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夏休みこどもの美術館2014「ざらざらえのぐで、でっかいびょうぶ」

台風11号がじわじわと日本に近づいていた8月8日(金)午前、小学1~3年生対象のワークショップ「ざらざらえのぐで、でっかいびょうぶ」を開催しました。
今回の講師は、美術家の山口百子さんです。

「みんな、屏風ってどんなのか知ってる?」
「知ってるー、おひなさまの後ろに立ってるやつでしょ?」
「そうだね、あれも屏風。でも、金ぴかの無地のものだけじゃないんだよ」

今回はまず参加者全員で展示室へ移動し、屏風がどのくらいの大きさのものなのか、
どんな絵が描かれているのかを見ました。
Wの形に折り立ててある作品もあれば、壁に平らに張り付けてある作品もあります。
でっかいびょうぶ①

講堂へ戻ったら、グループ毎に自分の好きな色の水干(すいひ)絵具をえらんで、方解末(ほうかいまつ)と一緒に絵皿に入れてもらい、
でっかいびょうぶ②

絵具の粒を指ですりつぶした後、膠(にかわ)液を入れて、よく練ります。
でっかいびょうぶ③

グループに用意された縦長の大きな画面に、ざらざら絵具で汚れた指をそのまま、えいっ。
手ざわりを確かめながら描いていきます。
でっかいびょうぶ④

最初は真っ白な紙に何を描いたらよいか悩んでいた参加者も、同じグループのお友達が描いているものに触発されてアイデアが浮かび、絵の世界はどんどん広がっていきます。
でっかいびょうぶ⑤

画面が大きいから、手が届かないところは乗っかって描いちゃえ。
でっかいびょうぶ⑥

あっという間に画面がみんなの描き込みで埋まってきました。
でっかいびょうぶ⑦

次は、硯で墨をすって墨汁を作ります。
ほとんどの参加者が初経験だったようですが、墨をすっている間はそれまでの賑やかさが嘘のように静まり返っていました。
でっかいびょうぶ⑧
でっかいびょうぶ⑨

筆に墨をつけて、先ほどの画面にさらに絵を描いていきます。
なんだか絵に奥行きが出てきました!
でっかいびょうぶ⑩
でっかいびょうぶ⑪

画面が乾いたところで、縦長の画面を2つずつ、つなぎ合わせて立たせ…
でっかいびょうぶ⑫

すべての画面がつながったところで、四曲一隻(よんきょくいっせき)の屏風の完成です!
でっかいびょうぶ⑬

お迎えに来ていた保護者の方と一緒に、出来上がった作品を鑑賞。
完成作の迫力に大人もびっくりです。
今回は作品を持って帰ることができないので、皆スマホやケータイ片手に大撮影会となりました。
でっかいびょうぶ⑭

グループ毎にバラバラに描いていたはずなのに、画面がつながると呼応する部分が見つかったりして、最初から一つの大きな作品だったように見えたのがとても不思議でした。
床に寝かせて描いていたときと画面をつないで立たせたときで、見え方が全然違うことに参加者は一番驚いていたようです。

講師の山口さん、学生アシスタントの皆さん、そして参加者の皆さん、ありがとうございました!

投稿者:3

夏休みこどもの美術館「日本画の良さを知ろう」

少し時間が経ってしまいましたが、さる7月26日(土)、夏休みこどもの美術館2014のワークショップ「日本画の良さを知ろう」(対象:小学4年生~中学3年生)を開催しました。
今年は現在開催中の特別展「挑戦する日本画:1950~70年代の画家たち」とゆるやかに関連させ、日本画ならではの画材や技法、画面の形などに親しむプログラムを複数企画しています。
この日は日本画家として活躍中の濱田樹里さんを講師にお招きし、自分の手で日本画の画材に触ったり、さまざまな技法を体験したりして、日本画ならではの表現やそのよさを知ることをねらいとしました。
「日本画の良さを知ろう」WS①

最初に日本画で用いる岩絵具(いわえのぐ)の原料である鉱物を見たり、手触りやにおいを確かめたりしました。
今回実際に使うのは水干(すいひ)絵具と呼ばれるものですが、絵具としての使い方は一緒です。
あとはひたすら実践あるのみ。

