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名古屋市美術館のディティール②

2016-05-08 14.42.58

さて、これはどこでしょうか?

緑色の手すりが綺麗な曲線を描いています。

名古屋市美術館の設計者黒川紀章は、このように曲線を巧みに使い、また、色にもこだわりました。

この緑は日本の伝統色「常盤緑(ときわみどり)」。建物を遠くから見た時にもひときわ目を引く鮮やかな緑です。

建物の中に入れば、やはり日本の伝統色である「朱(しゅ)」も目に入ります。

ご来館される時には、どうぞ、色にも注目してみてください。

 

投稿者:AN

閾値を超える

しばらく前から美術館の教育普及活動について考えることが増えています。名古屋市美術館が開館した1980年代末から90年代にかけては、ブームとも言えるような興味や関心を集め、各地各所で様々な試みが行われていました。教育普及を専門とする学芸員の採用も増え、美術館の活動内容が変わって行く兆しのようなものが感じられたものでした。

ワークシートやワークショップ、ギャラリートークや音声ガイドなどはこの頃から一般に広まり、今日ではあって当たり前、手法も標準化が進んだためか中身が問われることもなくなってきています。コンピュータやスマートフォンの普及が進み、教育普及の手段や手法が変わりつつある今は、移行にともなう停滞期なのかもしれません。

あいちトリエンナーレで実施されているNET  Project》は、ブラジル出身の作家ジョアン・モデさんの企画によるものです。紐をつなげてネット()を織り上げるというもので、観客である我々が参加者として作品を作り上げて行きます。

「つなぐ」「結ぶ」という概念は、教育普及活動では基礎的なものであり、その発想のもとで考案されたプログラムは数多くあります。東日本大震災では「絆」という言葉が多く語られましたが、それより以前、例えば新潟県中越地震の折などにも市民参加によって紐や布をつなぎあわせ、何ものかを作り上げるプロジェクトが行われています。

モデさんのように作家発案のもの、美術館の教育普及担当者の発案によるもの、とそれぞれあるのですが、単純同一に比較できないとしても、後者が様々な点において分の悪い状態にあるのは間違いないでしょう。表現活動としてのプロジェクトと教育普及活動としてのプロジェクトの類似と境界が、評価とともに問われてきます。 

さて、モデさんの《NET  Project》は、開始から2週間余りでこれほどの密度を持つほどになりました。(817日撮影。開始直後の様子は、730日付けのブログをご覧ください。)

 

1

 

トリエンナーレ終了まで、まだ2ヶ月もの期間があります。これからどんな状態になって行くのでしょうか。まったくの偶然ですが、少し前に始まったポケモンGOは過剰な同調行為がいつもとは違う状態を生じさせることを目に見えるかたちで示しました。悪意のない行為も度が過ぎれば望ましくない状態をもたらす可能性がある。ネットの重みに耐える樹々に「ほどよい加減」を考えさせられました。モデさんの意図が何辺にあるのか、それが明らかになるまで様子を見ることにしましょう。

 

投稿者: み。

みんなで つなげよう つながろう

美術館の敷地の角に、何やら人が集まっている。 今はやりのポケモンGOか?

 ジョアン・モデ 1

いや、ポケモンじゃない。 何だこれは?

ジョアン・モデ 2

 

いろんな色、いろんな太さ、いろんな長さのヒモが、つながって網のようになってます。

通りかかった子どもたちもヒモを結ぶのに夢中。

ジョアン・モデ 3

 

子どもだけじゃありません。大人も夢中。 私もやってみましたがすぐに夢中。

実はこれ、811日から始まる、あいちトリエンナーレの作品の一つ。

左上で地面に座って、ヒモをそろえているのがブラジル出身の作家ジョアン・モデさん。

作品名は《NET  Project

 

ジョアン・モデ 4

ヒモをつなげば、心もつながる。インターネットもいいけれど、本物のネット作りにも

参加してはいかが? この《NET  Project》、今日(730日)からトリエンナーレの会

期中、誰でも参加できます。(F

ジョアン・モデ 5

 

 

 

ポンペイの壁画展

《ケイロンによるアキレウスの教育》

図1:ケイロンによるアキレウスの教育

《踊るマイナス》

図2:踊るマイナス

 

名古屋市博物館で「世界遺産 ポンペイの壁画展」の開会式があり、展示を見てきましたので早速ご紹介しましょう。とにかく素晴らしい展示です。久しぶりに展覧会を見て、陶然としました。出品点数は63点。と聞くと物足りないように感じる方もいるかもしれませんが、見応えは十分です。

壁画はすべてフレスコ画。つまり漆喰の壁に水溶性の絵の具で描いたもので、今から2千年ほど前に制作されたものです。当然、状態がそれほど良いとは思えないのですが、同業者の立場で言うと、よくもこれほどのレベルのものを、こんなに沢山貨したものよ、とあきれるほどの質の高さです。

