カテゴリー別アーカイブ: 教育普及

ボランティア養成講座を実施中です

公式サイトの「トピックス」にも掲載していた通り、名古屋市美術館では今年度GW明けから7月15日まで、第11期ボランティアの募集を行いました。折あしく緊急事態宣言発令期間と重なり、広報も思うように出来ない中で果たしてどれだけの人が集まるかと心配しましたが、定員を上回る申込みがあり、書類審査と面接審査を経て選ばれた33名を対象に、10月初旬からボランティア養成講座を始めました。開講にあたっては三密回避をはじめ、可能な限りの感染症対策を講じています。

講座は1回につき約3時間、全9回を予定しており、名古屋市美術館の収集方針や所蔵作品に関する知識の習得と並行して、対話による美術鑑賞(ギャラリートーク)についての学びや実践練習を中心とします。11月15日に開催した第3回養成講座では、前半の所蔵作品に関するレクチャーに続き、後半では受講者が6つのグループに分かれ、ギャラリートークを体験しました。トークに携わるのは、当館ですでに活動しているボランティアです。
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大半の受講者は、これまで当館で実施しているギャラリートークへ参加したことがなく、ボランティアの解説を“一方的に聞くもの”と思い込んでいたようです。ところが、ボランティアの「この作品をよく見て気づいたこと、気になったことを一緒に話していきましょう」という誘いに応じて発言すると「なるほど、そう思ったのは作品のどの辺りから?」とさらに問いかけられ、次々に意見を引き出されていきます。

戸惑いつつも自身の考えを話し、他の意見にも耳を傾けながら作品に何度も目を向けるうち、受講者は互いの見方に共通点やつながりを見出して考えを深め、さらに新たな疑問を見つけるなど、当初「どう見たらいいのか分からな」かった作品との接し方を少しずつ理解していったようです。

作品や作家に関する知識やスキルも必要ですが、ギャラリートークを行うにあたり忘れてならないのは「自分の目で丁寧に観察する」ことです。つまり一方的に情報を与えられる受け身ではなく、みずから作品と向き合う積極的で主体的な姿勢が大切なのです。対話を重ねながら来館者の皆さんに「作品をじっくり見ることは楽しい」と実感していただくためには、ボランティア自身が経験を通じて、丁寧に作品を見る面白さ、奥深さを理解している必要があります。一朝一夕に身に付くことではありませんが、この回では、その基本中の基本を学ぶことをねらいとしました。

講座は来年3月まで続きます。感染拡大状況のこともあり、今後も予定通りに進む保証はありませんが、このような状況だからこそ焦らず地道に、出来ることからコツコツと取り組んでいきたいと思います。

美術をたのしむプログラム「びじゅつかん検定(2/16)」実施報告

名古屋市美術館では、主に小中学生(とその保護者)を対象とした「美術をたのしむプログラム」を年3~4回実施しています。ただ何となく見るだけではなく、さまざまな方法で作品にアプローチすることで、美術や美術館に親しみをもっていただくことがねらいです。

先日2月16日(日)には「びじゅつかん検定」を実施しました。
「何のために美術館はあるのか」という、学校でもなかなか学ぶ機会のない問いについて、参加者同士が話し合いながら理解を深めていくことをねらいとしたプログラムです。

今回参加したのは小学1年生から6年生までの21名。
学芸員から検定についての説明を聞き、全員で練習問題を試しに解いてみた後、縦割りで3つのグループに分かれ、それぞれ問題に取り組みました。

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前半の検定3問は、美術館の宝物(収蔵作品)を守るための問題です。
「展示室へ持ち込んでいけないものは何?それはどうして?」
「美術館で火事が起きたとき、どうやって火を消すと思う?それはどうして?」
「泥棒から宝物を守るために、どんな対策をしているかな?それはどうして?」
最初に「どの問題も答えは一つではないよ」と聞いたこともあってか、参加者たちは手を挙げて、思い当たる考えをどんどん発言していきます。

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スタッフも「なるほど、そう考えた理由は何かな?」「こういう場合はうまくいかない気がするんだけど…その時はどうする?他に方法はある?」などと応戦しつつ、参加者たちが知恵を出し合いながら、さらに良い答えを導き出せるよう促します。

後半は、前半で話し合ったことを踏まえて、美術館が色々な工夫をして守っている宝物が一体どんなものか、常設展示室へ確かめに行きました。
額に入った油絵作品から、金属でできた巨大な立体作品、表面にさざ波のような凹凸のある真っ黒い直方体、うんと小さなメキシコ絵画まで、みんな宝物と知った参加者は、美術館の宝物の幅広さに驚くだけでなく、どれに対しても興味深そうに観察し、グループの仲間と思い思いに気づいたこと、感じたことを話し合っていました。

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最後は、全員が一生懸命検定に取り組んでいたことを確認し、合格証を一人ひとりに手渡しした後、保護者へのお手紙をファイルに挟んで配付、終了としました。