まず刷毛で下地を塗り、
「日本画の良さを知ろう」WS②

乾かしている間に水干絵具に膠(にかわ)液を加えて、
「日本画の良さを知ろう」WS③

指で練り、
「日本画の良さを知ろう」WS④

その絵具をもう一度刷毛でパネルに塗ります。
「日本画の良さを知ろう」WS⑤

図柄を選んだら、
「日本画の良さを知ろう」WS⑥

念紙(手製のカーボン紙)と重ねてパネルに固定し、図柄を転写、
「日本画の良さを知ろう」WS⑦
「日本画の良さを知ろう」WS⑧

さらに写した線を墨でなぞります。
「日本画の良さを知ろう」WS⑨

その後はどんどん色を塗っていきます。
一度塗ったところも色を重ねると、複雑な色合いで深みが出たように感じられます。
参加者の集中力は講師の濱田さんもスタッフも驚くほどで、あっという間にこんな感じ。
「日本画の良さを知ろう」WS⑩
※画面を早く乾かして次の色を塗りたいので、ドライヤーを当てています。

今回使用する木製パネルには、2種類の和紙が重ねて張ってあって、とても丈夫。
このワークショップのために講師が忙しい合間を縫って、事前に準備してくださったものです。
何度も色を塗り重ねても、破れることや毛羽立つことがないので、参加者は安心して描くことができました。
「日本画の良さを知ろう」WS⑪

今回は金箔、銀箔を画面に張ったり、砂子筒(すなごつつ)を使って細かく散らしたりという装飾的な技法にも挑戦しました。
「日本画の良さを知ろう」WS⑫
「日本画の良さを知ろう」WS⑬
※箔を貼りたいところに接着剤代わりの膠水を塗り、砂子筒に箔を入れて上から振りかけます。

ものすごい集中力で作品を完成させた参加者は、初めて体験する技法や画材に最後まで興味津々の様子でした。
この体験を通して、これまでとは異なる視点で、日本画作品を見てもらえるといいなと思います。

講師の濱田さん、アシスタントのお二人、そして参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました!

投稿者:3

芸術と科学の杜・中高生のためのシンポジウム「アートする心」開催!

11月17日、精神科医の高橋龍太郎さんと画家の山口晃さんをお招きして中高生のためのシンポジウムを開催しました。
写真1

第一部では山口さんによる講義と、高橋さんと山口さんによる対談が行われました。
写真2 写真3

山口さんの作品に対する考え方や高橋さんの作品収集の理念、そしてお二人が現在の職業を志したきっかけなどが話題に上がり、会場の皆さんも興味深そうに聞き入っていました。
 
第二部では中学校3年生から高校2年生までの生徒さんが壇上に上がり、高橋さん、山口さんとの会場トークが行われました。
写真4

作品に関する質問から職業に関する質問まで、生徒さんからの質問に対してお二人とも丁寧に答えていました。

高橋さん、山口さん、貴重なお話ありがとうございました!

白川公園に美術館別館!?

11月2(土)、3日(日・祝)に白川公園で「芸術と科学の杜・サイエンス&アートフェスティバル」を開催しました。
秋晴れの爽やかな天候のもとたくさんの方にお越しいただきました。
昨年に引き続き、美術館では、第2回のアート大会を開催。
内容は、「巨大アートをつくろう」、「スタンプラリーで彫刻を探そう」、「不思議なフィルターで宝探し」の三本立てです。
メインの「巨大アートをつくろう」では、ダンボールで、美術館の別館を作りました。

まずはダンボールを組み立てます。
その中に好きな色のケント紙を貼ったり、絵を飾っていきます。
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子どもだけでなく、お父さんもお母さんも真剣・・・
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大人は綺麗な紙を貼ったり、絵を飾ったりするぐらいしかアイデアが浮かばないのですが、さすが子どもたちは違いますね。シールや折り紙を使った飾りつけやいろいろなしかけや工夫がしてあります。
みなさん、一つのダンボールの装飾にすごく時間をかけて作っています、力作揃いです!
↓これは作家さんのもの
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作った後は、グラウンドに並べていきます。
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この写真はラジコンへリで空から撮影したものです。
ヘリ空撮
ダンボールで美術館を作るなんて、最初はどんなものが出来上がるのか想像がつきませんでした。出来上がってみるとこんな感じです。
上から見ると本当にカラフルで面白いですね。
実はこの美術館別館は巨大な迷路でもあるんです。3日は、この迷路に入って遊びました。子どもたちがとても楽しそうにしているのを見て、今後も気軽にアートを楽しんでもらえるような催しが開催できたらなと思います。

