませ!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~坂本夏子

アーティストトークの2番バッターは、坂本夏子さんでした。

坂本さんは、とっても大きな作品を描いていらっしゃいます!

また、近くで見ると本当に丁寧にじっくり描いてあることが分かります。坂本さんは、時間をかけて制作をされるタイプだということで、最新作の《NAGISA》だと、構想を含めて8ヶ月ぐらいかかったそうです。

描かれるプロセスも独特です。まず、画面に下地を作ってから、部分と部分をつなぎ合わせるように描かれるそうです。《Tiles》の作品は、タイルの一つ一つの部分を完成させながら画面空間を埋めていったそうです。


《Tiles》 2006年 油彩・キャンヴァス

四角い画面の中に不思議な空間が広がっています。初めて、自分の絵を描いたと思うことができた作品だそうです。タイルを一つ一つ完成させていく過程で、最初の構想から少しずつずれて、描く前には思いもよらなかったような空間のゆがみが出来上がってきたそうです。人の顔を描くことが、うまくできなかった、そういう時期の作品だともおっしゃっていました。


《Tiles、脱衣》 2007年 油彩・キャンヴァス

この作品では、手前の床の部分が、塗り残しのようにも見えますし、私たちの世界と、絵の中の空間の世界をつなぐ橋渡しをしてくれているように感じます。

坂本さんは、絵を描くときに「絵画でしか成り立たない空間」を目指していらっしゃいます。目で見える世界を再現するのではなくて、私たちがいる現実空間ではない、絵の中でしか成り立たない空間を模索していらっしゃいます。


《Octopus Restaurant》 2010年 油彩・キャンヴァス

描かれている人物が、坂本さんに似ています!でも、坂本さんではないそうです(笑)

この作品を描いた頃は、夢の構造について考えていらっしゃったそうです。夢では、例えば、中学校の時の同級生と大学の同級生が一緒に出てくるなど、現実ではあり得ないことが起こってしまいます。現実とは違う夢の空間を絵であれば、絵の具を通して空間として現実とゆるやかに接続できるのではないかと思って構想されたそうです。


《NAGISA》 2012年 油彩・キャンヴァス

こちらは、最新作です。この作品は、これまで絵画でやってきたことすべてを解体して再び立ち上げていこうという意図を元に描き始められたとのこと。また、ひそかに、影がテーマになっているそうです。私たちがいる世界は、モノや人の実体があって、そこに光が当たって影ができますが、絵の中の世界では、最初に影があって、そこからモノの実体が立ち上がってくるということも起こりえる、そういったコンセプトから構想された作品だそうです。

お客さんからも、興味深い質問が次々に出ました。

お客さん:「最初の構図を追っかけながら、ずれていくということでしたが、感情や感覚にしたがって描かれるのですか?」

坂本さん:「、やはり、最初の構想というか、絵の構図とか構造が大事です。それを追っかけながら、少しずつ、その構想を元にした絵が霧が晴れていくように見えてきて、ゴールに向かうためにまた次の道を見つけていくという感じです。そして、最初の枠から少しずつずれていくということも、私にとっては大切な要素です。」

お客さん:「絵を描くときに、写生したり、実際のものを見て描かれるのですか?」

坂本さん:「そういったことはしません。でも、《NAGISA》を描いた時には、浜辺や海の様子を感じに海に行きました。波の色や動きがどういう風になっているかとか、海鳥が鳴いている様子とか、砂を触ったり、そういった感覚を記憶して、その記憶を元に絵に起こしていきました。」

坂本さんのお話を聞きながら、坂本さんは、論理的に絵画の構造というものを考えながら作品を制作されているということがよく分かったと同時に、一方では坂本さんにとって絵を描くということが、絵の中の世界に触れて少しだけその世界に足を踏み入れて描いている、そんな風な行為なのかなあという風にも感じました。私たちが絵の中の世界を感じることも、その世界に触れることなのかなあと思います。坂本さんの絵を見ていると、私が今居る現実の空間や時間とは違う世界が描かれているように感じるのですが、それは、何か、本を読んだり、考え事に没頭したりする感覚と似ているように思いました。

やはり、作品を制作された方から、直接、作品のことや、制作過程についてお聞きできるのは、とても興味深いです!

