カテゴリー別アーカイブ: コレクション解析学

コレクション解析学

今年の冬は寒い!とくに最近すごく寒いです。東京は大雪で大変そうでしたが、この名古屋にも今夜雪が降るとのこと。しかも、インフルエンザも大流行中。みなさん、くれぐれも暖かくして、お身体ご自愛くださいませ。

さて、21日の日曜日、コレクション解析学を開催しました。

コレクション解析学は、毎年学芸員がコレクションの中から作品を1点選びレクチャーする連続講座です。市民のみなさまに広く収蔵品を知って頂く機会にしたいという企画ですが、学芸員が調査研究をすすめるために、強制的に自らを追い込む企画でもあります(笑)

今年度、わたしが選んだ作品は椎原治の「流氓ユダヤ」というシリーズの写真です。

椎原治

椎原治

流氓ユダヤ-仮睡

1941年

名古屋市美術館蔵

現在、常設展にて、ビンテージプリントの椎原治の作品、田淵銀芳と川崎亀太郎のニュープリント、そして安井仲治の『安井仲治写真集』から、このシリーズの名古屋市美術館で所蔵しているものすべてをご紹介しています。

安井仲治

安井仲治

流氓ユダヤ-三人

『安井仲治写真集』より

これらの作品に写し出されているのは1941年に神戸に滞在していたユダヤ難民の人々です。大阪のアマチュアの写真倶楽部の「丹平写真倶楽部」の有志のメンバーが撮影しました。

1940年7月カウナスの日本領事館の前に、ナチスの迫害を逃れるために、大勢のユダヤ人が「日本通過ビザ」を求めて殺到します。当時リトアニアの在カウナス領事代理だった杉原千畝は本国外務省に大量のビザ発給の可否の伺いを立てるが返答は不許可というものでした。しかし、連日押し寄せる人々を前に、杉原は違反を承知でビザの大量発給を決断。これが今日知られる「命のビザ」になります。このビザを手にしたユダヤ人がヨーロッパからはるか遠くに位置する極東の日本にやってきて、神戸に滞在したのです。「流氓ユダヤ」のシリーズは、写真表現としての作品でありながら、当時の亡命ユダヤ人の存在を証明する貴重なドキュメントでもあります。

ここには、逃避行の旅路の途中にある人々の束の間のリラックスした表情、あるいは友人たちと歓談している姿、物思いにふける様子など、様々な姿が写し出されています。その姿から、流浪の旅人ならではの哀愁や、人が生きるという、人間の力強さなどが感じられます。撮影した写真家たちが彼らと触れて感じた人間的な感情が伝わってくるような作品です。

一方、なぜ、彼らが故国を捨てて亡命しなければならなかったのか、そして、どんな奇跡が重なって亡命することができたのか、当時の社会情勢について歴史を紐解いていくことは歴史を学ぶことであり、同時に今現在わたしたちが直面している出来事をどうとらえ、どう向き合うかということにもつながっていくように思います。

このシリーズをまとめて展示している貴重な機会です。ぜひともご覧ください。(2月18日まで)

展示風景

展示風景2

 

投稿者:hina