夏休みこどもの美術館ワークショップ「イスのつうしんぼ」

8月21日(水)、夏休みこどもの美術館2013のワークショップ「イスのつうしんぼ」を開催しました。
美術館においてある変わったイスの数々に目を向け、見た目の面白さから座り心地まで、さまざまな視点で評価してみようというプログラムです。
 
まずは講堂に並んだお客さん用のイスを例にとって話をした後、ステージに用意された3種類のイスを比べました。
背もたれ・座面・脚などの部位の確認を手始めに、それぞれの形、色や材質などの特徴をよく観察してメモし、どんな座り心地か想像してから実際に座ってみます。
ゆっくり、そーっと腰かけると、体のどの辺りがイスのどの部分と接しているかが普段より感じやすくなる気がします。
素材の固さや触り心地は座ってはじめて分かることで、見た目から想像していた感じとのちがいに「あれっ?」と驚く場面も。

イス_まずは3つのイスを比較
(まずは3つのイスを比較)
 
それから講堂を出て、美術館の各フロアに置かれているイスを探しながら、見た目と実際の座った感じ、それぞれの特徴をチェックしました。
参加者は場所によって、異なるイスが置かれていることに気づいたり、見比べているうちに似ているところを発見したりしては、嬉しそうにメモをとっていました。

イス_これは一見かたそうだけど・・・?
(これは一見かたそうだけれど…?)

イス_背もたれの傾き具合が気持ちいい
(背もたれの傾き具合が気持ちいい、そうです)

イス_立ちにくいイスには要注意
(立ちにくいイスには要注意!)

 
最後は講堂へ戻って、つうしんぼの結果と一番気に入ったイス、その理由をそれぞれ発表しあいました。
大人の参加者からは「こういうイスは床を掃除するときラクなのよね」という指摘があり、脚の構造と普段の生活とをリンクさせた意見にスタッフも思わず「なるほど!」とうなずいてしまいました。
 
収集対象としてイスをコレクションしている美術館もありますが、名古屋市美術館にあるイスの多くは備品としてのイスです。
今回のプログラムをきっかけに改めてイスをよく観察してみると、建物と同じように直線的なデザインで、耐久性の高い革や金属を用いたイスが多いことに気づきました。
掃除のしやすさまで考えたかどうかは定かではありませんが…単純に座り心地だけでなく、メンテナンスのことやイスを置く空間との調和をじっくり考えて選んであるのだと思えました。
 
次回、美術館へ来られるときは、ぜひイスにも注目してみてくださいね!

投稿者:3

ポジション2013 水野誠司・初美展  ~ギター演奏やってます♪

常設展示室3で開催中の「ポジション2013 水野誠司・初美展」

パラジウムプリントという技法を用いたややセピアがかったモノクロムの色調の美しい作品を見ることができます。

そして展示室内では素敵な作品を見ながらギターの演奏もお楽しみいただけます。

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ぜひ展覧会とあわせてお楽しみください。

●ギター演奏

日 時:6/30(日)、7/7(日)、12(金)、20日(土)いずれも15:00~

ギター:アレクサンドル・ガラガノフ

場 所:地下1階 常設展示室3、無料(展覧会のチケットが必要です。)

「岡崎アート&ジャズ2012」を見てきました!

