真島直子さん、愛知県芸術文化選奨文化賞受賞

昨年の3月3日[土]から4月15日[日]までの会期で特別展「真島直子 地ごく楽」を名古屋市美術館が開催した真島直子さんが、平成30年度の愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞しました。

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「真島直子 地ごく楽」展B2ポスター

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「真島直子 地ごく楽」展B3ポスター

愛知県芸術文化選奨は、芸術文化の各分野において向上発展に貢献し、業績が顕著な個人および団体を表彰することにより、愛知県の芸術文化の振興を図ることを目的としています。平成19年度からは文化賞と文化新人賞の2種類となっていますが、昭和52年度から平成29年度までの受賞者には、名古屋市美術館の作品収蔵作家も少なからず含まれています。

昨年度の文化賞受賞者の一人は奈良美智さんでしたが、真島さんの文化賞受賞は、現代美術としては奈良さんに続く二人目、女性作家では初となります。

長年にわたる活動が評価されたことを喜ぶとともに、作家の活動を広くみなさまに紹介する機会が持てたことを名古屋市美術館としても嬉しく思います。

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「真島直子 地ごく楽」展 会場風景

投稿者: み。

フリーダ・カーロ《死の仮面を被った少女》はボストン美術館に展示中です

ホームページですでにお知らせしましたが、フリーダ・カーロの《死の仮面を被った少女》は、現在、アメリカのボストン美術館の企画展「Frida Kahlo and Arte Popular (フリーダ・カーロとメキシコの民芸)」展に展示中です。フリーダ・カーロは、メキシコの伝統的な文化を伝える民芸品、衣装に強い関心を寄せ、収集していました。この展覧会は、フリーダ・カーロがこうしたメキシコの民芸からどのように影響を受け、作品制作の着想を得ていたかを探る展覧会です。

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作品は専用の輸送箱に入れ、早朝当館を出立し、成田から空路でボストンへ。およそ1日かけて運びました。展示の際には、油彩画、額の修復を専門としている二人の職員と作品が無事に到着したことを一緒に確認。そして、しっかりと壁に設置しました。隣には、作品に描かれている仮面と同様のジャガーの仮面が展示されています。展覧会は6月16日まで開催されています。

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ボストンの2月はまだまだ冬。街も雪景色でした。そんな季節にボストン美術館では、「Ansel Adams in our time (今の時代におけるアンセル・アダムス)」という大規模な展覧会が開催されていました(2月24日終了)。アダムスは、ヨセミテをはじめアメリカの美しく広大な自然をとらえた写真で知られ、日本にもファンが多い作家ですが、このたびはアダムスが撮影した作品とその後の写真家たちの活動との関連・影響を探る展覧会でした。会場を出たところには記念撮影ができる場所が設けられており、またヨセミテのライブ映像が見られるスポットもありました。

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I.Mペイの設計によるボストン美術館西館は天井が高く、気持ちのよい空間です。そこにはどこかで見たような作品が・・・。名古屋市美術館にて展示している《フライングンマン》を制作したジョナサン・ボロフスキーの作品です。ボロフスキーはボストン出身のアーティストで、ボストン美術館内にも「数人」が飛んでいました! (I.)

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春の足音

 

立春が過ぎ、歴史的大寒波を乗り越えて、ようやく梅の咲くころとなりました。陽射しも日に日にあたたかくなって、ああもう春が近いんだな、と感じる今日このごろです。

私にとってこの季節は、春の足音とともに、色々な締切の足音が同時に聞こえてくる季節です。というのも、たまたまではありますが、これまでにも4月はじまりの展覧会を担当することがなぜか多かったからです。

展覧会のオープンに向けて、カタログの校正作業をしたり、展示室内のディスプレイの計画を立てたり、さまざまな広報物のチェックをしたりと、するべきことが増えていきます。ただ忙しくなる、というわけではなくて、少しずつ展覧会の完成形が見えてくるので、大変だけれどわくわくする時間でもあります。少々語弊があるかもしれませんが、3か月間毎日前夜祭をしているような感覚です。