絵画技法としては素朴、時に未熟という表現も使いたくなりますが、決してそれがマイナスになりません。むしろ描くことの喜びがストレートに見るものに伝わってきます。そして、時代を経たものだけに許される絵の具の独特の質感と色合い。いつまで見ていても飽きることのない深みのある美しさがそこにあります。とりわけ素晴らしいのが、ナポリ近郊の農園別荘の壁画を再現した部屋。三方を美しい壁画に囲まれた部屋の中央に立つと、瞬く間に気分は古代ローマ世界。この部屋を見るだけでも十分に価値があります。

ルノワールの作品なら、パリでもロンドンでも、ニューヨークでも、そして東京でも見ることはできます。しかし、これだけのレベルの壁画をまとめて見ようとすればナポリかポンペイに行くしかありません。考古学ファンのあなたも、美術ファンのあなたも、見逃す手はありません。(F

*「世界遺産 ポンペイの壁画展」は925日まで名古屋市博物館で開催中

今年の夏!

AT2016_LAI_Chih_Sheng

 賴志盛《Border_Lyon》 第13回リヨンビエンナーレ、リヨン現代美術館 2015 Courtesy of LAI Chih-Sheng and ESLITE GALLERY

 

3年ぶりに、また、あいちトリエンナーレが開催される夏が近づいてきました。トリエンナーレも今回でいよいよ3回目を数えます。

あいちトリエンナーレ公式Webサイト http://aichitriennale.jp/

 

今回も、名古屋市美術館は会場の一つになります。つい先日、あいちトリエンナーレの事務局の方々が名古屋市美術館にいらっしゃって、こちらの会場ではどのような作家、作品が展示されるのかということとディスプレイや展示作業についての打ち合わせがありました。第2回目の前回は、空飛ぶ茶室など、大掛かりな工事が必要となる野外作品があったり、出入り口に美術館南側の非常口が使われたり、通常の状態とは大きく違った使い方で、当館をよくご存知のお客様を驚かせたことと思いますが、今回はそれと比べると、オーソドックスな美術館の使い方になりそうです。しかしながら、テーマに合わせて選ばれた、世界各地で活躍しているアーチストの魅力的な作品が名古屋市美術館の空間でどんな風に見えるのか、とても楽しみです。

 

トリエンナーレの期間中は、企画展示室1・2と常設展示室3が、あいちトリエンナーレの会場となりますが、名古屋市美術館の常設展は、通常通りオープンしています。これまでのトリエンナーレでは、この地域にお住まいのお客様に加え、県外あるいは、海外のお客様もずいぶんたくさんお越しいただいているようでした。ここは、普段名古屋になかなかいらっしゃることがないお客様に名古屋市美術館をアピールするチャンスでもあります。せっかくの機会なので、トリエンナーレのお客さんにもぜひ名古屋市美術館の常設展を見て頂きたいと思い、トリエンナーレのテーマに合わせて、目下、名品コレクション展IIを準備しているところです。

 

今回のトリエンナーレのテーマは「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」。キャラヴァンサライというのは、ペルシア語で旅の宿を意味するそうです。それに合わせて、名古屋市美術館の常設展は、「旅」ということをテーマにしました。「エコール・ド・パリ」は、今年度は一年を通してシャガールの版画を紹介しているので、「旅」のテーマではありませんが、ほかの3つはそれぞれ「旅」をテーマに組んでいます。

 

「エグザイル:自由への旅-《流氓ユダヤ》と《北満のエミグラント》」では、昨年俳優の唐沢寿明が主演した映画で話題となったリトアニアの外交官杉原千畝のヴィザで日本にわたってきたユダヤ人を写した作品など、芸術写真でありながら歴史のドキュメントとしても貴重な写真を紹介します。

 

また、「メキシコへの旅」では、メキシコに旅をした写真家たちがメキシコで撮影した写真を紹介します。メキシコの人々や風景を旅行者の視線がどのように捉えたのでしょうか。また、今回、新収蔵品の写真作品もご紹介いたします。

 

「時間の旅」では、日々当たり前に過ぎていく時間について考察するような作品を紹介します。宮島達男作品《Opposite Circle》も3年ぶりに展示します。

 

みなさま、この夏、トリエンナーレとともに、名古屋市美術館の常設展もぜひ、お楽しみください!

  

hina

「いま、被災地から―岩手・宮城・福島の美術と震災復興―」展について

このページでは基本的に当館の展覧会や催事に関わるお知らせをしていますが、今回に限り他館の展覧会をご紹介およびリンクを張ることをお許しいただきたいと思います。

なぜなら、当館へお越しくださった皆さまからの募金で成り立っている展覧会だからです。

 

「いま、被災地から―岩手・宮城・福島の美術と震災復興―」

会期:517日(火)~626日(日)

場所:東京藝術大学大学美術館

http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/tohoku/tohoku_ja.htm

 

 5年前の311日、東日本大震災が発生し、沿岸部の博物館施設は壊滅的な被害を受け、各館の所蔵品が津波の甚大な被害に遭いました。

 

それから1か月も経たぬうちに当館ボランティアから「被災地の美術館、博物館に対してできる支援はないのか」との声が挙がり、全国美術館会議へ提言したのをきっかけに募金活動が展開されたことは、既刊のアートペーパー(98号)で報告した通りです。