現在名古屋市美術館では、「青木野枝展」を開催していますが、その青木野枝さんは、来年あいちで開催される「あいちトリエンナーレ2013」の出品作家でもいらっしゃいます。今回は、美術館の空間を生かした素晴らしいインスタレーションを展開してくださっていますが、トリエンナーレでは、美術館での個展とはまた違った側面が見られるのではないかと期待が膨らみ、今から楽しみにしているところです。

いよいよ次回の開催が来年に迫ってきた「あいちトリエンナーレ2013」ですが、そろそろ来年の開催に向けてあちこちで様々な催しが見られるようになってきました。つい先日ですが、あいちトリエンナーレ地域展開事業として開催された「岡崎アート&ジャズ2012」に行ってきました。「アートとジャズで町を巡る体験」ということで、岡崎の中心市街地の各所を会場に現代美術作品の展示やジャズイベントが開催されていました。平日にお伺いした私は、街なかに展開された現代美術の展示を見てきました。

岡崎アート&ジャズ2012
あいちトリエンナーレ地域展開事業 あいちアートプログラム
「岡崎アート&ジャズ2012」平成24年11月1日(木)~12月2日(日)
http://okzartjazz.com/

作品は、町の中心部数箇所と旧本多忠次邸に展示され、それと関連企画で岡崎市美術博物館でも現代美術の展覧会が開催されていました。

あいちトリエンナーレ地域展開事業
「岡崎アート&ジャズ2012」連携企画
光 陰 ―ひかり、かげ、とき―
2012年11月3日(土・祝)~2013年1月13日(日)
http://www.city.okazaki.aichi.jp/museum/bihaku/exhibition/exhibition.html

さて、今日は街なかに展開された「岡崎アート&ジャズ2012」についてご紹介したいと思います。

旧本多忠次邸は、昭和初期に建てられ、近年岡崎市の東公園内に移築復元されたモダンな建物です。

この中で、建築や調度品に合わせて山本一弥さん、木藤純子さん、小柳裕さんの3人が展示していました。寝室などを使った木藤さんの作品は、窓ガラスから差し込む青い光と百合の花の匂いで、幻想的な空間を作り出していました。館内には、当時の持ち主が好んで聴いていた音楽も流され、とてもレトロな雰囲気で、時空を越えてここに住んでいた人の時間と空間が、私たちの時間と空間と交錯するような不思議でいてとても素敵な空間となっていました。


木藤純子《本多忠次邸のためのインスタレーション》(部分)2012年

また、市街地中心部の展示会場のシビコというショッピングセンターでは、6組の作家が展示していました。中でもとても興味深かったのは、D.D.というアーティストユニットの作品です。


D.D.(今村哲+染谷亜里可+映像:出原次朗)《半熟卵の構造》2012年

このユニットは、名古屋市美術館でもお馴染みの作家さん、今村哲さん(第2回ポジション展出品作家)と染谷亜里可さん(第3回ポジション展出品作家)が中心となって結成されたアーティストユニットです。実は私は昨年、同ユニット作の体験型インスタレーションを栄にある愛知県立芸術大学サテライトギャラリーでの展示を拝見(体験)して、とても興味を持っていました。体験型インスタレーションは巨大な空間装置で、中に入るとどこか物語の世界の中に紛れ込んでしまったような感じで、お化け屋敷のようと言っては失礼ですが、先に何が起こるのか全く分からず、どきどきしながら進んでいくのです。それぞれの体験は一過性で、まるで演劇世界を体感する装置のようなとても不思議な作品でした。


作品入り口

今回の作品では、来館者は布と布の間の、とても人が入っていくようには見えない空間の中をぬって巨大な迷路を体験します。入れそうにもないような場所をもどかしい動きをしながら進んでいくと、知らず知らずのうちに別の空間にたどりつき、進んでは戻り、また道を探すという行為を繰り返しながら、様々な空間に出会うと同時に不思議なオブジェや映像空間を体験していくというものでした。展示場で手渡された『作品鑑賞の手引き』によると、「壁抜け」「川渡り」「5階立て」という3つの構造体から成り立っているとのことです。


「川渡り」のところ

もぞもぞしながら、なかなか前に進めないもどかしさを感じつつも、なんとか道を見つけることができました。何度か同じところに出たりもしましたが、不思議とどこかに道が開けてくるようになっていて、本当によく考えられています。ただ、問題は季節柄、毛糸のものを身につけているために静電気が激しかったことです(笑)。とはいえ、このようなほかではどこにも見たことのない(体験したことのない)作品は衝撃的で、すいすい進めないもどかしさ、異空間に紛れ込んでしまい出られなくなってしまったように思えて来て感じた焦燥感や不安感、そして通り抜けることができた時の開放感など、短い時間に壮大な物語を体験するように様々な感情の展開を体験するという、なんと言うかトータルな感覚(ちょっと変な表現ですが、、、。)を味わえます。とにかく、まだまだこのユニットの作品を見て(体験して)みたいです!

