カテゴリー別アーカイブ: 絵本原画の世界2013

絵本原画展ワークショップ「じぷたを作ろう」

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」が終了してから、かなり時間が経ってしまいましたが、7月6日(土)に行われたワークショップ「じぷたを作ろう」の様子をお伝えします。

“じぷた”とは、今回の出品作家の一人である山本忠敬さんの絵本『しょうぼうじどうしゃ じぷた』の主人公、小型ジープの消防車のことです。
『しょうぼうじどうしゃ じぷた』が発行されたのは1963年10月。
50年も前に作られたお話ですが、今でも色あせることなくたくさんの人に愛されている絵本です。
今回は大人の手の平サイズの木製“じぷた”を作る体験を、皆さんに楽しんでいただくことにしました。
 
講師をお願いした井垣理史さんは、とても手先が器用で、根っからの凝り性。
あらかじめ用意された材料と道具を各テーブルに1人分ずつセッティングしたのですが、受付を済ませて会場に入った参加者は、その部品の多さと細かさにびっくり!!
写真つきの制作手順書も懇切丁寧に作られていて、ワークショップへの期待はがぜん高まります。

写真①1人分の材料
1人分の材料
 
井垣さんの説明と手順書を頼りに、少しずつ“じぷた”を形にしていきます。
ただ、車のパーツなど、聞き慣れない独特の用語に慣れるまで一苦労。
あまりの部品の多さと細かさに「え、次に使うのはどれ?」とやや戸惑い気味。
でも、分かんなかったら、どんどん聞けばいい。
接着剤でくっつけたものが取れてしまったら、付け直せばいい。
色を塗るところがはみ出してしまっても、乾いてから上から重ねちゃえばいい。
井垣さんのワークショップは失敗を気にしない、間違ったら前にもどってやり直せばいい、という考えと、それができる工夫にあふれています。
とても大らかで柔軟なところが魅力です。
最初、緊張していた参加者もその雰囲気に慣れ、作業も少しずつ調子がつかめてきました。

写真②針金に凧糸をまく…さて、これは?
針金に凧糸をまく…さて、これは?
写真③タイヤに色をつける
タイヤに色をつける
 

約5時間の格闘の末(?!)、出来上がった“じぷた”はこの通り。

写真④参加者Aさんの“じぷた” 写真⑤参加者Aさんの“じぷた”
参加者Aさんの“じぷた”
写真⑥参加者Bさんの“じぷた” 写真⑦参加者Bさんの“じぷた”
参加者Bさんの“じぷた”
写真⑧参加者Cさんの“じぷた” 写真⑨参加者Cさんの“じぷた”
参加者Cさんの“じぷた”
写真⑩参加者Dさんの“じぷた” 写真⑪参加者Dさんの“じぷた”
参加者Dさんの“じぷた”
写真⑫参加者Eさんの“じぷた”  写真⑬参加者Eさんの“じぷた”
参加者Eさんの“じぷた”
 

作業の合間に、このワークショップに参加しようと思ったきっかけを何人かにお尋ねしたのですが、ある女性は息子さんが二人とも『しょうぼうじどうしゃ じぷた』の絵本が大好きで、小さい頃は何百回とせがまれて読み聞かせをしたそうです。それが懐かしくて応募されたとのこと。
今はお二人とも社会人だそうですが、このワークショップに参加することを話したら、普段ほとんど会話をしない下の息子さんが、当時じぷたの絵本がなぜ好きだったか、どのシーンでどんなことを感じていたのか、など堰を切ったようにワーッと話し始めてとても驚いた、と語ってくださいました。
出来上がっておうちに帰った“じぷた”を見て、息子さんがどんなコメントをしたのか、気になるところです。

ご参加いただいた皆さま、長時間にわたり本当にお疲れさまでした。
また、素敵なお話をありがとうございました。

投稿者:3

コンサート「絵本原画の音楽」~はじめての美術 絵本原画の世界2013~

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」(会期: 6月15日[土]~7月21日[日])は、大勢のお客様にご来場いただき、好評のうちに終了することができました。最終日前日の7月20日(土)に行った野村誠さんのコンサート「絵本原画の音楽」にも多くのお客様にお集まりいただきましたので、その様子をご紹介します。