ただいま、「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」展(4月9日[火]開幕)を準備中です。本展の中心となる印象派の作品には、明るい色彩に満ちたおだやかな風景画がたくさんあり、眺めているだけで春らしい気分を味わえます。本展の看板をはっているのは、ルノワール作《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》(1887年)。10歳のあどけない女の子ですが、どこか意志の強さを感じさせる青いひとみが印象的です。デスクの前に貼ったポスターから、シュザンヌがこちらをじっと見つめてくるので、ああ、今日中にあれもこれも確認しなきゃ、メールも返さなきゃ、と焦りながら仕事をしています。開幕まであと少し。多くのお客さまにご覧いただける展覧会になることを祈っています。(haru)

 

ピエール・オーギュスト・ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》

1887年 パステル/紙 吉野石膏コレクション

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名古屋市美術館開館30周年記念特別展「辰野登恵子 ON PAPERS:A Retrospective 1969-2012」開会式・内覧会

2月15日、名古屋市美術館開館30周年記念特別展「辰野登恵子 ON PAPERS: A Retrospective 1969-2012」の開会式及び内覧会が行われました。

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開会式には、主催者の名古屋市美術館及び中日新聞社の関係者の他に、辰野登恵子様のお姉様である平出利恵子様と、姪御様の平出加菜子様にご臨席いただきました。

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当日は、晴天に恵まれたこともあり、大変多くの方にご来場いただき、内覧会も賑わいました。

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辰野登恵子(1950-2014)は、長野県岡谷市に生まれ、日本の現代美術における絵画の潮流に影響を与えた画家のひとりです。東京藝術大学に学んだ後、1970年代にドット(点)やグリッド(格子)、ストライプなどの規則的なパターンを用いた版画を発表し、若くして注目を集めました。ほどなくして表現手法を油彩に移すと、それまでの理知的で抑制された表現とは対照的に、豊かな色彩で有機的な形象のある絵画空間を追い求め、亡くなるまで自らの作品世界を深化させ続けました。1995年には東京国立近代美術館で当時最年少、かつ存命の女性作家として初めての個展を開催しています。

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今回の展覧会では版画やドローイングなど紙の上の表現に光を当て、大型の油彩が高く評価された辰野の画業を再検証します。初期のシルクスクリーンによるコンセプチュアルな作品に限らず、油彩の制作を本格的に始めてからも、彼女はそれと並行してエッチングや木版、リトグラフなどさまざまな版種による版画制作に取り組んでいました。油彩での試みを版画で追体験する、あるいは版の仕事での成果を油彩に反映させるなどの往還によって、辰野が創作の幅や深みを増していったことが想像できます。また、油絵具やパステルによる大型のドローイングは、単なる下絵の域を超え、画家にとって重要な実験の場となっていたこともうかがえます。

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画家の死後、初めて巡回開催される回顧展でもある本展は、これまでまとまった展観の機会が限られてきた紙の仕事を中心に、油彩30点を含む約220点の作品で構成します。辰野登恵子の40年余りにわたる軌跡に新たな視座を与えてくれるはずです。

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本展は、3月31日まで開催いたします。是非名古屋市美術館に足をお運びください。

名古屋市美術館開館30周年記念特別展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」開会式

2月7日、名古屋市美術館開館30周年記念特別展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」の開会式及び内覧会が行われました。

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開会式には、主催者の名古屋市美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会及び中京テレビ放送の関係者をはじめ、展覧会開催にあたってクーリエとして協力をいただきましたヴィトラ・デザイン・ミュージアムのベルンハルト・ニッケル様にご臨席いただきました。

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当日は、木枯らしの吹く寒い日となりましたが、大変多くの方にご来場いただき、内覧会も賑わいました。

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アルヴァ・アアルトは、北欧・フィンランドが生んだ建築家であり、木やレンガなどの素材を生かし、周囲の自然環境との調和を図る建築で知られています。

彼は建築のみならず、デザイナーとしての手腕も発揮しており、この展覧会では、模型や図面のほか、ドアの取っ手や家具、照明、ガラス器までデザインしたアアルトの温かみある作品を紹介しています。

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本展では、アアルトがデザインした椅子などを触ったり、座ったり、記念撮影できるコーナー「ウスタヴァコーナー」を設けましたので、アアルトのデザインの素晴らしさを体感してください。

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また、地元の大学生たちが制作したアアルト設計の図書館の模型も展示しておりますので、こちらも是非ご覧ください。

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本展は、来年2月3日まで開催いたします。是非名古屋市美術館に足をお運びください。

 