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2019年度の「美術をたのしむプログラム」は、おかげさまで全て終了しました。たくさんのご参加、ありがとうございました。残念ながら抽選に漏れてしまった方も、また是非ご応募ください。お待ちしております。
4月からの2020年度も年3回のプログラム開催を予定しております。順次、美術館の公式サイトやチラシで情報発信をしていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。(3)

美術をたのしむプログラム「びじゅつかんは玉手箱(11/23)」実施報告

名古屋市美術館では、主に小中学生(とその保護者)を対象とした「美術をたのしむプログラム」を年3~4回実施しています。ただ何となく見るだけではなく、さまざまな方法で作品にアプローチすることで、美術や美術館に親しみをもっていただくことがねらいです。

先日11月23日(土祝)には「びじゅつかんは玉手箱」を実施しました。
ふだん気に留めることの少ない屋外彫刻を白川公園の中で探し歩き、じっくり観察して、参加者同士が話し合いながらその面白さを発見、共有していくプログラムです。

今回参加されたのは8組18名のご家族。学芸員からの簡単な説明の後、参加者は4つに分かれ、グループごとに協力し合って作品を探しました。グループによって鑑賞する作品は少しずつ異なります。(写真1)20191123_玉手箱03

一緒に行動するボランティアスタッフは、作品の説明をするのではなく、2つのヒントを出します。まずは作品を探すためのヒント、お目当ての作品にたどり着いてからは、作品の良さや面白さを考えるためのヒント。
作品を色々な方向から観察し、色や材質、大きさ、形から各自が考えたことを話し合ううちに、異なる見方がたくさん出てきます。参加者は他の人の考え方に驚いたり、作品を何度も見直したりするうちに、どんどん発想が豊かになり、自然と他の屋外彫刻にも興味が湧いたようです。(写真2)20191123_玉手箱04

1時間ほどの散策の後、再度地階のキッズコーナーへ集まり、最も印象に残った作品について、グループでどんなことを話し合ったか、自分が気づいたことや不思議に思ったことを一人ひとり付せんに書いてもらいました。(写真3)20191123_玉手箱05
「絵も描いていい?」「1枚じゃ書ききれないんだけど」と鉛筆を走らせる手はなかなか止まらず、その後の意見共有の時間も、積極的に手を挙げて発言する姿が見られました。
大人もこどもも関係なく「みること」を楽しんでいただけたことが伝わってきて、スタッフも嬉しかったです。
最後は散策に用いた地図と「名古屋市美術館 周辺の彫刻」リーフレットをファイルに挟んで終了、解散としました。

「名古屋市美術館 周辺の彫刻」リーフレットは、美術館1階の総合案内や、常設展示室入口などでもお渡ししています。ご興味のある方はぜひ公園の散策がてら、屋外彫刻がどこにあるか探しながら楽しんでみてください。(3)

美術をたのしむプログラム「イチおし!-スペシャルぬり絵編-(6/9)」実施報告

 名古屋市美術館では、作品をただ見るだけではなく、さまざまな方法でアプローチすることで美術や美術館に親しみをもっていただくことを目的に、主に小中学生(とその保護者)を対象とした「美術をたのしむプログラム」を年34回実施しています。

 69日(日)には、令和になって初めてのプログラム「イチおし!-スペシャルぬり絵編-」を実施、小学4年生から大人まで26名の方が参加しました。

 参加者には、所蔵作品をもとに当館学芸員が作成した特製のぬり絵に取り組んでもらいます。今回は荻須高徳《サン=ドニ河岸》とルフィーノ・タマヨ《乗り遅れた乗客》、2種類を用意しました。

 まず、参加者全員でまだ色のついていないぬり絵の図柄をよく観察します。何が描いてあるだろう?どんな場面だろう?

「並木道の木の枝に葉っぱが全然ないから、季節は冬だと思う」など、輪郭線だけの絵からも読み取れる情報はある反面、色がないために分かりづらいことも多いと気づきます。実際の作品はどんな色づかいか、テーブルごとに想像し話し合ってから、展示室へ作品の確認に向かいました。

写真1_作品鑑賞中

「空はきっと晴れてて青だと思ったけど、本物の絵の空はグレーで薄曇りだった」

「建物の壁を表す色がちょっとずつ違っていて、思っていたより複雑だった」

「人の肌の色が緑で塗ってあって、びっくりした」

など、自分たちの予想との違いに驚いた参加者から、たくさんの意見が出ました。

なかには「色が付いて少しは分かったところもあるけど、やっぱりよく分からない絵だと思う」という率直な声もありました。

 作業用テーブルに戻ってからは、色鉛筆の握り方や動かし方を確認し、少しだけ彩色の練習をしました。左から右へ行くに従って、段階的に色が濃くなるように4つのマスを塗り分けるというものです。たった1色でも濃さを変えることで色数を増やせること、混色など複数の色を組み合わせるときにも応用できることを体験しました。

写真2_力加減の練習

 その後、2種類から取り組みたい作品を選び、いよいよぬり絵開始。本物の作品そっくりに色付けする、自分で考えてオリジナルの彩色を施す、どちらの塗り方でもOKとし、元の作品が気になったら展示室へ何度も確認しに行っても良いことにしました。隣り合う色の組合せや、混色の仕方などを考えながら少しずつ丁寧に塗っていく姿は、真剣そのもの。参加者は大勢いるのに、会場はとても静かでした。