ほかにも、シビコ屋上には前回のトリエンナーレでも大活躍していた木村崇人さん、浅井裕介さんの作品を目にすることができましたし、またインフォメーションセンターでは、前回のトリエンナーレでゆるキャラのLOVEちくんで一躍大ブレイクした斉と公平太さんが岡崎にちなんだ「オカザえもん」というキャラクターを制作、グッズを販売していました。前回のあいちトリエンナーレを思い出し、少し懐かしい気持ちとともに、それぞれの作家さんのご活躍ぶりにうれしくなりました。これからも応援して行きたいです。


斉と公平太《オカザえもん》2012

ところで、各展示場所では、トリエンナーレの時のように案内監視のボランティアさんが活躍していました。このような街なかを会場とした展示では、美術館とは違い、どこに作品があるのか分からないといったことや道に迷ったりしてしまうこともあります。実を言うと「岡崎Art & Jazz」では、表示はとても分かりやすかったのですが、それでも初めて行った場所だったので、入り口が分からず少しうろうろしてしまったり、作品の位置がすぐには分からず見逃しそうになったりしてしまいました。そういった時にボランティアさんが声をかけてくださると、「ああ、ここだったのか」と分かるし、ボランティアさんとのコミュニケーションもとても楽しいものです。ずっと作品の近くにいらっしゃるので、作品の見どころ、楽しみ方をいろいろ教えてくださったりもします。

岡崎城の東隅櫓の中に展示されていた平田五郎さんの作品は、蝋で作られた巨大な箱で、観客はその瞑想的な空間に入ることもできるというもので、とても美しい作品だったのですが、そこにいらっしゃったボランティアさんによれば、私が訪れた曇りの日よりも晴れた日のほうが、外からの光が透けて見えてもっと美しいのだそうです。


平田五郎《Mind Space 箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中の箱の中に、白く輝くまるい月があった》2012年

展示場所でのボランティアさんとの会話を通じて改めて、見る人を魅了していく現代美術の作品というのはとても不思議な存在だなあと思いました。制作するのには、作品によっては莫大な材料費と膨大な時間がかかり、展示した後も、お客さんに見られなければならない、そのためには、チラシやポスターなどを作って広報をしたり、展示場所では作品を守る人が必要だったり、作家のアイディアから始まった作品は、展示という形になるまでに、本当に多くの様々な人の手がかけられています。

「これまで現代美術なんて分からないし、見たこともなかったのだけど、これはインスタレーションと言うらしくて、これは空間そのものを作品として提示している作家さんの作品なのですよ。この作品のここがとても素敵だなあと思うので、ぜひ、見ていってください」といった風に、声をかけてくださるボランティアさんの様子を見ていると、作品とともにいることで作品に愛着を深めていらっしゃることがよくわかります。作られた作品、作った人のアイディア、理想、作るために費やされたエネルギーに感嘆し、敬意を持ち、その作品を守り伝えていこうとしていらっしゃるのだなあと思います。

前回のトリエンナーレの時もそうでしたが、このような街なかでのプロジェクトの多くで、それまで現代美術には興味がなかったという人々が、作品や作家と関わることで現代美術に対する考えが変わったということをよく聞きます。

以前、越後妻有トリエンナーレなどの総合ディレクターを務めていらっしゃる北川フラムさんの講演会を聞きに行ったことがあります。その時に「現代美術は赤ちゃんと一緒なんだ。赤ちゃんはみんなが手をかけてあやしてお守りをしていかなければならない。でも、赤ちゃんは自身の成長とともに、育てている周りの人も成長させていく。現代美術もそれと同じで、人をつなげることができる、アートを通じてコミュニティは成長していくことができる」といったお話をされていました。当時、それを聞いた私は「なるほど~」と、ひどく感動したのですが、このお話を思い出して北川さんの本を読み返していたら、次のように書いていらっしゃいました。