 

20143月末をもって募金箱の設置は終了していますが、3年弱の間、募金にご協力いただいた来館者の皆さま、協力会会員およびボランティアの皆さまには改めて厚く御礼申し上げます。

 

本展では被災後に救出、応急処置、修復を経た美術品だけでなく、3つの県立美術館の協力の下、各館の代表的な所蔵作品を通して東北の地で育まれた美術・文化について、また多数の写真パネルや資料を通して文化財レスキューの活動についてもご紹介しています。

 

会期が残り2週間を切った今になってのご案内で大変心苦しいのですが、東京へ行くご予定がございましたら、ぜひ足をお運びください。

 

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名古屋市美術館のディティール①

名古屋市美術館には鳥居があります。銀色に光っています。

この建物を設計した黒川紀章は、歴史と未来の共生、西欧と日本の文化の共生を目指したとのこと。その意味で、この鳥居は象徴的といえるかもしれません。

美術館の一角にしつらえられた、神聖なスポットです。

ちなみに、手前に写っている鉄の物体は、黒川紀章のテトラユニット。大阪万博の時に東芝IHI館の建物のパーツとして使用したものです。

 

 

ディティール1

 

 

投稿者:AN

 

誰もが美術を楽しめるように

今年の41日から「障害者差別解消法」(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」) が施行されました。「この法律は、障害のある人への差別をなくすことで、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目ざしています。」(「障害者差別解消法リーフレット(わかりやすい版)」、内閣府発行より)という趣旨で作られました。

 

この法律は、役所や会社、お店などに向けられたもので、個人に直接向けられたものではありません。この法律では「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」が差別とされています。「不当な差別的取扱い」は役所も会社やお店も等しくしてはいけないことになっており、「合理的配慮をしないこと」は、役所はしてはいけないが、会社やお店はしないように努力することとなっています。

 

名古屋市美術館は名古屋市の直営施設であるため、役所の一部ということになり、障害のある人へ「合理的配慮をしないこと」はしてはいけないことになります。

 

先日、同じく直営の公立美術館の学芸員と話す機会があり、この法律が話題となり、他館の状況や認識を教えていただくこととなりました。

 

美術館はこれまでにも障害のある方への差別や不便である状況を改善する取り組みを、それぞれ行ってきています。それでも、美術館には、障害のある方への差別的状況が残念ながらたくさん残されています。「合理的配慮をしないこと」はしてはならないけれど、施設改修をはじめとする物理的改善のための予算もなく、もっと内容にかかわる部分を手当てする人員の余裕もないなかで、どうしたらよいのだろうという困惑がこの法律を真摯に受け止めている館ほど大きいように私には感じられました。

 

差別的な状況を、気づいたところやできるところから改善していくことは言うまでもありませんが、この法律の施行に当たっては、障害のある人から対応を求められたときに、重すぎる負担の場合は重すぎる理由を説明し、別の対応を提案することも含めて、当事者が話し会い、理解を得るよう努めることが大切だと説かれています。現実には、障害のある方が美術館を利用することは、以前に比べれば増えたものの、いまだ多くはありません。その意味では、障害のある方も我々美術館の人間も、そして障害のない利用者のみなさんも含めて、お互い分からないことの方がまだ多いように思います。

 

失敗や衝突はあるかもしれないけれど、不安に怯えることなく、ひとつひとつ問題を解決していくこと。それが、望む人の誰でもが美術館を楽しみ、美術を楽しむことができるようになるために必要とされていることではないかという気がします。たやすいことではありませんが、良い機会とこれを前向きに捉えることが大切だと思えます。みなさまにも関心を持っていただき、寛容にお力添えいただければと思います。

 

投稿者: み。

 

「生誕130年記念 藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画」開会式

 4月28日、「藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画」の開会式が行われました。

 開会式には、名古屋市長・名古屋市会議長をはじめ、中日新聞社社長、NHK名古屋放送局局長、藤田家のご遺族の方、名古屋市会ランス市訪問団の皆様等たくさんの方々にご臨席いただきました。

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 フランスからお越しいただいたカトリーヌ・ドゥロ ランス美術館長にも、ご挨拶をいただきました。

 

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 「藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画」は、名古屋市美術館とランス美術館との交流事業として行う初めての展覧会です。

 藤田家のご遺族より、ランス市に寄贈された未公開の作品をはじめ、国内外の代表作約150点により、東西の文化の上に花開いた藤田嗣治の芸術の神髄を紹介するものです。

 

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 7月3日まで開催しておりますので、みなさまお誘い合わせの上、ぜひお越しください。

 

麗しきおもかげ展あとがき

 「東京藝術大学コレクション 麗しきおもかげ 日本近代美術の女性像」展が終わりました。

 

「展覧会は始まると、すぐ終わる」というのは学芸員のあるある(・・・・)なのですが、撤収作業の途中、ふと彫刻作品が乗っていた空の展示台を見ると、「宴の跡」を実感させられます。

 

 

2016年419日 企画展示室1にて 

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