また、この日は、おもてなし武将隊の前田慶治さんがお越しになりました。

6月20日水曜日、メーテレで夕方6時50分より、坂本さんのギャラリートークの様子も放映される予定です!みなさま、ぜひお楽しみに!

投稿者:hina

ポジション展 アーティスト紹介~青田真也

「ポジション2012 名古屋発現代美術」展、イベントも盛り沢山の企画です。出品作家の方々から直接お話を伺うことができるギャラリートークの様子をお伝えしたいと思います。

6月2日、ギャラリートークのトップバッターは青田真也さんでした!

青田さんは、日常目にする様々なモノの表面を削って作品を制作されています。

モノの表面が削られ、形があいまいにされているにも関わらず、私たちは青田さんの作品を見て、「あっ、これはこけしだ!」「これは、アイヌの置物だ!」などなど、元の形のものを即座に思い浮かべることができます。

では、これらの箱は・・・?

お分かりになりますか?なんと、これはお菓子の箱です!よく見てみると、だんだんお馴染みのお菓子が思い浮かんでくるのではないでしょうか。

青田さんの作品は、私たちの生活には、大量生産されたモノが溢れていることに気づかせてくれます。

そして、こちらの作品は・・・。

青田さんが削ったモノたちが描かれています。よく見ると、黒い点に交じって赤い点があります。この点は、どこから来たのでしょう。

これは、青田さんが削ったサイコロの目だったんですね!だから、21個に1個が赤い点になっています。

描かれたモノたちは、私たちの社会や文化の中に、知らず知らずのうちに根付いているものです。いつの間にかイメージとして頭の中に存在している、そういったモノたちを、青田さんは、私たちの文化の象徴(シンボル)と考えて、「アイコン」と呼んでいらっしゃいます。そして、そのような「アイコン」を、漫画の中で、ちょっと前にあったものを表す時に、モノの輪郭を点で囲う表現を使って表しています。

これは、様々な木を削ったものです。中には、ホームセンターなどで売られている規格の木の材料や、誰かが使った残りの端財などもあります。

青田さんは、木を削ることで、木目や、木の性質、合板だったら合板としての作られ方など、その木そのものが見えてくると言います。確かに、私も日常の生活の中には、様々な木とともに私たちは生きていますが、その材料が本当はどんな木なのかということについて、考えたことがなかったなあと思いました。もしかすると、これらの木は、いろいろな国から来ていたりしますよね。それにしても、どの作品も、青田さんの美意識が行き届いていて、本当に美しいです。

お客さんからも、「作品はどのようにして作られるのですか?」とか、「削るのに何時間ぐらいかかりますか?」など様々な質問が飛び出しました。

布やすりや、紙やすりを使っていらっしゃるそうですが、時には、サンダーやグラインダーなどの機械を使ったり、お菓子の箱などは、様々な粗さの紙やすりを使ったりされるそうです。制作時間は、それぞれですが、お菓子の箱は、短い制作期間のものでも、2-3日かかるそうです。大きなものでは、1点で1ヶ月かかるものもあるそうです。

青田さんは、作品を通じて、私たちの日常の中が、大量生産のモノに溢れていることを指摘していらっしゃるだけではなくて、さらにこの「アイコン」のイメージを、再び大量生産されたモノとして、社会の中に溢れさせていこうと、今回特製バッグを制作されました!つまり、このバッグも作品のコンセプトとして、とても重要なのです!

こちらのバッグは、ミュージアムショップで2,800円で販売しています。サイコロのストラップは1個1個青田さんの手作りです!青田さんは、梱包のデザインも手がけられました!

さっそく私も購入しましたが、デザインがかわいいだけではなくて、つくりがしっかりしているし、大きさも手ごろで、いろんなモノを入れることが出来て、とても便利です!

ノートパソコンもすっぽり入ります!

青田さんは、他にも、サンクンガーデンの曲面ガラスにも、作品を展開されています。

ぜひとも、美術館にお越し頂いて、展覧会場でお楽しみ頂ければと思います!

投稿者:hina