「二〇〇六年の芸術祭で、僕は毎日ほとんどツアーガイドをしていたが、解説をしながら「これは赤ちゃんと同じではないか」と思うようになった。面倒、やっかい、うるさい、言うことを聞かない、生産性がない、まさにそれ自身としてはどうしようもない、ほうっておけば壊れてしまう。それをお婆ちゃんや隣近所のおばさんが来て、「そんなもんだよ、私が見ててやるから。少し休んでいなよ」なんて言ってカリカリしてテンパっている母親を慰めたりしている。そんな情景が思わず浮かんできた。そうこうしているうちに周囲のものが仲良くなってくるのである。美術は生理の発現であるが故に無垢なのだ。そして面白い。(中略)手のかかる赤ん坊は人を呼ぶ力をもっている。」(北川フラム『大地の芸術祭』角川学芸出版2010年P.67)

現代美術の展示を通じて、その町の人の何かが変わっていくということ、前回のトリエンナーレを体験した私も、特に会場となった長者町で、その変化の雰囲気を肌で感じました。実際には、その変化というものは、何年も何十年もずっと続いていって初めて、町の変化としてそれはどういうことだったのかということが少し目に見えてくる、そういうものなのかもしれません。でも、トリエンナーレの時に、その変化の兆しのようなものを確かに感じたのでした。

北川さんの言うように、美術は生理の発現であるが故に無垢であり、そしてエネルギーに満ちているのだと思います。究極的には、その赤ちゃんのような創造力のエネルギーに感嘆し、敬意を払い、人の創造力を大切にすることを通じてそれぞれの人を大切にするということが、私たち人間が持ちうる「文化」ということなのかなあとも思います。

12月1日には岡崎市図書館交流プラザで、トリエンナーレスクールの一環でその北川フラムさんのレクチャーが開催されていたようです。残念ながら、私はお話を聞きに行くことができませんでしたが、機会があれば、ぜひまたお話をお聞きしたいです。

ところで、名古屋市美術館も開館して、もうすぐ25周年を迎えます。毎年入場者数の獲得に悩んでいるとはいえ、それでも、1年に数十万人の来館者の皆様をお迎えしています。微力ではあるとは思いますが、この名古屋の町で名古屋の人々に何がしかの「文化の灯」をつなげるお手伝いが出来ているといいなあ、いや、そういう活動を続けていけるように頑張らなければいけないと思う今日この頃なのでした。

写真撮影:尾野訓大

投稿者:hina

白川公園におさげ髪の少女が出現!

11月3日(土・祝)に中区栄の白川公園で「芸術と科学の杜・アート大会」を開催しました。

公園内の彫刻を探す彫刻スタンプラリーや偏光フィルターを使った宝探し、美術館と科学館の建物をながーいロープで繋いで、絵を描いたカードを飾る催しなど、小さいお子さんから大人の方までアートに親しんでもらえるイベントを開催しました。

中でも、目玉だったのが、公園のグラウンドに当館所蔵の《おさげ髪の少女》を拡大して描く、巨大地上絵in白川公園。

当日会場にお越しいただいたみなさんに、色紙を使って地上絵を描いてもらいました。

この赤いコーンの中に絵を描きます。
公園が広いので、小さく見えますが、これでも12メートル×9メートルあります。
原画サイズの約20倍です。

いよいよ開始。まずは髪の毛の部分からスタートです。
図版を見ながら色紙をピンでグラウンドにとめていきます。

次々に顔や体の部分も描いていきます。
様子はラジコンヘリにカメラを積んで上空から撮影しています。

全体像が見えてきました。
目が入ると、ぐっとそれらしくなってきますね。

この面積をひとつひとつの花で埋めていくのは予想以上に大変。
しかし、大勢のお客様に参加していただいて着実に完成に近づいていきます。

4時間半かかって、ようやく完成しました!
どうですか。おさげ髪の少女に見えますか?

何分初めてのイベントでしたので、本当に完成するのか、もの凄く不安でしたが、参加いただいた皆さんのおかげで無事完成することができました。
この他の催しも大盛況で、中にはこちらの準備不足で長時間お客様をお待たせしてしまったものもありました。申し訳ございませんでした。
今後も気軽にアートを楽しんでもらえるような催しが開催できたらなと思います。また美術館に遊びに来てくださいね。ご来場ありがとうございました。

ラジコンヘリを使った撮影は株式会社ケイアンドエス様にご協力いただきました。
ありがとうございました。

投稿者:ナ