野村誠さんは、作曲家であり、ピアニスト、鍵盤ハーモニカ奏者としても活躍されています。音楽の既成概念にとらわれない野村さんの発想の柔軟さは、私たちを驚かせます。鍵盤ハーモニカはそのひとつですが、小学校の音楽の授業で使われることもあってか、リコーダーと同様に子どものための教育用楽器と思われている鍵盤ハーモニカに、オリジナルの曲を作り、奏者として実演して、その魅力と可能性を引き出す活動をしています。今回のコンサート「絵本原画の音楽」は、野村さんの多様で幅広い活動のほんの一部に触れていただくだけでしたが、展示してある絵本原画を楽譜にして、会場内を移動しながら鍵盤ハーモニカによる即興演奏を1時間ほどのあいだしていただきました。演奏していただいたのは、順に下記の9作品です。

秋野不矩《うらしまたろう》
太田大八《どうぶつたちのおかいもの》
佐藤忠良《おおきなかぶ》
田島征三《ふるやのもり》
長新太《おしゃべりなたまごやき》
なかのひろたか《ぞうくんのさんぽ》
村山知義《おなかのかわ》
山本忠敬《しょうぼうじどうしゃ じぷた》
大村(山脇)百合子《ぐりとぐら》

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佐藤忠良《おおきなかぶ》の前で演奏する野村さん。

2
おなじく佐藤忠良《おおきなかぶ》の前で。お客様と鍵盤を分けっこ。演奏の途中からかぶが抜けるまで、「うんとこしょ どっこいしょ」の掛け声がお客様のあいだで繰り返され、大変な盛り上がりでした。

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大村(山脇)百合子《ぐりとぐら》の前で。身動きできないくらい大勢のお客様です。

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おなじく大村(山脇)百合子《ぐりとぐら》の前で。野村さんの演奏にあわせてお客様の視線も画面を追って移動します。

場面が容易に分かる親しみやすい演奏をしてくださった野村さん。お客様は、野村さんの演奏する曲に促されて、いつも以上に目で見る原画の世界に引き込まれているように感じられました。皆様の楽しく満足そうな表情がとても印象に残りました。

ご参加いただいたお客様だけでなく、会場におられた他のお客様にもご理解とご協力をいただき、混乱なくコンサートを終えることができました。この場を借りて皆様にお礼を申し上げます。またこのような機会がありましたら、是非ご参加ください。

投稿者:み。

はじめての美術 絵本原画の世界2013 - No.2

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」(6月15日[土]~7月21日[日])は会期のなかばを過ぎ、当館ボランティアによるギャラリートークを除いて、関連催事は野村誠さんのコンサート「絵本原画の音楽」を残すのみとなりました。このコンサートは、展示している絵本原画を楽譜にして鍵盤ハーモニカによる即興演奏をしていただくもので、1時間ほどのあいだ会場内を移動しながら行います。本展は子どもの来場者が多く、週末の入場者数が平日よりも格段に増えるのですが、会期最後の土曜日である7月20日のコンサート実施日は、1日の入場者数が2,000人を超えると思われます。当日静かに落ち着いて作品と向き合いたい方は、コンサート実施時間の午後2時から3時過ぎまでを特に避けてご来場ください。

ご覧になられた皆様からおおむね好評をいただいている本展ですが、原画の持つ色の美しさや描写の細やかさに驚かれている方が多いようです。印刷物である絵本は、原画がそのまま再現されているわけではありません。再現されていない理由には、経済性や印刷技術の制約といったどちらかといえばマイナスの側面と編集などのプラスの側面とがあります。私たちが普段開催している日本画や油絵などの絵画を紹介する展覧会では、図録の制作にあたり、できるだけ色彩を正確に再現し、可能ならば質感までも再現したいと努力しますが、どうしても限界があります。だからこそ展示の場所に足を運び、本物を見る必要があるといえるのですが、これは絵本と絵本原画のかかわりを考えるときにも当てはまります。

