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工事休館中のボランティア活動

名古屋市美術館は改修工事のため、約3カ月の間、お休みをいただきました。

当館ボランティアは開館日の毎日、11時と14時に常設展でギャラリートークを実施していますが、休館中はそれも休みにせざるを得ません。しかし「休館中だからこそ出来る活動があるのでは?」「普段なかなか出来ないことを、この機会に取り組みたい」と一部メンバーから提案があり、この夏は新しい試みを模索、挑戦しました。その活動についてご紹介します。

新しい試みとは、高齢者施設への出張活動です。小学校や放課後学級など、子どもを対象とした出張プログラムは以前から行っており、今回の休館中にも市内の複数の小学校へ出向きましたが、高齢者向けの活動はこれまで経験がありません。学校向けの活動には、市の教育委員会などを通じて希望を募るなど、実施までの段取りが整っていますが、美術館と高齢者施設との接点はほぼ皆無です。美術館へ足を運ぶのが難しい人たちのところへ出向いて、美術に親しむ機会を提供するという趣旨は認めるものの、果たしてニーズはあるのか…。手探り状態ではありましたが、今回の休館中に限った試行的な取り組みとして実施を決め、電話で問合せを続けたところ、幸い市内2か所のデイサービスセンターが活動を受け入れてくれることになりました。

集まったメンバー10数名で勉強会を開き、美術館ボランティアである自分たちにどのような活動が提供できるか、デイサービス利用者と活動をともにする際、どのような配慮が必要か、などを話し合いました。主な活動は所蔵作品をもとにしたぬり絵と、アートカードを絵札に見立てたカルタ取りの2つに絞り、一部のメンバーは学芸員とともに現場の下見を行って、職員の方からアドバイスを受けました。

ぬり絵では、利用者が関心を持って取り組めそうな題材を検討しました。図柄の細かさにも注目し、簡単すぎず難しすぎない適度な加減を見極めました。一方、カルタ取りでは、利用者の視力や視野について考えました。ハガキ大の紙に印刷された図柄を、離れたところから認識できる高齢者は多くありません。はっきりした色や輪郭線があることを基準に、60枚あるアートカードを約半分に絞り込みました。カルタの読み札も、当てはまる図柄を探すのに分かりやすく的確な表現になっているか、一語一語吟味しました。どちらの活動も、完成までのスピードや勝ち負けを競うのではなく、高齢者の方々が楽しみながら美術作品を見ること、本人の意志にもとづいて取り組むことに重きを置き、その支援を行うのが自分たちの役割であるとメンバー同士で確認しました。

やや緊張しながら臨んだ実施当日、デイサービス利用者の皆さんには、ぬり絵とカルタ、希望する内容を選んで45分程度、取り組んでいただきました。活動中はアートカードをまじまじと眺める方、若い頃の記憶を懐かしく思い出してお話しされる方、この日だけのスペシャルなぬり絵に熱中される方、さまざまでしたが、概ね楽しんでいただけたようです。ボランティアは、普段のギャラリートークのスキルを活かして利用者一人ひとりに声をかけ、発言に耳を傾け、おしゃべりに花が咲く場面も多くありました。施設職員の方々も、こちらの活動の趣旨を汲んで積極的に関わってくださり、ボランティアの手薄なところを適宜フォローしてくださいました。この場を借りて、ご協力いただいた関係者の皆さまに心より厚くお礼申し上げます。

今回の取り組みは、ひとまずこれで一区切り。今後どのように展開するかは全くの未定ですが、このような体験をきっかけに、ボランティア活動のあり方や、美術館として地域とどう関わっていくか、といった課題を積極的に考えていきたいと思います。

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