写真3_ぬり絵作業中

写真4_みんなぬり絵に熱中

 約1時間後、完成した人もそうでない人も一緒に、各自のぬり絵を鑑賞し合い、それぞれに工夫したところ、難しかったところ、ぬり絵をしながら気づいたことなどを発表・共有しました

「地味な絵でも、何度も見るうちに、実はたくさんの色が使ってあることに気づいた」

「色を混ぜるのが難しかったけど、自分の思い通りの色が出来ると嬉しかった」

「こういう風にしたい、と思って色を選んで塗ってるのに、なかなかイメージ通りにならなくて難しかった。絵描きの人はすごいと思った」

など、参加者がこの日の経験から感じたことをたくさん聞くことができ、スタッフとしても嬉しかったです。

 最後に、お持ち帰り用のファイルにぬり絵を挟んで終了、解散としました。 

 今回のプログラムは大変たくさんのお申込みをいただいたため、抽選となりましたが、開館日の土日および祝休日には「コレクションをぬり絵でたのしむ」という自由参加のプログラムを別途開催しています。お一人様1枚、1日先着30名で年齢制限はなく、個々人のペースでぬり絵を楽しんでいただけます。常設展にお越しの際にお時間がありましたら、ぜひ挑戦してみてください。(3)

工事休館中のボランティア活動

名古屋市美術館は改修工事のため、約3カ月の間、お休みをいただきました。

当館ボランティアは開館日の毎日、11時と14時に常設展でギャラリートークを実施していますが、休館中はそれも休みにせざるを得ません。しかし「休館中だからこそ出来る活動があるのでは?」「普段なかなか出来ないことを、この機会に取り組みたい」と一部メンバーから提案があり、この夏は新しい試みを模索、挑戦しました。その活動についてご紹介します。

新しい試みとは、高齢者施設への出張活動です。小学校や放課後学級など、子どもを対象とした出張プログラムは以前から行っており、今回の休館中にも市内の複数の小学校へ出向きましたが、高齢者向けの活動はこれまで経験がありません。学校向けの活動には、市の教育委員会などを通じて希望を募るなど、実施までの段取りが整っていますが、美術館と高齢者施設との接点はほぼ皆無です。美術館へ足を運ぶのが難しい人たちのところへ出向いて、美術に親しむ機会を提供するという趣旨は認めるものの、果たしてニーズはあるのか…。手探り状態ではありましたが、今回の休館中に限った試行的な取り組みとして実施を決め、電話で問合せを続けたところ、幸い市内2か所のデイサービスセンターが活動を受け入れてくれることになりました。

集まったメンバー10数名で勉強会を開き、美術館ボランティアである自分たちにどのような活動が提供できるか、デイサービス利用者と活動をともにする際、どのような配慮が必要か、などを話し合いました。主な活動は所蔵作品をもとにしたぬり絵と、アートカードを絵札に見立てたカルタ取りの2つに絞り、一部のメンバーは学芸員とともに現場の下見を行って、職員の方からアドバイスを受けました。

ぬり絵では、利用者が関心を持って取り組めそうな題材を検討しました。図柄の細かさにも注目し、簡単すぎず難しすぎない適度な加減を見極めました。一方、カルタ取りでは、利用者の視力や視野について考えました。ハガキ大の紙に印刷された図柄を、離れたところから認識できる高齢者は多くありません。はっきりした色や輪郭線があることを基準に、60枚あるアートカードを約半分に絞り込みました。カルタの読み札も、当てはまる図柄を探すのに分かりやすく的確な表現になっているか、一語一語吟味しました。どちらの活動も、完成までのスピードや勝ち負けを競うのではなく、高齢者の方々が楽しみながら美術作品を見ること、本人の意志にもとづいて取り組むことに重きを置き、その支援を行うのが自分たちの役割であるとメンバー同士で確認しました。

やや緊張しながら臨んだ実施当日、デイサービス利用者の皆さんには、ぬり絵とカルタ、希望する内容を選んで45分程度、取り組んでいただきました。活動中はアートカードをまじまじと眺める方、若い頃の記憶を懐かしく思い出してお話しされる方、この日だけのスペシャルなぬり絵に熱中される方、さまざまでしたが、概ね楽しんでいただけたようです。ボランティアは、普段のギャラリートークのスキルを活かして利用者一人ひとりに声をかけ、発言に耳を傾け、おしゃべりに花が咲く場面も多くありました。施設職員の方々も、こちらの活動の趣旨を汲んで積極的に関わってくださり、ボランティアの手薄なところを適宜フォローしてくださいました。この場を借りて、ご協力いただいた関係者の皆さまに心より厚くお礼申し上げます。

今回の取り組みは、ひとまずこれで一区切り。今後どのように展開するかは全くの未定ですが、このような体験をきっかけに、ボランティア活動のあり方や、美術館として地域とどう関わっていくか、といった課題を積極的に考えていきたいと思います。

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