絵本は、絵だけでなく、文章そのものや絵と文章との組み合わせ、開き(右開きか左開きか)、判型(縦判か横判か)、文字組みなど、数多くの観点を持っています。原画の展覧会では、おもに文章に関わる要素が欠落するわけですが、絵にまつわる事柄に意識を向けるには良い機会であるといえます。

編集によって絵本と原画に違いが生まれている例をご紹介します。『ぐりとぐら』の26-27頁には卵の殻で作ったクルマが出てきます。絵本の卵の殻は白ですが、原画ではうっすらと赤い色が施されています。原画をご覧になって何か印象が違うなと思われた方もあるかもしれませんが、白と赤、どちらの納まりが良いと感じられるでしょうか。また、20-21頁と24-25頁では、原画ではそれぞれの頁に一頭ずつ、計二頭いる象が、絵本では向かって右側頁の一頭がいなくなっています。象のいた場所には、文章の文字が組み入れられています。象ではなく、他の動物を消して、そこに文字を入れたら、印象はどのように変わるでしょうか。

なんだか間違い探しのようになってきましたが、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』など他にもいくつかありますので、興味のある方は絵本と図録の図版をじっくりと見比べてください。

投稿者:み。

特設休憩コーナー設置してます

連日たくさんのお客様にお越しいただきありがとうございます。
今回の展覧会「はじめての美術  絵本原画の世界2013」では、小さなお子様連れのお客様がたくさんいらっしゃっています。
そこで、地下1階に「特設休憩コーナー」を設けています。

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地下1階です
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入り口では彼がお出迎え

中には、畳とテーブルが置いてあります。
眠くなったり、疲れてしまった小さなお子様には、靴を脱いで休憩していただくこともできます。
お菓子・お食事はダメですが、飲み物はOKですよ。

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6畳分の畳
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テーブルもあります

もちろん、大人のお客様も大歓迎。
ぜひ、ご利用くださいね。

 

絵本原画展ワークショップ「こんを作ろう」

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」が始まって1週間が経った6月22日(土)。
ワークショップ「こんを作ろう」を午前/午後の2回、開催しました。

“こん”とは、今回の出品作家の一人である林明子さんの絵本『こんとあき』に登場するきつねのぬいぐるみのことです。
とはいえ、“こん”のように手も足も自由に動く本格的なぬいぐるみを作るのは技術的にも時間的にも大変なこと。
今回は大人の手の平サイズのマスコットの“こん”を作る体験を、皆さんに楽しんでいただくことにしました。

今回、講師をお願いした岡庭智子さんはもともと版画がご専門ですが、今は布を使った半立体の作品を数多く制作・発表していらっしゃいます。
今回は2時間で完成できるよう、色々な工夫をしてくださいました。
材料は、あらかじめ各パーツに切り分け、1セットにしてあります。
土台となる布の中央に“こん”を置けるように作られた型紙、作り方の手順を書いた紙、刺繍の位置や使う糸の色が分かるようにした写真なども用意しました。

ブログ写真①材料や資料
材料や資料

“こん”のぬいぐるみらしさを出すために、ところどころ刺繍をほどこす箇所を設けていますが、苦手な人にはフェルトでパーツをボンドで貼り付けるだけでも出来るよう、口元や鼻などのパーツも準備しました。

参加者の皆さん、最初は少し緊張している様子でしたが、いざ始まると普段から手芸に親しんでいる大人から学校の授業で少し習っただけの小学生まで、男女一緒に、黙々と“こん”作りに夢中になりました。