帰ってきた「農家の娘」…「クーリエ」の仕事について

当館からランス美術館(フランス)に貸し出していた作品、ハイム・スーチン《農家の娘》の返却輸送が、台風被害によって延期になったというお話を、本年9月にここで書きました。今回は、そのお話の続きをご紹介します。

その後、約1か月遅れで作品は無事に返却され、開館30周年記念「ザ・ベスト・セレクション」展に会期途中から登場。たくさん方々にご覧いただくことができました。展覧会が閉幕し収蔵庫に戻って一息、と思っていたところ、現在開催中の名品コレクション展にも続投。“娘”の活躍は続いております。

さて、ここでお話しするのは、作品輸送にともなう「クーリエ」の仕事についてです。クーリエとは、美術作品の輸送に随行し、作品の梱包や開梱に立会い、作業を監督する役割のことをさします。今回は、海外美術館での展示を終えた作品の状態をチェックし、梱包し、トラックおよび航空機での輸送に随行することが仕事でした。

まず、ランス美術館にて、レジストラー(作品貸出等の担当者)と一緒に作品の状態を確認します。展示が始まったときから、亀裂や剥落など表面の状態に変化がないか、輸送時に破損しそうな危険な部分はないかを入念に確認します。その後、長距離の輸送に耐えられるよう、しっかりと梱包し木箱につめたら、トラックに積み込みます。

輸送に使用するトラックは、美術作品を良い保存状態に保つため、温湿度を一定にキープする空調設備や、移動時の衝撃を和らげるシステムなどが装備されています。基本的には安心・安全なのですが、日本と海外では習慣が異なる場合もあるので、温湿度やセキュリティがどのように管理されているのかを丁寧に確認し、現地スタッフと情報共有しながら作業を進めます。

空港に到着したら、作品は貨物として航空機に搭載する手続きをします。このとき、作品の木箱のそばに水分を多く含んだ品物などが置かれていないかどうかを確認しなければなりません。今回も1点ずつ確認していると、ワインの木箱が発見されたので、避けてもらいました。

慣れない外国語での専門的なやり取りは大変なこともありますが、かえってコミュニケーションをゆっくり、丁寧に行えるという利点もあります。フランスの現地スタッフの皆さんは、貸出側の不安が残らないように配慮しながら作業を進めてくださり、ありがたい限りでした。(haru)

 

作品を壁から慎重に取り外しているところ

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作品の状態チェック

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アメリカのボストン美術館館長来館

10月8日(月・祝)に、アメリカのボストン美術館のマシュー・テイテルバウム館長が来館されました。このたびは、クリスティーナ・ユー・ユーアジア部部長、オリバー・バーカー財団・政府・国際担当マネージャーもご一緒され、現在開催中の「ザ・ベスト・セレクション」展をゆっくりとご覧になりました。

テイテルバウム館長は、特に当館のメキシコ・ルネサンスのコレクションに関心を寄せられ、フリーダ・カーロの《死の仮面を被った少女》を熱心にご覧になられていました。また、モディリアーニやスーチンをはじめとしたエコール・ド・パリの充実したコレクションをどのように築いてきたのかをお尋ねになられていました。

現在開催中の「ザ・ベスト・セレクション」展では、当館を代表する名作や知られざる傑作を一堂に展示しています。また、作家や作品にまつわる資料や収集や保存にかかわる学芸員の調査研究も紹介しています。 (1125日(日)まで)

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テイテルバウム館長と早瀬館長

 

 

 

 

台風21号のちいさな爪痕

 

猛暑がひと段落し、秋風が吹き始めた9月は、二つの大きな自然災害に見舞われました。台風21号の襲来によって、多数の地域で停電や浸水の被害があり、続いて北海道地方を襲った大きな地震は、大規模な土砂崩れや全道規模の停電を引き起こしました。相次ぐ自然災害を前にして、自然に対する人間の無力をひしひしと感じずにはいられません。被災された方々に心からお見舞いを申し上げ、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。

ここ名古屋市美術館でも、台風21号は小さな爪痕を残しました。交通機関が大きな被害を受けたことにより、ランス美術館(フランス)に貸出中の作品、ハイム・スーチン作《農家の娘》(1919年頃、当館蔵)の返却輸送が延期となったのです。