ブログ写真②見本にあわせて布を正しい配置におく
見本にあわせて布を正しい配置におく

ブログ写真③縫い合わせた生地に綿をつめる
縫い合わせた生地に綿をつめる

一つひとつの手順を丁寧に仕上げていく方が多く、午前の部も午後の部も時間を少しオーバーしてしまったのですが、出来上がった自分だけの“こん”を見る参加者の目は満足感と達成感でいっぱい!
その表情から『こんとあき』という絵本は本当にたくさんの人から愛されているんだなぁと感じました。

ブログ写真④大人が作った“こん”    ブログ写真⑤大人が作った“こん”
大人が作った“こん”

ブログ写真⑥小学生が作った“こん” ブログ写真⑦小学生が作った“こん” ブログ写真⑧小学生が作った“こん”
小学生が作った“こん”

ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

 

投稿者:3

「はじめての美術 絵本原画の世界2013」展 開会式

6月14日、「はじめての美術 絵本原画の世界2013」展の開会式が行われました。

写真1

写真2  写真3

本展は、宮城県美術館が所蔵する1万点以上に及ぶ国内有数の絵本原画コレクションから選りすぐった26作家43タイトル320点あまりの作品を紹介しています。

展示作品の中には「ぐりとぐら」(山脇百合子)や「こんとあき」(林明子)など、世代を超えて今なお読みつがれている日本の絵本を代表する名作の数々が含まれており、子どもから大人まで幅広い年齢層の方に楽しんでいただける展示内容となっております。

また、絵本になじみがない方でも、原画ならではの美しい色使いや表現の豊かさを楽しんでいただけると思います。

写真4

7月21日まで開催の「はじめての美術 絵本原画の世界2013」展に皆様ぜひお越しください!

はじめての美術 絵本原画の世界2013

新年度です。開館25周年を記念する「上村松園展」(会期: 4月20日[土]~6月2日[日])ではじまる今年度の名古屋市美術館の特別展。二番手は「はじめての美術 絵本原画の世界2013」(会期:6月15日[土]~7月21日[日])です。ポスターやチラシが、そろそろ皆様の目に触れはじめているのではないかと思います。

この展覧会では、宮城県美術館の絵本原画コレクションから選りすぐった作品をご紹介します。宮城県美術館の絵本原画コレクションは、福音館書店の1956年創刊の月刊絵本「こどものとも」を核としており、出品作品には、『おおきなかぶ』や『ぐりとぐら』、『はじめてのおつかい』など、今日まで読みつがれている日本を代表する名作絵本の数々が含まれています。タイトルを見聞きするだけで懐かしくなりますが、中身は絵本原画に備わった美術表現としての魅力をご紹介するいたって硬派なものです。

小さな子どもにとって、「読み聞かせ」はとても大切です。おとなに文字を読んでもらうことで子どもは絵本の絵に視線を集中し、物語を声として聞きながら描かれている世界を楽しむことができます。文字を読むことで絵を見ることがおろそかになりがちな私たちおとなに、文字のない絵本原画は、もう一度子どものときのように描かれた世界に遊ぶ楽しみをもたらしてくれます。優れた絵本原画は、そこに表わされた物語を具体的な言葉として想起させる力さえ持っています。

絵本原画の魅力のひとつをご紹介しましたが、絵を描いた作家たちは、多くの場合、文字で表わされた物語を託され、それを基に絵を描いています。絵にするときに、作家一人ひとりの想像力と創造力が働いているわけです。

シンガーソングライターとして一世を風靡し、今ジャズピアニストとして活動されている大江千里さんのアルバムに「うんとこしょ どっこいしょ」(2007年5月2日発売)があります。これは、絵本に曲をつけ、物語を朗読したもので、今回の出品作品では先述の3つと『そらいろのたね』が含まれています。絵本にインスパイアされたオリジナルの楽曲なので、純粋に言葉と向き合うことにはなりませんが、原画を見るときとは逆に物語の光景を思い描きながら楽しむことができます。

展覧会の関連催事では、音楽家の野村誠さんに会場で作品を見ながら鍵盤ハーモニカの即興演奏をしていただきます。造形ワークショップや記念講演会などもありますので、展覧会とあわせてご参加ください。

投稿者:み。