昨年10月、名古屋市とランス市は姉妹都市提携を結び、双方の美術館では、作品の貸し借り等を通じた交流を続けています。《農家の娘》は、今年5月から9月中頃まで、当館からランス美術館へ貸し出され、展示されていました。9月末頃当館に戻ったあと、すぐに106日から開催の「ザ・ベスト・セレクション」展に出品予定でしたが、残念ながらオープニングには間に合いそうにありません。

このランス美術館からの作品返却を例に、海外から作品を輸送する際、作品の点検や梱包、輸送に立ちあう「クーリエ」の仕事について、ここでご紹介したかったのですが、それはまたの機会に。交通機関の混乱が落ちつき、作品を安全に輸送する手段が確保できるまで、いましばらく様子をみる必要がありそうです。“娘”の帰還が待たれます。早く無事に帰ってきてほしいですね。(haru

ハイム・スーチン《農家の娘》

図版 ハイム・スーチン《農家の娘》 1919年頃 名古屋市美術館蔵

ハイム・スーチン(1893-1943)は、ミンスク郊外の小村スミロヴィチ(現ベラルーシ)生まれ。偶像崇拝を禁止するユダヤ教の家庭に育ちましたが、あきらめずに画家を目指し、1912年頃パリに出て、「蜂の巣(ラ・リューシュ)」に住みます。なかなか作品が売れず、貧困に苦しみましたが、モディリアーニやシャガール、キスリングらと出会い、親交を結びました。《農家の娘》は、南仏のカーニュで制作されたといわれています。モデルの女性は質素な服に身を包み、組んだ両手を膝の上に置く古典的なポーズで描かれています。

水谷勇夫『神殺し・縄文』

 

   水谷勇夫(みずたにいさお/1922-2005 )は名古屋市に生まれ、名古屋を拠点としながら活動した美術作家です。名古屋市美術館も作品を所蔵しています。美術制作の手法を独学し、膠彩画(いわゆる日本画)の技法を基にした絵画やテラコッタによる立体の制作などとともに、舞台美術の制作や行為による美術表現を行うなど、多様に活動しました。1993年のNHK大河ドラマ「琉球の風」の題字を手掛けるなど、書家としても知られています。

 

 水谷は、縄文の土器や土偶に惹かれ、日本の神話との関係を独自の手法で考察することもしています。その成果は1974年に『神殺し・縄文』(伝統と現代社)として出版されています。初版発行から45年の今年、同書は単行本から文庫本へと体裁を変えて、名古屋の出版社である人間社から再び出版されました。

神殺し・縄文カバー (加工用)

水谷勇夫『神殺し・縄文』(人間社文庫 日本の古層、人間社、2018年) カバー表

 

 文庫本には、考古学者の小林公明と水谷の次男で歴史学者の水谷類による文章2つと水谷本人の論稿1つが加えられています。手に入れ易い文庫本によって、水谷への理解が深まることを期待します。

 

投稿者: み。

 

 

 

野外彫刻のひとりごと③

 

私は、《魂》と名付けられた石の彫刻である。

 

イサム・ノグチ氏の香川県高松市牟礼のアトリエで生み出された。

 

私は、名古屋市美術館の裏庭の池をのぞむ場所に、ひとりポツンと立っている。

 

裏庭には時折人々がやってくるが、大概は静かなものである。

 

ノグチ氏が私を《魂》と名付けたのは、何故なのだろうか。

 

実際のところ、魂というものがどのような形をしているか

 

誰も見たこともないだろう。

 

ノグチ氏にとっては、魂はこのような形に思えていたのだろうか。

 

私は来る日も来る日も美術館の裏庭に立ち続け、

 

いささかくたびれてきた。

 

しかしここにいると、裏庭の四季の移り変わりを見ることが出来る。

 

楽しみもまた、あるのだ。

イサム・ノグチ1

 

イサム・ノグチ2

 

*イサム・ノグチ《魂》1982年 安山岩

 イサム・ノグチは津島市出身の詩人野口米次郎とアメリカ人女性との間に生まれました。日本とアメリカという二つの祖国を持つ彼は、スケールの大きな彫刻作品やモニュメント、庭園などを制作し、「大地を彫刻した男」と呼ばれることもあります。この作品は小ぶりなものですが、無駄なものをそぎ落としたすっきりとした造形に、イサム・ノグチの類まれなセンスが光っています。この彫刻は、名古屋市美術館の南側にある庭に立っています。

 

投稿者:AN